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インベージョンアース
Invasion Earth / GDW


一言で言えば‥‥

帝国軍,ついに地球侵攻! ソロマニ辺境戦争はついに決定的な場面を迎えた

トラベラー系ボードウォーゲームの一作,日本ではレアアイテムか?

こんなゲーマーにお薦めしたい

GDWの一連のトラベラー世界ボードゲームを完遂したい方に

やや煩雑な戦闘システムを苦にせず,戦局の展開を楽しめるプレイヤーに

プレイ人数 2人
プレイ時間 3〜6時間
ルール難度 中級ウォーゲーム
デザイナー マーク ミラー,フランク チャドウィック,ジョン アステル
入手状況 入手困難

GDWのSFボードゲーム全般について思うこと
インベージョンアースのボックス
いつもですと,「インベージョンアース」の設定というところから書き始めるのですが,今回は少し趣向を変えて見ました。一つには,わたしがトラベラー宇宙史に詳しくないので,この「インベージョンアース」の戦いの位置付けに自信がないないということもあります。ただ,それとは別にGDW社のSFゲーム全体に対する,交錯した思いについてどこかで書いて置きたいということがありました。

GDW社のSFゲームは,その設定,ゲームとしての取り上げ方などは,非常に良いと思います。いわゆる「つかみ」の部分が良いのです。

大銀河帝国と遭遇した地球の恒星間ゲリラ戦を描いた傑作「インペリウム」。宇宙に出てなおイデオロギーの対立から激突する二大植民星系が様々な兵器で殴り合う「ダブルスター」。宇宙空間ならではの慣性システムを中心に据えた独特の戦術級ゲーム「トリプラネタリー」。小惑星帯という新たなフロンティアの開拓を進める宇宙版西部劇「ベルター」。

まだまだありますが,いずれも設定を聞いてワクワク,コンポーネントを広告で眺めてドキドキ,本当に期待させるゲームばかりでした。ただ,そうしたゲームたちが,必ずしもプレイしたときに期待に応えてくれないことが多かったのも事実です。

もちろん「インペリウム」のように幾度も再版される傑作も含まれているのですが,むしろ多数派は「これはちょっと困った」というゲームでした。プレイしてみたときに,「ちょっとテストプレイすれば,このままでは破綻しているのがわかるではないか‥‥?」というものが少なくないのです。

ヒストリカルシミュレーションゲームの方でもチャドウィックのデザインでは同じような傾向を感じるので,これはGDWというメーカーの根本的な問題点なのかも知れません。着想の面白さを形にするところまでが上手で,それを完成させるデベロップには力を入れていないということなのでしょう。

これはGDW社のルールブックに顕著に感じられます。GDWのルールブックは,大項目までしか分かれておらず,比較的自然語(これはSPI社のルールが法律語と揶揄されていたのと対照する表現です)で書かれています。このため,一読するには読みやすいのです。けれども,ゲーム的に疑問点が出てきたりした場合には,それを解決できないことが多いのです。これはテストプレイなどでルールを練り込むということをしていないからでしょう。

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インベージョンアースのプレイ
インベージョンアースのプレイ
「インベージョンアース」では,圧倒的な宇宙戦力を持つ帝国軍が地球へと飛来してきます。

宇宙戦闘のシステムは,シンプルでグループ対グループでラウンド単位で撃ち合い,同時に損害を適用していきます。一方が撤退もしくは全滅するまで続け,進入側が勝利するとさらに先の軌道へと進むことができます。

プレイスタイルにもよりますが,いずれにせよ帝国の圧倒的な戦力は地球艦隊を撃破して地球の軌道上へと押し寄せてくるでしょう。

この後,帝国艦隊が輸送してきた地上部隊が降下,着陸を実施し,これを艦隊が地上爆撃で支援します。地球側は惑星防衛システムや,惑星間防衛戦闘機で迎撃し,最終的には地上部隊で陸戦で抗戦することになります。

