蘭の会を始めて知った時、「あ、いいな」と思った。わたしも入りたいと思った。何故なら、女流詩人がたくさんいるからだ。女流詩人。魅惑的な言葉ではないか。詩人、それだけでも正常な人ならば、気の利いた生き物を連想するのではないだろうか。しかも女流。女流詩人の集いと言えば、まるで、世にも珍しい蝶々が集まる秘密の花園みたいではないか。そこに行けば、あんな言葉やこんな言葉で世にも珍しい宴が披かれているのかもしれない。でも、残念なことに、蘭の会は詩人で、しかも女性しか入会できないのだそうだ。(なんて高いハードルなんだろう。) じゃあ、ふてくされて男流詩人の会「どくだみの会」にでも入会しようかしら。そんなものはない。世間に女流と言う言葉があってなぜ男流という流れはないのだろうか。男女平等社会において、それはどうしてだかとても滑稽な響きがする。例えば、男流詩人「どくだみの会」はなんだかすごく危ない秘密結社の匂いがする。真っ暗な地下の重い扉をノックすると「暗号は?」と問われる。「感傷的な旅」「レゾン・ディテール」ギギギ、やっとドアが開かれる。わたしは「蘭の会」が本当に女性だけしか入れないのか、主催者に聞いてみた。ガードマン兼バーテンダー的な特別な男性存在への一縷の望みが経ち切られたわけではない。それにこっそり、女になりすまして、RADIO DAYS子としても参加できるかもしれないじゃないか。でもやっぱりダメなんだそうだ。 肉体を伴わないネットという社会において、ジェンダーは全く社会的制約に過ぎない。ならば、なにをもって女流とするのだろう。やはり詩においてだろうか。でも、そうなると、女性的な詩とはなんだろう。ネットやTV、メディアにおいては男も女も単に記号みたいなモノじゃないだろうか。あるいは、エコロジーと同じく商品のキー ワードなのだ。誰だって、TPOに合わせて自由自在に自己を切り替えた経験があるんじゃないだろうか。(わたしの首筋の後ろにも「男スイッチ」が付いてあって、普段、これはOFFになっている。)そこで、ふと、意地悪な発想が浮かび上がった。RADIO DAYSのネット作品において、詩を入力すると、それが全て女性言葉に変換されるというジェンダー変換マシーンを作品で作ろう。例えば、「あら、古池かしら、キャ、蛙よ、飛びこんじゃったわ、水の音ね」というふうに変換される。これを使えば、蘭の会に入会できるという触れ込みで。不可能ではなかったが、その根性が乏しいので止めた。 RADIO DAYSの作品に「ポエカラ」というものがある。簡単に言えば、詩の朗読用カラオケだ。詩の提供者は今のところ全て女性で、そこには作者の色っぽかったりなかったりする映像が流れる。わたしたちはこれを意図的に女性詩人に限った。詩に肉体を感じさせたかったのだ。ともすると、詩の世界においては「書かれた言葉」至上主義がまかり通る。しかし、肉体ヌキの言葉なんてありえるのだろうか。性は肉体を伴って始めて、社会的な性であるジェンダーではなくセックスになる。詩からいろいろな要素を抜いて言葉だけにするということは、食事抜きの栄養みたいなものじゃないだろうか。やっぱり、わたしは美しい皿にいい匂いのする、美味しい料理を盛り、隣にイイ女を座らせて、彼女の作ったイイ詩を耳元で囁かれたい。これが、人間として当たり前の思いじゃないだろうか。ビタミン剤だけで人はやっていけないのだ。わたしが「蘭の会」に望むのは、そんな、女性という肉体を伴ったリッチな言葉を見たいということだ。その時、初めて男はリアルな男になれる。いや、蝶にはなれないことを思い知るだろう。そのかわり、蝶の羽に苛烈に嫉妬する獰猛な「ちょうちんトカゲ」ぐらいにはなれるような気がする。 作品「ソラッポ」(リメイク版) http://radiodays.cool.ne.jp/Work/sorappo/ |
◆RADIO DAYS情報
