メイデイ
Mayday / GDW/HJ
ショートコメント
●1978オリジン賞SF部門受賞、慣性移動による宇宙戦闘システムと、宇宙船関連情報をまとめたトラベラーモジュール
1978 Origin Award Winner. Traveller's module which covers spaceship combat and information around spaceships.
published designed players time
1978 M. Miller, 2+ dependin on scenario
トラベラーでの宇宙船戦闘を詳述する

 「メイデイ」は、1978年のオリジン賞SF部門を受賞した宇宙船戦闘ゲームです。
 このゲームは「トラベラー」のモジュールであると同時に、その宇宙船戦闘システム部分として一応、独立したボードゲームでもあります。
 「一応」と書いたのは、このゲームが独立したボードゲームとしては、やや弱いところがあるからです。ゲームシステムはGDWの「トリプラネタリー」の慣性移動システムを使用しており、基本システムには目新しいところはありません。また、「アザンティ・ハイライトニング」もそうなのですが、RPGで使用する意図があるのでルールのカバーする範囲が単純なボードゲームより広めになっています。しかし、その細部をボードゲーム的にきっちり定義できている訳ではありません。

 ボードゲームシステムとして、先達の「トリプラネタリー」との比較で注目すべき点を二つ挙げておきましょう。
 第一に、戦闘システムは「インペリウム」以来の伝統であるレーザー戦闘とミサイル戦闘の双方をカバーしたものになっています。遠距離ではミサイルが、近距離ではレーザーが優位性を発揮するようなシステム作りをしています。これは、「トラベラー」世界の宇宙船テクノロジーに対する一貫性を、異なる規模のゲームでそれぞれに持たせようという努力で好感が持てます。
 第二に、「トリプラネタリー」では慣性移動の経過はクレヨンボードに記入して示していましたが、「メイデイ」では過去位置/現在位置/未来位置の3つのマーカーで示すようになっています。
ファイナル・コメント
 「アザンティ・ハイライトニング」の時にも書きましたが、「メイデイ」や「アザンティ・ハイライトニング」はSFゲーマーに圧倒的な支持を得てオリジン賞を獲得しました。その最大の原動力は、「トラベラー」のモジュールとしてゲーマーの想像力を刺激し、宇宙を股に掛けた冒険のイメージを与えてくれたことによります。
 メーカーサイドは「単体のボードゲームとしても遊べる」ということに一定の力点を置いていますが、やはり真価は「トラベラー」のモジュールとしてのそれでしょう。その本線で評価する限りにおいて、オリジン賞受賞は実力相応の評価だと思います。「トラベラー」をプレイする人は、ゲームマスターはもちろん、プレイヤーや元プレイヤーも読んで楽しいモジュールになっていると思います。

 そこまで誉めた上で、単体のボードゲームの評価として難をいくつか指摘しておきましょう。
 先ずマーカー方式ですが、わたしは好きではありません。登場する艦や、発射したミサイルごとに3つのマーカーをボード上に展開します。戦闘の佳境のところでは狭いところに多数のマーカーが密集してこれを移動することになるので、決してプレイしやすくはありません。最後のクリーンアップが大変でもクレヨンボードの方が良い気がします。あるいは、艦はクレヨンボード、ミサイルはマーカーというのが良いかも知れません。
 第二に、「トラベラー」のサプリメントとしてキャラを死ににくくする配慮か、非常に攻撃が当りにくくなっています。特にミサイルを迎撃するのは至難の技です。
 第三に、ボードゲームとしてはルールの明確度やシナリオの魅力が不足です。これはRPGのサプリメントとしてなら、ゲームマスターの判断や魅力的な状況設定で補うことができるものです。けれども、単体のボードゲームとして捉えたときには弱点でしょう。
関連ゲーム
●トラベラー
●スナップショット
アザンティ・ハイライトニング
●第五次辺境戦争
トリプラネタリー
インペリウム
サプリメント:商船と砲艦

 ボードゲーム単体として見て少し弱い感じのある「メイデイ」ですが、その真価はやはり「トラベラー」のサプリメントとして運用したときに発揮されるでしょう。
 HJのボックス版の「メイデイ」には、「トラベラー」のサプリメント7「商船と砲艦」が入っています。このサプリメントは宇宙船まわりの情報を集めたもので、読んでいて楽しい冊子です。
 特にコアになっているのは、各種の小型宇宙船の船内図です。
 Xボートと呼ばれる情報伝達速度を最優先した小型カプセルのようなものから始まって、連絡補給艦、S型偵察艦、小型商船、中型自由貿易船、小型護衛艦、惑星防衛艦など種々の宇宙船の図面が掲載されています。
 さらに、こうした宇宙船内レイアウトのデザインができるように、簡単なガイドラインと方眼紙も用意されています。
 右の画像は偵察艦を改造した小型探査船です。
 こうした船の図面を見ていると、その船を使った様々なアドベンチャーシナリオを創造することができ、イマジネーションを刺激されます。
 また、宇宙船まわりのアドベンチャーで重要な舞台と成り得る宇宙港の一例として、チャンパ中央宇宙港が紹介されています。
 実際にプレイに使用しなくとも、読んで想像の翼を広げているだけで楽しい冊子になっています。
 左の図がプレイの風景です。

 シナリオ2「惑星攻撃」の3ターン目です。色地に黒が過去位置マーカー、色地に白が現在位置マーカーです。その延長線上を基準に推進力の範囲で機動して置くのが白地の未来位置マーカーです。次のターンには両軍の未来位置が交錯するので戦端が開かれることが予測できます。

 ちなみに画像は先ごろ復刻されたRPGamers第5号の付録版になります。ユニットの品質が上がっています。雑誌付録のため、マップはハードからソフトに変更になりました。
 新版にあたってチャフを散布した状態を示すため現在位置マーカーの裏側をチャフ散布面にしてあります。これは気が効いていてとても良いのですが、惜しむらくは船体識別コードが表裏でズレてしまっています。