ダークネビュラ
Dark Nebula / GDW
ショートコメント
●名作「インペリウム」のシステムを使った120シリーズの姉妹作、アスラン対ソロマニの二大星間国家の激突
Sequel Game of "Imperium" in 120 series, Aslan vs Solomani, 2 galactic power engages interstellar war.
published designed players time
1980 Mark Miller 2 2+ hours
インペリウムの影

 「インペリウム」が、GDWから出た一連のマーク・ミラーのSFゲームの中でも最も成功し、また幾度も再版されてきたのはSFゲーマーなら誰しもが知っている通りです。
 その「インペリウム」の姉妹編とも言うべき存在が、当時、GDW社が120分で学習でき、120分でプレイできる、120ユニットのゲームシリーズとして出していた120シリーズの一作、「ダークネビュラ」です。
 ゲームシステムは、ほぼ「インペリウム」の引き写しで、生産、移動、戦闘などのルールはそのままです。しかし、大銀河帝国対地球という独特のシチュエーションならではの、皇帝の介入のルールなどはありません。

 なにより決定的な違いは、同じ120シリーズの「アステロイド」と同じく、小箱サイズのマップが8枚入っていて、毎回、これを組み合わせて使うという点です。
 このため、星間マップの配置が異なることによって、展開が激変してしまいます。「インペリウム」ではテストプレイをして両者の勢力バランスが均衡し、幾度もの小戦争を繰り返すように微妙な設定をしてありました。しかし、この「ダークネビュラ」ではランダムなマップ配置により、時にはクイックキルが発生するような展開にもなります。これには、「インペリウム」と状況が異なり、激突する2大勢力の本星が両方とも盤上にあるということも大きな要因となっています。
 その一方でタイトルにもある暗黒星雲が両者の間に介在すると、探検しなければ航路が開けません。このため、まったく逆に閉塞的な状況で長期戦になることもあります。
ファイナル・コメント
 「ダークネビュラ」は、先ごろ「RPGamer 9号」の付録ゲームとして復刻されました。
 この復刻では進行記録用チャートが新たに用意されたり、「インペリウム」にあった空母という艦種がオプションで新たに用意されたりしていて、これまでの版よりも充実しています。「ダークネビュラ」としては現時点での決定版と行って良いでしょう。

 最後になりましたがタイトルの所以の暗黒星雲について触れておきましょう。この暗黒星雲は未開拓の星域で、探索しないとワープルートが開けない一方で、此処には様々な機会が眠っているという設定になっています。
 ところが、実際のプレイではあまり活用されません。「RPGamer」のリプレイで正にそうなってしまっているのですが、2大勢力が直接対峙しユニット数の規模も小さい「ダークネビュラ」では正面戦線から予算を割いて暗黒星雲を探索しているような余裕がないのです。
 負けている側は戦線を支える戦力を補充するのに手一杯ですし、勝っている側はマップが狭いので優勢を利して一気に正面戦線で攻勢を掛け続けて押し込む方が暗黒星雲などという不確定なものに投資するより勝利に近いのです。この辺りも「インペリウム」に比べて練りが甘いところでしょうか。
 しかし、GDW社のゲームは全般にデベロップが甘く、もっとプレイバランスが壊れているものもありました。
 その中にあっては「インペリウム」という成功作品のシステムを持ってきているので、今もプレイに値する水準です。「インペリウム」が先ごろの再版にも関わらずまた入手難ということなので、この「ダークネビュラ」が再び入手できるようになったことは意義深いと思います。
関連ゲーム
インペリウム 第2版
●第5次辺境戦争
メイデイ
トラベラー
ダブルスター
 「ダークネビュラ」が同じゲームシステムでありながら、「インペリウム」と大きく雰囲気が異なる理由は、こうした展開の違いによるところが大きいでしょう。
 「インペリウム」ではマップが良く練られているので一度の戦争では決着が付かず数次に渡る戦争を繰り広げていくことになりました。ところが、「ダークネビュラ」にはそうした連綿とした戦史というのが生まれにくいのです。
 また、「インペリウム」の帝国は盤外にも広がるイメージがあって、現場度外視の勝手な指令をしてくる皇帝も含めて帝国の巨大さを感じさせました。
 ところが、「ダークネビュラ」では2大銀河勢力が激突しているはずなのに、スケール感があまりなく、むしろこじんまりした印象を与えるのです。
 「ダークネビュラ」が「インペリウム」ほど人気がない理由には、ゲームとして荒削りだということもあるのですが、一番大きいのは、この銀河叙事詩のスケールを感じさせてくれないという点にあると思います。
 細かい点では、「ダークネビュラ」には「インペリウム」にあった空母と戦闘機がないという差異もあります。これも多少、スケール感覚に影響しているかも知れません。
 逆に地上部隊には装甲部隊があったりします。