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アメーバウォーズ
Amoeba Wars / Avalonhill Games


一言で言えば‥‥

宇宙アメーバの発生で衰退した銀河帝国を再興せよ!

アメーバや,帝国の負の遺産である最終兵器を倒して帝国首都へ!

こんなゲーマーにお薦めしたい

手軽な多人数SFゲームを求める方に

ルールの複雑さやディティールより,スピーディーな展開を好む方に

プレイ人数 4,6人
プレイ時間 2〜6時間
ルール難度 初級ウォーゲーム
デザイナー ゲーリー ドナー
入手状況 海外中古ゲームショップでもレアアイテム

ゲームを貸していただいたOさんへのお礼
アメーバウォーズのボックス
「アメーバウォーズ」1981年にAH社から出版されたゲームで,日本にも訳付で輸入されました。当時は,非常に多くのAH社,GDW社などのゲームが日本に入ってきていた頃です。

不幸にして,わたしの周囲ではこのゲームは誰も購入せず,むしろ同時期に同じAHから発売された「ウィザーズクエスト」の方が流行しました。このため,このゲームは個人的には死角に入ってしまいました。

先ごろ,友人のOさんのご厚意により本ゲームをお借りすることができ,ようやくにして紹介できる運びとなりました。

Oさん,ありがとうございました。

「アメーバウォーズ」は,かつて強大な銀河帝国があった星域を舞台にしています。帝国は,惑星をも飲みこんでしまう巨大な原生動物スペースアメーバの侵攻により滅んでいったのです。

プレイヤーは瓦解した帝国の辺境の一勢力として,再び帝国領土を人類のものとすることを目指します。そのためには,帝国崩壊の原因となったスペースアメーバを駆逐し,他の辺境勢力との争いに勝ち,また帝国の負の遺産であり,今は暴走して近づくものを破壊しつづけるだけの存在となっている最終兵器も倒さねばなりません。

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アメーバウォーズのシステム
アメーバウォーズのマップ
アメーバウォーズは,とてもシンプルなゲームです。ルールブックは,A4で3枚分相当の畳み込みの紙だけです。

基本的には,攻撃する艦船の数か戦力にダイスを加えた値を防御側の星系の規模にダイスを加えた値と比較し,負けた側が艦船を失うという仕組みです。相手がアメーバだったり,最終兵器だったりすると,多少の段取りの違いがありますが,概略は同じです。

攻撃は艦船数が許す限り続けられ,攻撃が成功した時に占領した星系に送りこめる余分の艦船がない場合以外は,どこまでも続けられます。このため,1プレイヤーターンごとに勢力図は大きく揺れ動く可能性があります。

スペースアメーバや,最終兵器はカードによって活動します。
アメーバウォーズのカード
右がカードの例です。カードには,数字と,機能が書かれています。

特に活字ポイントは小さいのですが,数字は非常に重要です。プレイヤーは毎ターン,カードを1枚プレイするのですが,このカードの数字の大きい順にプレイの手番が回ってきます。

また,カードの機能ですが,最初のプレイヤーは全員のカードの機能を使用します。そして自分のカードを捨てます。2番目のプレイヤーは,捨てられた最初のプレイヤーのカードを除くすべてのカードの機能を使用します。以下,順に進行し,最後のプレイヤーは自分のカードの機能しか使えません。

このシステムのため,順番とカードの機能を睨んで,戦況に大きな影響を与える駆け引きが発生します。数字の特に大きいカードには,アメーバの増殖攻撃(左から2番目)や,最終兵器の活動(左から3番目)が割り振られていたりして悩ましいところです。ここが勝機と見て先手を取ろうとすると,意外な妨害が発生してくるのです。

数字の小さいカードには,臨時の増援(いちばん右)が割り振られていたりします。ただ,数字が小さいということは,これより大きい数字を出したほかのプレイヤーにも増援が行くということですので,そこは注意のいるところです。

この他に,プレイヤーごとに特殊能力を与える選択ルールも用意されています。このルールを使用すると,アメーバの害を受けにくいプレイヤーや,ハイパージャンプで神出鬼没なプレイヤーなど,それぞれの勢力に個性が出てきます。選択ルールを入れてもさして難しくはならないので,入れた方が面白そうです。

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アメーバウォーズのアメーバウォーズたる所以

先日,貸していただき,早速,わがB級SFゲーム分科会の有志を募ってプレイしました。

とかく多人数の勢力争いのゲームと言うのは,大抵はプレイ時間が長くなったり,勢力が均衡して手詰まりになりやすいものです。ところが,このゲームでは,思いきった連続攻撃が可能なシステムと,狂言回しであるアメーバの存在によって,そうした閉塞を打開しています。

アメーバはほいほいと増殖してくる能力と,味方艦隊に与えるダメージの大きさとで,強力です。その一方で機動性は低いので,強力なるが故に他のプレイヤーとの間の動的な緩衝地帯としての働きをしてくれることもあります。アメーバの存在なしに二国が接すると激しい遠征合戦になるので,アメーバ恋しいことさえあります。

アメーバが他のプレイヤーを抑えていてくれるからこそ,中央部への銀河帝国首都奪回への電撃戦を敢行できるとう面もあり,その一方でアメーバの増殖進路に当たってしまうと国力が急速に疲弊することも起こります。その意味で,このゲームのタイトルが「アメーバ戦争」というのは真髄を突いています。

かくてアメーバも含めた諸勢力の動向によりゲームは非常に流動性に富んだものとなり,またいつも誰からも決して距離的に遠くはない帝国首都を睨んで緊張感を孕んだものとなります。

アメーバウォーズの難点

このゲームを持っている人は,みな「昔はやりまくりましたよ」と口を揃えて言います。また,ウォーゲームとは縁のないファミリーゲームのプレイヤーの方でも,このゲームは気に入ってアメリカから個人輸入したという話しも聞きます。そういう意味で,広いゲーマー層に楽しんでもらえる手軽でスピーディーで面白いゲームであることは間違いないところです。

そんなこのゲームの最大の難点は,今となっては入手しにくいということに尽きるでしょう。

このゲームは,AHのオリジナルではないようで,ランダムという会社がデザインしたものをAHが出版したようです。AH社がなくなった現在,版権がどうなっているのかわかりませんが,もし可能なら再版してもらいたいゲームです。

それ以外には,カードのデザインも今のゲームコンポーネントデザインの水準であれば数字を大きくするなどして扱いやすくするのかなという気がします。古いゲームですので,ややユーザーフレンドリーな作り込みが行き届いていないところはあります。ただ,ゲームの大きな仕組みが良くできているので,許せる範囲の問題です。必要なら,自分で日本語化したカードを作るのが良いでしょう。

関連ゲーム / 類似ゲーム

手軽でスピーディーな多人数SF/Fゲームとして,同じ時期にAH社から「ウィザーズクエスト」が出ています。題材は魔法の島マルノンでの戦いということで全然ちがいますが,これもなかなか面白いゲームです。
また、最近登場した「リスク2210」もSF地政学マルチの新世代の傑作です。

設定としてとても近いのは,セイバーヘーゲンの小説「バーサーカー」を題材としたFB社の
「バーサーカー」です。この他にも銀河帝国を目指して諸勢力が争うゲームは数多くあります。このゲームのガジェットを踏まえているかも知れないと感じさせるのは、TACTICSオリジナル付録ゲームの「銀河大戦記」です。近年ではティムジム/プリズムの「スローンワールド」や,拡張キットがいくつも出た「トワイライトインペリウム」などがあります。古くは,これもAHがライセンスを買いとって出していた「ステラコンクエスト」があります。

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