ウィザーズクエスト −魔法の島の戦い−
Wizard's Quest / AH

一言で言えば‥‥

魔法の島に埋められた3つの秘宝を求めて戦うエリア式ウォーゲーム

シンプルでプレイアブル、宝探し型なので収束もちゃんとする傑作マルチ

こんなゲーマーにお薦めしたい

手軽で面白いマルチプレイヤーゲームをお探しの方にはピッタリ

ファンタジーゲームはやりたいけど、ガジェットたっぷりのものは辛いという方に

プレイ人数 3〜6人 (1、2人)
プレイ時間 2〜4時間
ルール難度 シンプルなエリア式ウォーゲーム
デザイナー ギャレット ドナー
入手状況 海外中古ショップを当たられたし

魔法の島マルノンの戦い
ウィザーズクエストのボックス
「ウィザーズクエスト」は、同時期に同じAHから出た「アメーバウォー」とともに、当時、プレイアブルなSF/Fマルチとしてプレイ人気を二分した作品です。

魔法の島マルノンを舞台にしたマルチプレイヤーズゲームです。マップはエリア式になっており、一見すると陣取りマルチ風です。実際、そうした側面もあるのですが、最終的な勝利条件は違います。
貴方は大魔法使いから試練を与えられて、このマルノンに放り込まれたのです。大魔法使いは、貴方の3つの宝物(宝箱、指輪、王冠)を島のどこかに隠してしまいました。これをすべて見つけだすことが目的なのです。

ただし、ことはそう簡単には進みません。貴方以外にも同じ目的を目指して島を彷徨しているものがいるのです。また、島には獰猛なオークや、強力な人食いドラゴンもいます。彼らもまたプレイヤーの部隊を襲ってくる積極的な障害なのです。

システムは特に難しくはありません。プレイヤーが毎ターンにできることは、原則として一回の攻撃を自軍支配エリアから隣接エリアに対して実行することです。
攻撃の手順もシンプルです。ダイスを1個振り、自軍エリアにいるユニット数がレンジとなります。このレンジ以下を出せば攻撃成功で、相手のエリアからダイスの数のユニットを取り除きます。同時に相手も同じことを実行して反撃します。

ただし、通常はレンジは最大でも4です。それ以上ユニットがいても、5と6は攻撃失敗です。これを越えたレンジを獲得するには、プレイヤーに一体ずつ与えられたヒーローと魔法使いを使うことになります。
ヒーローを使うと、レンジの最大が5まで上げられるようになります(それだけのユニットがいればです)。魔法使いを使うと、レンジの最大は6まで上げられるようになります。つまりユニットさえ揃えれば確実に攻撃が成果を上げることが期待できます。ただし、魔法使いにはデメリットもあります。通常の攻撃では敵ユニットを除去できますが、魔法だと他の場所へ飛ばすだけなのです。このため盤上の敵のユニット数は減らないことになります。
とは言え、このゲームでは宝探しが目的で、自分の宝物が埋まっているエリアに入るため、どうしてもそこから敵をどけようと思えば、魔法使いの攻撃でも良いわけです。

このゲームの大きな特徴は、目的が大きなエリアを取ることではなく、宝探しであるということです。
ですから、最後の宝を取ったときに、自分のエリアが狭かろうが、ユニットが少なかろうが関係ありません。そこが勘違いしやすいところです。実際には毎ターン得られる増援は、大きな領土を確保することで増えるので、ついつい大きな領土を目指したくなります。
けれども、大きなエリアを持てば、オークの侵入やドラゴンの攻撃を受けやすくなるので、維持するのは容易ではありません。他プレイヤーも分断しようとしてくるでしょう。領土維持に奔走している内に、目的を見失ってしまったりしないようにしなければなりません。
目的が宝探しであるため、徐々に各プレイヤーは宝を一つまた一つと掘り当てて行き、ゲームは終焉に向かっていきます。陣取りマルチでは往々にして手詰まりになりやすいのですが、このゲームはきちんと結末を迎えられます。そこが大きな長所でしょう。

