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トリプラネタリー
Triplanetary / Games Designers Workshop

一言で言えば‥‥

慣性移動システムを利用した宇宙空間戦闘ゲームの古典

太陽系を舞台に,様々なシチュエーションで,虚空を飛ぶ浪漫

こんなゲーマーにお薦めしたい

スペースオペラ黎明期の雰囲気が好きな方には是非

シナリオ創作や,ゲームシステムのマイナー改造を厭わない方に

プレイ人数 2人,3人,多人数 (シナリオ次第)
プレイ時間 1時間〜1日
ルール難度 初級ウォーゲーム
デザイナー マーク ミラー,ジョー ハーシュマン
入手状況 現時点絶版,ただし再版の予定あり

トリプラネタリーというゲーム
トリプラネタリーのボックス
「トリプラネタリー」は,GDW社のフラットボックス(平べったい面積の大きな箱)のSFゲームシリーズの一作です。

このシリーズは,1980年代の前半に日本にも訳付きで入ってきたので,古いSFゲーマーの方には懐かしいでしょう。シリーズのほかの作品としては,SFゲーム史に残る傑作「インペリウム」がありました。

「インペリウム」,「トリプラネタリー」を筆頭に,宇宙空間戦闘のゲームが多かったのが特徴と言えましょう。

「トリプラネタリー」は,クレヨンボードのマップに,移動ベクトルを直接記入していくというゲームです。次ぎのターンの移動は,前のターンの移動ベクトルを基本的に受け継ぎ,推進を実施すると1ヘクス分だけベクトルを修整できます。

このため,いったん移動し始めると,容易には運動の状態を変えることができず,艦船はマップ上で大きな弧を描くことになります。このへんの移動システムが,「いかにもSF」という印象を与えてくれたものです。

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「トリプラネタリー」のシナリオ設定
トリプラネタリー,地球艦隊発進
GDW社のSFゲームは,RPG「トラベラー」などを中心に一連の未来史を成しているのですが,この「トリプラネタリー」は,どうやら独立しているようです。

マップが太陽系のものであるため,シナリオ設定も太陽系内の事件となっており,ごく近未来を扱っています。また,シナリオ間の歴史的整合性もあまり関心を払われていないようです。

このため,シナリオの傾向が多様で,レースものがあれば,単一の作戦戦闘もあり,長期戦闘ものもあれば,アステロイドベルトの鉱物探査まであります。

どちらかと言えば,慣性移動システムという面白いゲームシステムを使って遊べる状況を,色々と考えてすべて盛り込んだという感じです。ただし,ルールの細部などは,説明が不足気味(GDWでは良くあることでしたが‥‥)で,シナリオの戦力設定などもやってみてバランスが悪かったら変更するように指示されているなど,あまりきっちりとしたデベロップがされていません。

慣性移動システムの宇宙戦闘ゲームシステムをプレイヤーに提示して,その道具をボックスに詰めてあるから,あとは工夫して遊んで欲しいというような印象さえ受けます。

「ノヴァ」シナリオのリプレイ
トリプラネタリー,シュート!
その中の一つ,三人プレイ用の短期戦闘シナリオ「ノヴァ」は,とても楽しく遊べて,なかなかのヒットと思いました。

このシナリオでは,地球は謎の悪意あるインベーダーの侵略を受けます。インベーダーは,太陽を超新星として爆発させてしまうノヴァ爆弾を搭載した宇宙船4隻を送り込んできました。この4隻の内の1隻でも太陽に吸い込まれてしまえば,地球は滅びてしまいます。

ところが,この時点で地球はまだ東西陣営の対立が残っているらしく(この辺が作られた時代を忍ばせます),東側と西側は協力的ではありません。それぞれ独立した基地を持っており,互いの合意がない限りは相手の基地を補給に利用できません。そして,なにより4隻のインベーダーシップの内の最後の1隻を沈めた陣営だけが勝利者となる資格があり,たとえ地球が生き残っても相手側陣営は敗北してしまうのです。

前項左上の写真は,インベーダーの侵入警報を受けて,颯爽と地球から発進した東西両艦隊の勇姿です。赤地に黒が東側で,白地に赤青が西側です。

4隻のインベーダーシップのどれが最後の1隻になりそうか,そしてそれを落とすのに都合の良い位置に自陣営の艦艇を送り込めるかが悩みの種です。慣性移動システムなので,早い段階からインベーダーシップの軌道を予測して,それに対応した移動計画を立てないとなりません。

