トワイライトインペリウム初版
Twilight Imperium / Fantasy Flight Games
ショートコメント
●ファンタジーフライトゲームズのデビュー作、20世紀最後のSFビッグゲーム
First game from FFG, the last big game in 20th century.
published designed players time
1997 Christian T. Petersen 2-6 3+ hours
FFGのフラグシップゲーム

 近年、もっとも活気のあるSF/ファンタジー系のゲームメーカーと言えばFFGでしょう。
 そのFFGのデビュー作にして、フラグシップゲームとも言うべき存在が「トワイライトインペリウム」です。
 初版が発売されたのは1997年。当時はSFゲーム冬の時代でした。
 新興の無名メーカーからの出版でありながら、大箱にカラフルに詰め込まれたコンポーネント、SFゲーマーの大好きな種々のガジェット満載のシステムで、大いに話題を博しました。
 その後、2版を経てさきごろ3版が登場したところです。いまでは他にも多くのゲームをラインナップしているFFGが、再び原点を再デザインするところに、製作サイドの本ゲームへの愛着を感じます。
ファイナル・コメント
 「トワイライトインペリウム初版」は全5作におよび、20世紀最後のSFビッグゲームに成長して幕を閉じました。
 ただ、「トワイライトインペリウム」には難点もあります。その最たるものは、実はシリーズの「売り」であるヘクスプレイのところにあります。ゲーム開始時に毎回、ヘクスタイルをプレイしてボード設計をします。シャッフルして配ったボードを各自が配置していくのですが、このときに有望な星系を自陣営の近くに、不毛のタイルを敵陣営のところに置きあうのです。
 このタイル配置の影響力は絶大で、テクノロジーが低い間は移動能力が限られていて地形によって活動範囲が事実上区分けされてしまいます。
 この初期領域の中で大きな経済力を得られるプレイヤーと、ほとんど成長できないプレイヤーとでは、かなりの格差が付いてしまいます。そして、この経済格差がテクノロジーの発展の格差になり、戦闘能力や、さらなる拡大能力の格差になって雪だるま式に転がっていくのです。
 このため、実際にプレイすると、セットアップ段階で貧弱な星域に身を置いてしまうと、非常に辛く苦しいだけのプレイになってしまいます。
 特に初版ではタイル配置がローテーションだったので配置の後手番の不利が際立っていました。2版ではこの点は改められウェーバー方式になりました。
 ヘクスプレイは面白いアイデアなのですが、そこの部分がゲーム全体を規定してしまう影響力が強すぎるのが悩みどころです。
 バランスの取れたオリジナルのマップ配置を作っておいて、その状態でプレイする方が良いかも知れません。
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 この「トワイライトインペリウム」は、FFGの初期作品の中心であったヘクスプレイシリーズの第1作でもありました。
 ちなみに、第2作はファンタジーの「バトルミスト」、第3作は「トワイライトインペリウム」へと至る人類の発展の前史に位置する「サンダーズエッジ」です。そのいずれもが拡張キットが発売され、作品世界をたっぷりのガジェットで描き出す大作ばかりでした。残念ながら版を改めて生き残っているのは「トワイライトインペリウム」だけです。
 「トワイライトインペリウム」は、基本システムはそれほど難しいゲームではありません。どちらかと言えばシンプルなベースシステムの上に、これでもかというガジェットが盛り込まれています。B級SFゲームの王道を行く作り方と言えましょうか。
 良くある銀河帝国建設マルチ系なのですが、このゲームの特徴の一つがギャラクティックカウンシル(銀河大会議)の存在です。このゲームでは、各勢力は既に汎銀河種族同士として交易もあれば外交もある設定となっています。そしてボードの中央にあるもっとも重要な星系、メカトールレックスにおいて銀河全体の秩序を議論する銀河大会議が定期的に催されているのです。
 ここでは銀河の共通法などが議論され、可決されたものは追加のルールとして適用されます。もちろん再討議することもできなくはないのですが、基本的には覆すことは難しく、かと言って脱退して破るということもできないので極めて影響力が大きいのです。
 交易部分ではトレードアグリーメントの設定があります。二勢力の間で合意が成立すると交易によって互いに経済的に潤うというものです。銀河種族によっては特殊能力で交易から追加の利益を得られるものもあるので、どの勢力とどのタイミングで交易を行うかは重要です。
 銀河種族の設定も中核要素です。基本セットには人類であるソル、ヒューマノイドであるレトネフ、トカゲ系のXXCHA、昆虫系のノル、猫系のハサン、水棲系のジョル・ナーの6種族が登場します。
 初期段階でのテクノロジーの状態が異なっており、経済力や銀河会議での発言力なども少しずつ差が付いています。
 テクノロジーも「トワイライトインペリウム」では重要です。
 テクノロジーには3系統があります。推進技術、武器技術、一般技術です。そしてそれぞれがレベル0からレベル6まであります。レベル0では基本ルール通りなのですが、レベルが上がっていくとルールを越えた行動が可能になります。
 推進技術は移動能力に関するもので、移動力が追加になったりアステロイド群を通過できるようになったりします。レベル6では、銀河のどこへでも自在に空間ジャンプできるようになります。ただし、コストはそれなりに掛かりますが。
 武器技術は戦闘能力に関するもので、艦の戦闘能力を上げたり、対空砲火で降下してきていない宇宙空間の敵艦を攻撃できるようになったりします。レベル6では、惑星をジェノサイドしてしまうX89バクテリア攻撃ができるようになります。
 一般技術は経済活動や生産活動を改善するものになります。地味に見えますが、このタイプの銀河征服ゲームは拡大再生産経済を軌道に乗せるのが焦点なので、かなり重要です。
 もちろん様々なタイプのユニットがあって、地上部隊、戦闘艦、輸送艦、対宙システム、戦闘機などありそうなものは一通り揃っています。宇宙戦闘、侵入降下戦闘、地上戦闘ができるのはもちろんです。
 「トワイライトインペリウム」の初版には、いくつもの拡張キットが出ました。
 最初の拡張キット「ボーダーランズ」は、本体時点で一緒にデザインされたものです。本体に入りきらなかった2つの銀河種族が登場してきます。
 宇宙海賊系のメンタクと、カメレオンヒューマノイドのイサリルです。ボックスアートはこの2種族です。
 このほかに建設、暗殺、旗艦、主席星系などの選択ルールが入っており好みに応じて導入するようになっています。
 第2の拡張キットは「ディスタントサン」です。このキットでは中立の星系に存在するノンプレイヤーの勢力の存在が詳細に描き出されるようになります。これによって初期の探索では他のプレイヤーではなく、未知のローカル勢力などとの確執に追われることになります。プレイタイムが一気に伸びそうな拡張キットで、わたし自身は導入して遊んだことはありません。
 第3の拡張キットは「アルマダ」です。これはプラスチックミニチュアのセットです。「トワイライトインペリウム初版」のユニットはカードボードタイプだったのですが、それをプラスチックミニチュアに置き換えるものです。
 パラメーターなどが印刷されていないのでプレイ勝手は悪くなるような気もしますが、2版以降はずっとこの形式になりました。
 第4の拡張キットは「アウターリム」です。これはタイトル通りのキットです。新しいヘクスタイルが一山導入され、これまでよりも一回り大きいボードが形成されるようになります。「ディスタントサン」もそうですが、これもプレイタイムを一気に伸ばしそうな気がします。
 また、「アウターリム」には最後の2種族が追加になります。サイバー系のルルズルックスと、植物系のナアルです。この2種族は2版では登場しません。