
スターフィスト
Staf Fist / Steve Jackson Games
一言で言えば‥‥
宇宙コロニー反乱軍の起死回生の秘密兵器スターフィスト!
低予算版デススターの如き改造小惑星を地球防衛軍は止められるか?
こんなゲーマーにお薦めしたい
宇宙空間でのドッグファイトを手軽に楽しみたい方に
乾坤一擲の思いの巨大兵器の猛進を止められるか,という状況が好きな方に
プレイ人数 |
2人 |
プレイ時間 |
2時間〜4時間 |
ルール難度 |
中級ウォーゲーム |
デザイナー |
スティーブジャクソン |
入手状況 |
海外中古ゲームショップを当たるしかない |
スターフィストの設定
2153年 4月。アステロイドベルトの反乱が勃発してから,既に6年。
地球艦隊はアステロイドベルトの小鼠どもを一掃することができないことが明らかになってきた。アステロイドベルトはあまりに広大であり,この中を逃げ回っては切り返してくる鼠たちを完全に掃討するには,地球艦隊は十分な艦数を保有していなかった。
しかし,その一方で,地球艦隊はアステロイドベルトよりも内側の宙域を制圧し,アステロイドベルトのコロニー間の経済動脈を封鎖していた。このため,コロニーでは経済が停滞し,技術水準さえ維持できなくなって来つつあった。
アステロイド反乱軍は,ここで乾坤一擲の大勝負に打って出ることにした。小惑星の一つを移動要塞に改造し,これを地球へ向けて突入させるのである。
その要塞の名は,スターフィスト。アステロイド反乱軍が地球に向けて振り下ろした「星の拳骨」である。
対する地球艦隊軍は,その名誉に賭けても,この暴挙とも言うべき怪物兵器を迎撃するのであった。

「スターフィスト」のゲームシステム
「スターフィスト」は,GDWの「トリプラネタリー」のシステムを流用して作られた,衛星兵器と宇宙艦隊の戦闘を描いた宇宙艦隊戦ゲームです。
「トリプラネタリー」の移動システムは,宇宙空間戦闘の特徴として,慣性移動を取り上げたものとして有名です。
この移動システムでは,ボードはクレヨンボードになっています。各艦船の移動は,このボードに矢印で書きこみます。そして,その次ぎのターンには,基本的に慣性により同じ矢印で移動します。移動パターンを変えたい場合には,艦船の航行能力の範囲で,予定のヘクスからずれた位置に矢印を移動することができます。そして,そのまた次ぎのターンには,この修整した矢印を基準として移動することになります。
したがって,ある方向に高速で移動を開始してしまうと,転回するには何ターンも掛かり,またその間にも慣性で最初の方向に進んでしまうのです。こうした「慣性」を強く表現した移動システムは,大気圏内の航空機の戦闘とは,かなり異質なものとなり,いかにもSF的な宇宙空間戦闘をしているという感じを与えてくれます。
「トリプラネタリー」では,普通の宇宙艦船同士が移動するため,両軍がクレヨンで矢印を書きこみます。これに対して「スターフィスト」では,中心に巨大なスターフィストが位置しており,これは一定の速度で地球へ向けて進んでいます。そして,このスターフィスト基準の座標で他の艦船や兵器はすべて移動します。このため,スターフィストは見かけ上は静止していて,中央に印刷されています。
小惑星兵器スターフィストの防空兵器と内部構造
小惑星兵器スターフィストは,一部で「低予算デススター」などと陰口を叩かれてしますが,やはりなかなかのものです。低予算なのは,交易妨害をされて景気停滞に苦しむアステロイド反乱軍としては否定できません。しかし,そこに篭められたベルターたちの熱い技術は侮れません。
左上の図の中心部分がスターフィスト本体です。本体は決して大きくはありません。しかし,その防空システムであるエネルギーフィールドがその周囲6ヘクス(数字の書かれたヘクス)を覆っており,容易に直撃を許しません。
さらにその外側にアステロイド陣営の技術の粋,ドローンスクリーンが三重に張り巡らされています。ドローンスクリーンは,リモートコントロールした小隕石が旋回しているもので,外部から撃ち込まれて来るミサイルを誘爆させ本体までの到達を許しません。また,艦自らを最後の武器として突入してくる地球艦隊のカミカゼ攻撃をも防ぐものとなっています。さらに,リモコンにより自軍側の兵器を外部へ向けて発射,発進させるときには妨げにならないようになっています。
スターフィストは,その表面に18基の粒子砲を備えており,さらに巨大な体内に,地球の静止軌道要塞と撃ち合うための要塞攻撃ミサイルを配備しています。これに加えて,インターセプターという迎撃戦闘機隊を配備しており,敵戦闘機体とのドッグファイトさえ可能です。