インベーダーシップの内の3隻は,両陣営の先発隊に追い込まれる形で集合してしまいました。これを上手く迎え撃てる位置に,東側の大型戦艦が移動しました。右上の図は,今まさに大型戦艦から発射された魚雷が2隻のインベーダーシップを捉えて撃破した瞬間です。残る1隻も,後方から追尾を受けていて撃破は時間の問題です。ちなみに写真の奥に見えているのは火星です。この外側にアステロイドベルトがあります。
トリプラネタリー,ジエンド
ゲームは進行して,いよいよ残るは1隻。

しかし,火星の向こう側から大きく回りこむように接近してきた最後の一隻は,容易に捕捉しきれませんでした。西側の艦船は,アステロイドベルトを抜けて追撃する途中で,小隕石に接触して航行障害を起こして振りきられました。他の3隻を沈めた東側の艦船が迎え撃とうとしますが,相対速度が大きいため砲撃は当たりません。

水星軌道を,なめるようにして進入してきたインベーダーシップは,東側艦船と直角に交差し,東側艦船は転進しきれず振りきられてしまいます。

最後の写真は,最後のインベーダーシップがついに太陽に突入してしまった場面です。右上から左回りに大きな弧を描いて太陽に突入した様子がわかります。振りきられた東西の艦船が後方に写っています。

かくて太陽系は守られず,人類の歴史はここで幕を閉じてしまうことになるのでした。

トリプラネタリーの難点

トリプラネタリーは,ベクトル移動の方法さえわかってしまえば,後はほとんどルールらしいルールもないシンプルなゲームです。それでいて,この慣性移動システムだけでも実際にプレイすると,「いかにも宇宙空間だなぁ」という印象を与えてくれます。宇宙空間でのドッグファイトが単なる航空機戦闘の焼き直しではない別のものだということを感じさせてくれるからでしょう。

ただ,今になってこのゲームをプレイすると,古さも感じます。特に,その砲撃戦闘システムで,戦闘比を利用しているところは,時代を感じさせます。今なら,ファイヤーパワー式の解決になる方が自然と思えます。

また,もう一つの特徴として,このゲームでは砲撃戦闘は極端に当たりません。彼我の距離ヘクス数をそのままダイス修整に使うのに加え,互いの移動ベクトルの差による相対速度の修整を加えるためで,同一方向に移動していて,かつ至近距離まで接近しないと,まず当たりません。このため,敵と正対して迎え撃つとか,敵の側面から攻撃をするなどというのは,現実問題としては至難の技です。

このゲームには,砲撃戦闘のほかに,魚雷戦闘などが用意されており,艦船の移動と同様にこれもベクトル射出するのですが,どちらかと言えばこちらが主力兵器でしょう。

ところが,この魚雷ですが,大型戦艦でさえ2発しか搭載できないという積載制限の厳しさがあり,気安くは発射できません。また,ベクトルシステムで敵艦船に命中させるのにも,かなりの熟練が必要です。このため,ゲームに慣れていない場合は,攻撃がほとんど当たらないということになってしまいます。

ゲームシステムの意図からすれば,魚雷戦でベクトル戦闘をして欲しいということなのではないかと思いますので,もし規定の搭載量がシビアすぎるようであれば,もっと積めるようにした方がいいでしょう。それでも雷撃では難しすぎると思うのであれば,砲撃戦闘システムを自分で新規に作るくらいのことをしないとならないかも知れません。

このゲームは古いゲームですので,こうした点については難点ではあるものの多めに見ないといけないかも知れません。どちらかと言えば,プレイヤーが工夫して遊ぶためのツールであるというくらいの気持ちで眺めたほうが良いかも知れません。

関連ゲーム / 類似ゲーム

慣性移動システムの部分を流用したSJG社の「スターフィスト」が類似ゲームです。ただし,登場艦船数がずっと多く,戦闘システムが遥かに良く当たるので,プレイすると別物の印象が強いです。

また,太陽系内慣性戦闘の悩みを戦略級、戦術級でそれぞれ描いたものとしてSPIの「バトルフリートマーズ」「ヴェクター3」も同様な慣性移動システムのゲームです。

このゲームにもアステロイドベルトの開発シナリオがありますが,その専門ゲームとしてGDW社の同じシリーズに
「ベルター」があります。また,GDW未来史の同一星系内戦闘ゲームとして,これまた同じシリーズに「ダブルスター」もありました。どちらも古き良きSFゲームの香りがする作品です。

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