やつらはプレザントヴィルを侵略した
They've invaded Pleasantville
ショートコメント
●わたしがいつものように朝刊を取りに表に出ると、そこには緑色に光る目と額から突き出た触角を持つ妻が鍬を持っていた
●人間に寄生する生命体により街が侵略されていく状況を描いたB級SFゲームの佳作
When I went out to take a newspaper, my wife is waiting with gleaming green eyes, tentacles on head, a spade in hands.
Excellent sci-fi game which describes invaded town by hosting alien.
published designed players time
1981 Michael Price 2 60+ minute
やつらはプレザントヴィルを侵略したの設定

 TSR社の「彼らはプレザントヴィルを侵略した」は、侵略テーマのジップケースの小品です。TSR社のジップケースは透明で内容物が見え、ルールブックの表紙がボックスアートになっていました。このサイズのゲームとしてはメタゲーミングのマイクロゲームシリーズが有名ですが、TSRも結構な種類のゲームをこの形態で出していました。
 朝刊を取りに新聞受けに来た初老の紳士を表で待ち受けていたのは、目が緑色に光り、額に触角が生えている妻‥というカバーアートです。背景にはとうもろこし畑と、その上空を飛ぶUFOが描かれています。あまりにも典型的なB級SFと言えましょう。
 ゲームマップにはプレザントヴィルという小さな町の中心部が描かれています。
 ゲーム内容的には、ハインラインの「人形つかい」やフィニィの「盗まれた街」そのものと言って良いものです。普通の生活を続けている町の人の中に、実はエイリアンに乗っ取られた人が混じっていて、徐々にその勢力を伸ばしている‥という展開です。
 ゲーム開始時にエイリアン側は二人の町の人に秘密に寄生します。そして、このエイリアン側の住民が、他の町の人と二人きりになると、どんどん寄生して仲間を増やしていくのです。
 このあたりの日常の中に侵略者が潜むという展開の真綿で首を絞めるような感覚は、往年の侵略者もののドキドキを良くシミュレートしています。
ネガティブ・コメント

 「やつらはプレザントヴィルを侵略した」は、独創的な小品です。いかにもB級SFという題材を、それにふさわしいユニークなシステムで遊べるものに仕上げているなかなかの逸品でしょう。
 惜しむらくはコンポーネントがチープであることが残念です。TSRのジップは、メタゲーミングのマイクロよりユニットは良いのです。しかし、このゲームの場合、同じ住民コマが2つ用意されていて裏側のマークでエイリアン側か人間側かを判別するため頻繁に裏を見ます。それにはもう少し厚みのあるユニットの方がプレイしやすいでしょう。
 高い独創性で類似品があまりないゲームですので、どこか再版してくれると良いのですが。
関連ゲーム
●BEM
エアイーターの侵略
●異次元の悪魔
●TORG
人類の抵抗

 浸透してきている侵略者に対して、多くの街の人々はそんなことには気付かずに日常生活を送っています。しかし、そんな中で「あなただけは侵略に気づいてしまった」のです。
 人類側は侵略に気付いたたった一人の人物からゲームを始めます。
 エイリアン側は、ランダム移動と、エイリアン移動(エイリアン支配の人か、中立の人を動かすことができる)で仲間を増やす試みをしていきます。これに対して人類側は中立の人間に対して説得を試みて侵略と戦う仲間を増やしていきます。
 けれども、「この町はエイリアンの侵略を受けているんだ!」と言っても信じない人も少なくありません。ダイスチェックをして信じてもらえないと、その人は「懐疑的」というマーカーを置かれてしまって、なかなか説得できないことになります。このあたりは、正に往年の侵略ものの真髄とも言うべきところでしょう。
 しかし、逆にエイリアンが人間に取り付くところを第三者が目撃してしまうこともあります。そうするとその人は恐怖の体験を誰にも語れず悩む「心配」状態に陥ります。この状態の人は実際に目撃しているので説得しやすくなります。
 ここらへんのところは題材のツボを押さえた独特のゲームシステムになっています。一種のブラインドシステムで、一人プレイには全然むかなくなってしまいますが、そうしたマイナスを考慮しても面白いゲームです。
 勝利条件は人類側から見て最終ターンまで町の人たちの過半の影響力を守り続けるか、あるいは逆にエイリアンの円盤の所在を突き止めてエイリアン本体を倒すかのいずれかです。
 エイリアンの円盤の所在を詰めていくには、エイリアンに支配されている人をKOして尋問することになります。単に街を消極的に守るだけでなく、反撃に出て円盤を破壊できるところも往年の侵略もの映画やドラマの後半の盛り上がりを引き出していると思います。
 エイリアンは町を支配するには仲間を増やさねばなりませんが、その過程では尋問されるリスクが大きくなっていくことになります。円盤というアキレス腱を持っているので単純に人類側ばかりがプレッシャーを掛けられる展開でもありません。このへんゲームとして良くできています。