そして,なにより小惑星要塞だからこそ搭載可能となった巨大エネルギー兵器,ノヴァガンがあります。まさに,SF兵器の真髄,ミニミニ太陽とも言うべき巨大なエネルギー球を敵戦艦めがけて発射するのです。巨大なエネルギー球は,いささか低速ながら,その進路上はもちろん近接したものにさえダメージを与えながら漆黒の宇宙を進んでいくのです。慣性移動システムとあいまって,敵の大型艦は全力でこのエネルギー球を避けるため転針を試みるでしょうが,一つ間違えばエネルギー球に飲みこまれて燃え尽きることとなるでしょう。
そして,もう一つ。これまた小惑星要塞だからこそ搭載可能となったワーパーと呼ばれる,誘導場兵器があります。ワーパーの発動により,任意のユニットを1ヘクスだけ移動できるのです。この移動は,慣性移動システムの対象となるため,移動されたものの次ぎのターンの移動の基準矢印も変更されます。これが果たしてどう威力があるのかと言えば,たとえばノヴァガンのエネルギー球を転針したり,加速したりすることができるのです。逆に敵の戦艦を加速させてノヴァ球に衝突させることも可能です。小うるさい敵の戦闘機が接近してきたら,ドローンスクリーンに引っ張り込むこともできます。他にもプレイヤーの発想次第で,様々な使い道があるでしょう。
スターフィスト,その低予算なるが故の問題点

われらがスターフィストの素晴らしい装備をここまで紹介してきました。これを見ると,およそ地球防衛艦隊如きに止められる懸念は皆無のように思えます。
ところが,実は大きな問題があるのです。それは,低予算なるが故の最大の問題点。動力システムの力不足にあります。ノヴァガンにしても,ワーパーにしても,すさまじいエネルギーを消費します。また,エネルギーシールドにしても全周に常に張り巡らせ続けるのにはかなりの動力負荷が掛かります。
このため,スターフィストの動力室では,限られた動力を,毎ターンどのように振り分けるかで四苦八苦しています。また,ミサイルなどは,地球の静止軌道上で待ち受ける敵要塞との要塞決戦に向け,可能な限り温存しなければなりません。このため,武装保有量も十分とは言えないのです。
右上の図は,スターフィストのダメコンを表示しています。敵からの命中を受けるたびに,ダイスを2回振って,タテ軸とヨコ軸を決めて,その位置の装備が被弾します。これにより防空粒子砲は一門また一門と沈黙していき,エネルギー系統や,兵器制御系統もシステムダウンしていきます。いったん,防空システムが弱体化を始めれば,敵の攻撃はますます直撃しやすくなり,急激に要塞は瓦礫と化していきます。温存しなければならない対要塞ミサイルの投入も選択肢となってきます。
一見すると,無敵の小惑星要塞も,内実は火の車の会社経営シミューレションをやっているようでさえあります‥‥。ここらへんのところが,いかにも「B級」たるところでしょう。
われらがスターフィストは,目的を達することができるのでしょうか???
スターフィストの難点
スターフィストは,シチュエーションと言い,ゲームシステムと言い,小道具と言い,それらの組み合わせ方と言い,文句のないB級SFゲームの傑作です。さすがにB級SFのツボを心得ているスティーブ
ジャクソンと言えるでしょう。
ただし,実際にプレイすると,少し困ったことが起こってきます。地球艦隊の大型艦の砲撃が,長距離においてスターフィスト側を優越しているのです。これを利用して地球艦隊がアウトレンジ攻撃をするような展開になると,ゲームとしてはいささか退屈なことになります。
折角ですから,各種の兵器が活躍する場が必然的に生じて欲しいものです。そのため,地球艦隊の長距離での砲撃優位を少し調整してゲームをプレイした方がいいかも知れません。スターフィストに近づくのは,ハイリスクだが,そうしなければ勝機が見出せない‥‥という具合です。
あと,クレヨンゲームでいつも問題になることですが,特にこの「スターフィスト」では,矢印が大量にボード上を交錯するため,非常にボード上の書きこみが見づらくなります。できることなら,もう一回り大きなヘクスにして欲しかったものです。
もっとも,そうすると必然的にマップ全体が大きくなり,普通のテーブルには載らなくなるかと思いますが‥‥。それはそれで日本の住宅事情では問題で,悩ましいところです。
関連ゲーム / 類似ゲーム
慣性移動システムの本家であるGDW社の「トリプラネタリー」を挙げなければならないでしょう。
また,本家デススターの出てくる宇宙空間戦闘ゲームとして,WESTEND社の「スターウォリアーズ」も挙げて置きましょう。ただし,これは戦闘機中心で,スケールがずっと小さいゲームですが‥‥。
この他には,スケールが逆に大きくなりますが,同じSJG社の「オービットウォー」が,ちょっと似ています。「スターフィスト」ではスターフィストを中心に艦船が円軌道を描いて戦闘するのですが,「オービットウォー」では太陽系の公転軌道を扱って宇宙戦闘をするので,円軌道を軸に作戦を考えるところが似ているのです。もっともスケールが全然違うので,あまり良いアナロジーではありませんが‥‥。