RADIO DAYS(里宗巧麻&Takumy)は関西を中心に活動する男性二人組ユニット。 詩のパフォーマンスやウェブ作品を数多く発表。 里宗巧麻: 1971年生まれ 県立沖縄芸術大学卒。大学在学中に工房「海渡」設立。アートイベント等、工芸デザインや舞台美術を数多く手掛ける。同じ頃、テキストを素材としたパフォーマンスを始める。自主出版の詩集に「天使の精神病院」「裸眼のタンゴ」等、がある。1998年、平居謙氏とビジュアル詩ユニット「SEX machines」を結成。同時にHP立ち上げ。日本初の詩における自主マーケット、「詩マーケット」スタッフ。2000年には作曲家山本拓海氏と「RADIO DAYS」を実現させHPやメディアミックスな企画を精力的に展開中。同2000年、ネットアイドル琴生結希氏とノンフィクション風恋愛日記HP「LoveLetters」立ち上げ話題を呼ぶ。現在、日本高等美容学校に講師として勤務。専門は身体論、文化論、メディア論。 Takumy: 1975年生まれ 14歳頃からバンド「NOIZE」、「ハーケンクロイツ」、「Tachers」にドラマーとして参加、多数LIVEをこなすかたわら、17歳頃に作曲に目覚める。独学でDTMやMIDIを学び、現在新たな音の可能性を日々模索中。1998年多彩な顔ぶれでスタートした多目的音楽ユニット「残り11秒」にドラマーとして参加。詩の自主マーケット「詩マーケット」に音響技師として参加。2000年、パフォーマー里宗巧麻氏と共に「RADIO DAYS」を立ち上げメディアを自由に使いこなす企画や作品を精力的に展開。現在、イベント会社にてプランナーとして勤務。主に、Webコンテンツ企画やイベントプロデュース企画を手がける。 公式HP http://radiodays.cool.ne.jp/ |
2001年
⇒10月号 ヤリタミサコさん
⇒11月号 さいとういんこさん
⇒12月号 いとうさん(poenique-詩の寄り添う場所-)
2002年
⇒新春号 上田假奈代さん(kanayo-net.com)
⇒二月号 寺西幹仁さん(詩学社)
⇒三月号 大村浩一さん(GOBLIN、黄金夜、浩一と詩書き隊)
⇒四月号 東直子さん(直久)
⇒五月号 和合良一さん(ぽえむのへそ にて和合さんの情報が獲得できます)
⇒六月号 木村ユウさん(詩・モード Zamboa、コラード@コム)
◆佐々宝砂詩集についてのお知らせ
『仮想地下海の物語』 1800円(税別)
詩の出版社ミッドナイト・プレスから発売されました
お問い合わせはこちらへ http://www.midnightpress.co.jp/
+詩集
もうすぐ夏休み、テーマを決めず自由に書き綴ろう
+Web女流詩人コラム
菟野くうぴい「再会」
+まな板の上にコイ♪
この数ヶ月間、皆様にご心配をいただきましたが
蘭の会批評部部長、佐々宝砂が
無事、総評に戻ってまいりました。
病み上がりの包丁の切れ味はいかがでしょうか?
どうぞ、ご賞味あれ♪
尚、皆様の暖かいご声援ならびに
総評をご執筆いただいたかたがたへ
深謝。
まなコイ♪7月の特選めにゅう。
・わかめ- いとうさん(over the sin)
・便所にて - 会計担当さん(日常の向こうへ→)
・虹たちの夜 - thisさん(詩に至る病)
・覚醒前の夢 - ノラスケさん(由之助本舗)
・箱庭 - nonyaさん(DEKE in the attic)
・蝉 - 箱さん(箱 作品集)
・若夏 - 森 康彰さん (Happy? Hippie!)
・マーキィ・ルゥの遺言
<ボクのアートに永久的な価値などありはしない>
- ヨケマキルさん (ヨコマキルサイト/ハサミ)
作品投稿総数13作品のなかより上記8作品を
批評を添えて掲載させていただきました。
選外の作品も、どれも素晴らしく皆様に御礼申し上げます
◆八月号のお知らせ
+詩集
引き続き夏休み、テーマを決めず自由に書き綴ろうシリーズ第二弾
+Web女流詩人コラム
のん 「理解されない」
◆批評の部よりお知らせ
まなコイ!の投稿受付は
15日午前0時から20日24時までになります
投稿期間にお気をつけください
専用の投稿フォームより投稿してください
◆当会をご利用にあたって
蘭の会ではご来場の皆様にも
詩作を通して相互に交流していただきたいと思います
相互批判ではなく相互理解を
詩人として詩を愛することを忘れず
詩を読み書く喜びを享受しあえる場であるように
蘭の会るーるぶっくで
投稿規定や利用規定などを必ずご確認ください
(ページ及びグラフィック製作 芳賀 梨花子)