バグアイドモンスターズ
Bug Eyed Monsters / Westend Games
ショートコメント
●冬の夜の静けさに包まれたフリーダムの街にヤツらは降り立ったバグアイドモンスターズ、狙いは我々の美女か大統領か?
●B級SFゲームの王道を行くようなシチュエーションをグレッグ・コスティキャンが鮮やかにプレイアブルな小品に仕上げた
They, Bug Eyed monsters have landed onto the small town, Freedom which is covered with a stillness of winter night.
Great B-class sci-fi story is designed as a playable hex-boardgame vividly by Greg Costikyan.
published designed players time
1983 Greg Costikyan 2 60-90 min.
バグアイドモンスターが出た頃
 悪の侵略エイリアンが美女を誘拐して去っていくという構図で不思議に思うのは、異形のエイリアンがどうやって人間の中から女性だけ、それもうら若い美女だけを選別しているのかということです。
 真剣に考えると、すぐに鍍金が禿げてしまいそうなこんな典型的なB級SFのシチュエーションをストレートにボードゲーム化したのが、ウェストエンド社から1983年に発行された「BUG EYED MONSTERS」こと「BEM」です。
 エイリアンの別呼称でもあるBEMは、まさにこの頭文字から来ています(異説としてBIG EYED MONSTER もあります)。ウルトラマンの最初の怪獣ベムラーも、このBEMから来ています。
 「BEM」は、半分厚さのブックケースゲームとして発売された列記としたヘクスウォーゲームです。
 この当時のウェストエンド社は非常に活発で、様々なジャンルでヒットを飛ばしていました。陰謀渦巻くバナナ共和国のマルチ「フンタ」や、ブラックユーモア満載のディストピアRPG「パラノイア」、パラグラフブック併用のボードゲームとしてもっとも規模も完成度も高かったと思われる「テイルズ・オブ・アラビアンナイト」などです。
 SFゲームでも、それまでの主導的な立場を担っていたSPIは既になく、GDWもポテンシャルが落ちていました。
 TSR−SPIから発行されていたSFゲーム雑誌「Ares」の晩年の巻末広告がこの「BEM」だったのは、そうしたSFゲームの担い手の交代劇を象徴していたかも知れません。
ファイナル・コメント
 コスティキャンは、シリアスなゲームも作ります。VGから出た「パックス・ブリタニカ」はその典型でしょう。SFゲームでも「ウェブアンドスターシップ」は非常にシリアスな作りです。ファンタジーゲームでは、「ダークエンペラー」がそうでしょう。
 けれども、妙なものですがコスティキャンの作ったゲームの中で傑作だと思うのは、この「バグアイドモンスターズ」や、「シーボイガン市を食った怪物」のような軽いノリで作ったB級テイストに溢れる小品だと思います。
 肩の力が抜けていて、作っている本人も楽しいのではないかと思われる仕上がりになっています。プレイバランスなどへの配慮は浅いかも知れませんが、プレイヤーもそのことを不満に思うようなことはないでしょう。
関連ゲーム
プレザントヴィル侵略
パラノイア
ウェブアンドスターシップ
バーバリアンキングス
シーボイガン市を食った怪物
ダークエンペラー
ボックスを開けると、SPIを思わせるグラフィックのハーフマップが登場してきます。フリーダムという小さな町を描いていて、一つ一つの建物の名称まで入っている典型的な戦術級ウォーゲームのマップです。
 ゲームは戦術級ゲームとしてオーソドックスな作りになっていて、移動・射撃のシステムでBEM側と地球人側が交互にプレイします。
 いかにもと思わせるのは、BEMは本当に地球の美女を求めていて、「肉欲フェイズ」というのがあって、美女を前に欲望を抑えきれるかどうかチェックするようになっています。
 対して人間側は夜に侵攻されたため、活性化手順を踏まなければ活動できないようになっています。
 細かいところでは犬がユニットになっていて、番犬として家人を起こす可能性があるようになっています。
あとどこまで本気なのかわからないのですが、民主党員は流言蜚語には乗らないとのことで活性化しても他の町の人間を呼び起こすことができません。
 また、メインシナリオはBEMが美女を求めてやってきたシナリオなのですが、オプショナルシナリオとしてBEMが遊説中だったアイゼンハワー大統領を誘拐するというシナリオもあります。勝利条件は大統領を円盤に連れ込むことで、殺してしまっては引き分けになってしまいます。
 デザイナーは鬼才グレッグ・コスティキャンですが、彼らしい破天荒なユーモアに溢れた一作です。
 しかし、ゲームの仕組み自体は意外にオーソドックスで、ハーフマップの小品ということもありプレイアビリティ良好です。
 ある意味、ウォーゲーマーにお勧めの(?)傑作B級SFウォーゲームと言えます。