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エアイーターの侵略
Invasion of the Air-Eaters / Metagaming


一言で言えば‥‥

1983年,地球は未曾有の危機に瀕していた

宇宙からの侵略者が彼らが住むために地球改造を始めたのだ

こんなゲーマーにお薦めしたい

宇宙人が侵略してくるB級SF映画を好きな方に

手軽でノリの良いコンパクトなSFウォーゲームを求める方に

プレイ人数 2人
プレイ時間 30分〜90分
ルール難度 初級ウォーゲーム,ただし独創的
デザイナー キース グロス
入手状況 海外中古ショップを当たられたし

やつらはオレたちの空気を!
エアイーターの侵略の裏表紙
1983年(既に過去になってしまいましたが‥‥),やつらは突然やってきた。

地球上空にやつらの軌道母船が現れ,次にはそこから巨大なクリスタルカラーの無機的にしたアメーバのような移動体が現れた。この移動体はクロウラーと名づけられ,その目的は人類文明の工業生産施設を破壊することのようだった。ヨーロッパの主要工業地帯は,数体のクロウラーに蹂躙されその生産力を失った。次は日本とアメリカが彼らの目標だった。

われわれの工業力を破壊する一方で,やつらは地上に前哨基地を設けた。そこでは,新たなクロウラーが作り出されるとともに,邪悪な製造プラントが稼動し始めた。エアコンバーターと名づけられたそのプラントは,わが母なる地球の大気を取りこんで,有毒の大気へと作り変え始めたのだ。

やつらについての情報が収集されてくるにつれ,侵略の全容が明らかになり始めた。
やつらの母星はなんらかの危機に瀕していて,やつらは移住先を探しているのだ。その候補としてこの地球に白羽の矢を立てたのだが,今の地球の大気は彼らにとって有害らしい。そのため,彼らにとって好ましい大気に作り変えてしまおうというのだ。

このままでは地球の生態系はすべて破壊され,その後に彼らの都合の良い環境に作り変えられてしまう。そこではもはや人類は標本壜の中でしか生き残ることができなくなってしまう。

オレたちか,やつらか!

生き残るのはどちらか一方だけだ!

そして,この地球はやつらのものじゃない。オレたちのものだ!

エアイーターの侵略のシステム
エアイーターの侵略の表紙
エアイーターの侵略は,まさしくB級SFマインドにあふれた古典ポケットゲームです。

このゲームは,メタゲーミング社のマイクロゲームシリーズの一作です。発売当時の定価は,なんと2ドル95セント。当時の通貨レートでも1000円せず,今の通貨レートでは500円もしないという作品です。

ただ,ゲームとしての内容は侮れません。グリーンの厚紙に茶のインクで印刷された小さな地球全図のマップと,厚紙に一方向だけ切り目を入れてあり交差方向は自分でカッターで切るユニットというコンポーネントは価格相応です。

ですが,ゲームシステム的にはしっかりした中身を持っています。エアイーター側は,母船一隻で侵略を開始します。そこからクロウラーを降ろして人類文明に打撃を与え,その一方で人類の地上部隊が来にくい辺地に基地を建ててエアコンバージョンの準備を進めます。

一方の人類は,エアイーターの侵略に対して準備が整っていません。工業生産力を利用して,まずエアイーターに対して有効な兵器を開発することから始めます。この兵器も最初は効果の限定されたものから作り始め,徐々に技術を発展させてより有効な兵器へと開発を進めるのです。

小なりと言えども,単に戦闘をするだけのゲームではなく,侵略計画や,技術開発計画が必要なマネージメントゲームの要素も盛り込まれているのです。

また,選択肢として,エアイーターは陸上基地のほかに海底基地も選択できます。海底基地は生産力が低くなりますが,人類の地上部隊の攻撃を受けないという利点があります。それに対して人類は,既存の潜水艦部隊で攻撃ができ,また開発により特殊潜水艦部隊も作ることができるようになっています。
この他に,人類は軌道上にいる母船を攻撃するために宇宙攻撃隊を開発して編成し,さらに宇宙戦闘の経験を積めばこれを踏まえて宇宙コルベット艦まで技術を進めることもできます。

