銀河大戦記
Victory in the Galaxy / Tactics

一言で言えば‥‥

タクティクスのオリジナル付録ゲームの佳作

コンパクトにまとまったSFマルチ、小なりと言えどガジェットも工夫もあり

published as attachment game of "Tactics" magazine in Japan.
recommended as playable inter-stellar wargame which has a handful of sci-fi gadget.


プレイ人数 3人〜4人
プレイ時間 3時間〜
ルール難度 初級ウォーゲーム
デザイナー 岡本 博信
入手状況 オークションで探すしかない?

銀河大戦記をプレイするに至るまで

「銀河大戦記」は月刊時代のTACTICSの付録ゲームです。しかし、当時、交互にウォーゲームとRPGの号が発行されていた内のRPG側に添付されました。このため当時のわたしはこのゲームに触れることなく月日が過ぎてしまいました。
近年になってゲームジャーナル誌のSFアニメ特集号で、このゲームが紹介されているのを発見しました。それ以来、捜索していたのですが、なかなか出会うことができませんでした。本当にごく最近になってインターネットオークションが盛んになってきて、ようやく入手することができました。そうした意味では、長年の恋人に出会えたかのような思いで初プレイに漕ぎ着けた作品です。

銀河大戦記のコンポとシステム
銀河大戦記のプレイ
銀河大戦記は、雑誌の付録ゲームという都合上、2/3サイズのマップ1枚と、カウンターシート1枚という構成です。ガジェットを盛り込んだSFマルチとしては、かなり窮屈なデザインリミットといってよいくらいです。
しかし、その中で上手にガジェットを盛り込み、またパノラマ感も出しています。マップは同心円的な構成になっていて、各プレイヤーは外周からスタートします。勝利条件は銀河中央に自らの母星を移転することです。

マップは決して広いとは言えません。ところが、プレイすると、結構な広大さを感じさせます。その理由は、ゲーム初期においては、プレイヤーの1ターンの移動は、1つの星系を指定してそこの艦隊を隣の星系に移動させることだけに限定されているからです。このため、1ターンには1星系ずつしか版図は広がりません。技術開発によりやがて1ターンの移動の制約は広がっていきます。しかし、それでも他のゲームに比較すると移動は非常に制約されており、小さなマップを広く感じさせることになっています。

こうした非常に制限された状態から、できることを拡張していくものが技術開発です。版図が広がるのが遅いため、ゲームプレイでは資金もなかなか伸びません。その中から工面して技術開発投資を行うことになります。特に序盤では資金はきわめてタイトなのですが、それでも上述のような極めて限定された行動能力を拡張することの効果は大きく、早く良い技術を開発すれば他プレイヤーに大きく先んじることができます。

開発できる技術の能力は、他のゲームに比べると一読すると大人しく感じられます。ところが上述のように、デフォルトの制約が厳しいので、ちょっとしたことでも大変な威力を持っています。
たとえば、一つの星系から複数の目的地へ分散して移動できるようになるという能力は、おそらく普通のウォーゲームでは普通の移動でできて当たり前です。しかし、1つの星系から1つの星系へしか移動できないこのゲームでは、これだけで一気に版図拡張の速度が数倍してしまうのです。
これは一例ですが、ほかの能力も同様です。他のゲームであれば、大人しいかと思うような能力が、このゲームではプレイに重要なインパクトを持っています。このため、どの技術を開発するかで、各勢力の個性は大きく異なるものとなるのです。このへんの感覚は、SFゲームとしての醍醐味そのものでしょう。

やがて成長した勢力同士が中央でぶつかるようになります。その頃には、それぞれが技術をいくつも身に付けており、スーパーパワーとなっているはずです。実はそれでも普通のゲームで当たり前にできることをできるようになっただけなのですが、このゲームではそこに至るまでの過程に重みがあるので、正にバトルオブスーパーパワーと感じられます。
このあたり実に上手にデザインされているように思います。


銀河大戦記
銀河大戦記の工夫と惜しい点

上述のように銀河大戦記は、コンパクトながらも上手に銀河大戦らしさを出している佳作です。

マルチプレイヤーズゲームの陣取りものは、足の引っ張り合いで泥沼化しやすいのですが、このゲームはそれにもある程度の対策を打っています.
一つは、勝利条件が母星の中央移転だということです。このため、他プレイヤーの全滅などという設定と異なり、ある程度の収束性が生まれています。勝敗を争う両者の母星が互いに中央に接近してくれば、いよいよクライマックスということになります。

もう一つ、上述したような技術開発で勢力間の力の差が生まれやすいということがあります。このため、同じくらいの力で同じくらいのことができる同士でぶつかり合うマルチゲームより、ずっと決着が付きやすくなっています。

とは言え、少し惜しいのはCRTがブラッディなことです。このため大勢力同士でぶつかると両者壊滅ということが起こりやすくなっており、これで弱者が息を吹き返して泥沼化しやすくなっています。

このため、綺麗に勝ち切るプレイヤーが中盤で出ないと、銀河は泥沼の大戦に巻き込まれていくことでしょう。もっともこれにも対策があって、プレイヤーの人数分のバーサーカー(暴走最終兵器)が登場すると時間切れで判定に持ち込まれることになっています。ここらへんデザイナーはマルチの泥沼化しやすいという問題を良く承知して工夫を凝らしたと思われます。ただ、実感としてはそこまでプレイするのは既にヘヴィー過ぎるかなという気がしています。
もう少し早めに、「もうちょっとやりたかったかな‥」くらいのところで終わるオプションを考えてもいいような気がします。そこはプレイヤーが工夫しても良いでしょう。

関連ゲーム / 類似ゲーム


宇宙ものマルチは数多くあります。SFゲームの一つの王道といっても良いかも知れません。
その中で、特にこのゲームと比較したくなるものをいくつか挙げておきましょう。
銀河中央を目指すという構造と、最終兵器が登場するという点で、AHの「アメーバウォーズ」は良く似ています。
エポックの
「銀河帝国の興亡」は、国産のこのテーマのマルチとしてやはり比較されることになるでしょう。
「未知へのJUMP」は最近のこのテーマの注目作品といって良いかと思います。