いくつかの訂正と明確化
魔法の島マルノン
残念なことに、このゲームの当時の日本語訳にはいくつか訂正すべき点があるので、ここで紹介しておきましょう。

まず、「オークの凶暴化」のところで、オークの占領移動の結果により攻撃元区域のオークが1体以下になってはならないと書かれていますが、これは1体は残らなければならないの間違いです。ですから、1体になっても構わないのです。その下に2体以上いる間は攻撃を続けると記載されているので、類推された方もあるかと思います。

次に、「ヒーローと魔術師」のところで、魔術師を含む軍隊が攻撃した場合に分散されるのは、魔術師側の損害ではなく相手側の損害です。魔術師は最強のダイスレンジを持っていますが、その代わり与えた攻撃は分散にしかならないというデメリットがあり、バランスが取れているのです。ダイスレンジ最強の上に自分の損害も分散で済むのでは、ちょっと強すぎです。

この後者は、魔法使いの使用方法に大きな影響を与えるので、もし貴方の周囲にこのゲームを間違えてプレイしている人がいたら是非とも教えてあげてください。



マルノンの歴史を振り返る
マルノン物語
ウィザーズクエストはシンプルなゲームなので、改造の余地が存分にあります。
AH社の機関誌であるGENERALに掲載されたもので、さらにTACTICS誌に訳載されたのが、右の画像の「マルノン物語」です。
これはゲームより以前のマルノンの歴史をいくつかのシナリオで描き出すという試みです。

最初のシナリオ「最初の人々」では、沿岸に移住してきた人々が島の先住民であるオークを駆逐する最初の戦いを描いています。オークが盤上から駆逐されたときに最大の領土を持っているプレイヤーが勝利するという陣取りシナリオです。

第2のシナリオは、「オーク王リューブ」です。野心家リューブは、マキャベリズムが過ぎて人間社会から脱落したのですが、彼はオークと結んでオーク復活の戦いを指揮することで野心を実現しようとしたのです。プレイヤーの一人がリューブとなり、強力な凶暴化ルールに加えてリューブの親衛部隊による通常攻撃を行ってきます。他のプレイヤーは人間側としてリューブの野望阻止に向け戦います。

第3のシナリオは、「グレートドラゴンハント」です。タイトルの通り、暴れん坊のドラゴンを誰が退治するかを争うシナリオです。

最後のシナリオは、「最後の戦い」です。第3のシナリオでドラゴンが倒れ、人々は宿敵オークとの最後の戦いを始めます。誰がもっとも多くのオークを倒したかを競うシナリオです。

実際にプレイしたことがないので、これらがオリジナルゲームと比較してどうなのかは、わかりません。けれども、歴史の設定、それを切り出したシナリオ集は、マルノンというファンタジーアイランドに対する想像を膨らませてくれます。読み物として楽しいです。いずれ機会があったらプレイしてみたいものだと思っています。

ウィザーズクエストの難点

「ウィザーズクエスト」は,プレイアブルで決着のつく面白いファンタジーマルチです。

取り立てて欠点というのは思い当たりません。ファンタジー世界なら、もっとガジェットがあっても良いと思うのであれば、自作してガジェットを追加することも容易でしょう。
ゲーム紹介に書きませんでしたが、祈願カードという一種のイベントカードもあります。

強いて難点を挙げるとすれば、やはり入手困難だということに尽きるかも知れません。ゲームとしてのまとまりの良さから考えれば、再版されても良いように思うのですが、今のところそういうニュースは聞こえてきません。



関連ゲーム / 類似ゲーム

アメーバウォーズは、同じ時期の同じメーカーのマルチとして、個人的には2つ並んで記憶しています。この他に、ファンタジー系ではタイタンや、ドラゴンハントなどもありました。少し毛色が違いますが、マジックレルムもありました。AH社が元気だった時代の作品群です。
あの頃は、他のどのメーカーがなくなることはあっても、AH社がなくなることはありそうに思えなかったのですが‥‥。

近年のファンタジーウォーゲームとしては、コロンビアゲームズが積木のシステムを使って出したウィザードキングスを挙げて置きましょう。

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