かくて陸海宙におよぶ立体的な戦闘と,技術開発まで含めたマネージメントまでが小さなマップの上で展開されるのです。

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さらに選択ルールまである
エアイーターの侵略のマップ
と,ここまででも小さななりに似合わぬ内容充実ゲームであることがわかりますが,これに加えてさらに選択ルールまであります。

選択ルールはプレイしたことがないのですが,眺めた範囲では,人類部隊の政治的な制約や,南極大陸の特殊ルール,工業生産力とは別個に石油エネルギーを考慮する拡張されたマネージメントルール,核兵器のルール,エアイーターの母船の着陸ルールなどがあります。

人類部隊の政治的な制約を表すために,マップには国家によるエリア分けが表示されていますし,ユニットにはちゃんと国名まで入っています。

ここらへん,選択ルールまで含めてちゃんとしたコンポーネント作りがされていて,製作サイドのこだわりが感じられます。

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「エアイーターの侵略」の難点

「エアイーターの侵略」に限らずメタゲーミングのマイクロゲームに共通の難点かと思いますが,ユニット数の少ないゲームであるため,ダイス勝負的になってきそうな印象を受けます。それほどやりこんだ訳ではないので,断言まではできませんが‥‥。

ただ,この「エアイーターの侵略」は序盤ではとりわけユニットが少なく,そのユニットでプレイを上手く立ち上げられるかどうか次第で,後々の拡大再生産の規模に大きな違いが出てしまいます。序盤でエアイーター側が上手く施設を拡大し損ねると,かなり響きます。同様に,人類側も兵器の技術開発プログラムが順調に進まないと,成す術もなく人類滅亡へのカウントダウンを見守らざるを得なくなることもあります。

もっとも一回のプレイがそこそこの時間で終わるので,納得が行かなければどんどんやり直せる範囲ですから,それほど罪は重くないでしょう。

「エアイーターの侵略」のどこが成功しているのか? (補足)

レビューを書いてからだいぶ月日が流れてしまいました。
最近、エアイーターストライクバックを眺めてみて、改めて本作品のどこが面白かったのか考え直してみました。

思うに、シンプルでプレイアビリティが高いため全体の戦略に労力をかけることができる。全体の戦略方針についてのジレンマが面白い。というところが鍵ではないでしょうか。

逆に言えば、失敗しているゲームの例として「インベージョンアース」があります。これは細かい戦術ルールや修整が多くてそうした些末な部分かかる労力が負担になっているように思います。また、全体の戦略方針について、興味深い選択肢がないということもあると思います。

エアイーターでは、侵略側には、1:地球軍を直接叩いて抵抗力を奪う、2:大都市を破壊して経済力を奪う、3:直接エアコンバージョンを進めるという3つの選択肢があります。それぞれメリットデメリットがあり、どれが良いのか悩ましいバランスになっています。

関連ゲーム / 類似ゲーム

このゲームには続編があります。その名もエアイーターストライクバックです。もちろん同じメタゲーミングのゲームです。ただし,こちらはマイクロゲームより二周りほど大きいボックスゲームになっています。こうしたよりゴージャスになった続編が出たことからみても,「エアイーターの侵略」が当時のSFゲーマーの間で好評であったことが窺えます。

いかにも怪しいエイリアンによる地球侵略の似たようなノリのゲームとしては,TSRのやつらはプレザントヴィルを侵略した
や,WESTENDのバグアイドモンスターなどがあります。また,TASK FORCE GAMES の宇宙戦争は,有名なHGウェルズの小説「宇宙戦争」を原作とした地球侵略ゲームです。

世界地図を使っている点で似ているものとしては,フルサイズのボックスゲームになりますが,GDWの
インベージョン アースがあります。ただし、面白さが勝っているという訳ではありません。

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