画像はプレイの状況です。マップは,正二十面体で球状の地表すべてを表しています。原則的には同一へクス戦闘のウォーゲームです。移動/戦闘を交互に実施するのは普通です。しかし,戦闘の解決が独特で,互いのユニットが同時に敵の任意のユニットを戦闘比システムで攻撃します。ユニットのサイズが連隊から軍まであるため,1:1.5という細かい戦闘比があったかと思うと,1:10から1:100などという極端な戦闘比まである独特のシステムです。

この独特の戦闘解決のため,戦闘は奇妙なテイストを持っています。移動/戦闘で,それぞれ自分のユニットをそれより少し弱いユニットを叩くように運用していくのが一番効率が良いのです。地球側は,この原則に従って質に勝るが数が十分とは言えない帝国にゲリラ戦をしかけることになります。一方,帝国は,地上では降下した拠点基地から補給を引くという制約を受けているため,なかなか原則を生かして部隊を運用することができません。

次々に増援を送りこめれば帝国は地上でも優位を築けるでしょうが,実際には輸送船団の規模の制約や,地球側の対空砲火に悩まされそうも行きません。そしてトラベラー世界の史実でもある通り,地球の粘り強い抗戦の前に帝国は意外にも苦戦していくことになるのです。

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インベージョンアースの難点

「インベージョンアース」は,圧倒的な帝国を土俵際で粘り切る地球を描いた「つかみ」のあるゲームです。宇宙戦闘と,地上戦闘のミクスチャーは,いかにもSFゲームらしくワクワクさせます。正二十面体の地球のマップは美しく,ここで繰り広げられる地球側のゲリラ戦も,ちょっと変わっていますがなかなかです。

ただプレイすると,もう一つ面白くありません。その最大の理由の一つは,戦略的な選択肢が狭いということでしょう。同じような地球侵略もので,やはり地球全体のマップで戦うメタゲーミングの「エアイーターの侵略」があります。「エアイーターの侵略」では,侵略者側には部隊戦闘で勝つ,都市破壊で経済的に粉砕する,大気改造で地球人が住めなくしてしまうといういくつかの大きな選択肢があり,それによってゲーム展開は大きく変わります。

ところが,「インベージョンアース」ではそうした選択肢が狭く,帝国は宇宙戦闘で圧倒し,その後,手薄なところに降下してそこからローラー作戦を展開するより他ありません。そういう意味で誰がやっても,こうするしかないという印象があるのです。そして,誰がやっても地球側のゲリラ戦の前に苦戦を余儀なくされていくのです。

ここらへんがプレイしたときに,ゲームとしてもう一つ盛り上がらない要因でしょう。

もう一つの要因として戦闘解決などで細かい修整が多いことが挙げられます。装甲部隊やエリート部隊の戦力修整,ユニットごとに決められた技術レベルによるコラムシフトなど,戦闘の解決時に気にしなければならないことが存外,多いのです。ユニット数が少ないとは言えないゲームなだけに,これでまた戦略ではなく,戦術に労力をかけさせられることになります。

ここらへんのバランスは好みもあると思いますが,全体としては「なるようにしかならず」,その割りに細かいところで手間が掛かるのは労力が面白さとして報いられていないという感じがあります。そこらへん,フラストレーションを感じるところです。

とは言え,それでも一連のGDWのSFボードゲームの中では,プレイした途端に破綻が感じられるというほどにはひどくなく,「まぁまぁ」の出来映えと言って良いでしょう。ルールがクリアでない問題は毎度のことで,プレイヤー間で相談しながら決めていくのを覚悟して置くことになります。

関連ゲーム / 類似ゲーム

トラベラー関連のGDWのSFゲームとしては,古典的名作「インペリウム」を始めとして,「メイデイ」「アザンティハイライトニング」などがあります。

地球規模の防衛戦を扱ったゲームとしては,メタゲーミングの傑作「エアイーターの侵略」があります。

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