ダブルスター
Double Star / GDW
ショートコメント
●エプシロンケタス星系に相次いで入植したイスラム人植民地と、中国人植民地は、ついに激突した
●連星系のそれぞれを巡る惑星に入植した両者が、隣接星系間で艦隊・対地戦闘を繰り広げる古典的SF作戦級ゲーム

Islamic and Chinese colonies which settled in Epsilon Cetus system finally collided through the Space.
Classic Sci-Fi game in which each colony fought with space task force and planet bases.
published designed players time
1979 Mark Miller 2 3+ hours
 「ダブルスター」は、宇宙空間での作戦規模のSFゲームとして「いかにも」というスケールとゲームシステムを持っています。左下の画像がプレイの様子です。ヘクスマップに二連星の擁する惑星群の軌道が描かれています。惑星はこの軌道上に配置され、2ターン(4週間)に1ヘクスずつ回っていきます。
 主力となる両軍の艦隊は、コマンドシップを旗艦として編成されます。基本的にオーソドックスな移動・戦闘のシークエンスのゲームで、宇宙戦闘ですのでZOCなどはなく、同一へクス戦闘となります。
 「ダブルスター」の特徴の一つが、この艦隊のフォーメーションルールです。つまり陣形です。このフォーメーションは艦隊ごとに訓練をして会得していくものになります。フォーメーションのない艦隊は、個々の艦の性能でしか攻撃も防御もできません。ところが、フォーメーションを会得すると、攻撃時に複数の艦の攻撃力が合算できるようになり、防御時にもフォーメーションの艦数が修整に加えられたりします。
 得られるフォーメーションには、種類が様々あり、単純なコーン(円錐)フォーメーションは、攻撃ボーナスが少なく、全艦が前面に出ます。もっとも上級のグローブ(球形)フォーメーションは、攻防のボーナスが大きい上に他のフォーメーションに対して先制攻撃のボーナスがあり一部の艦をカバーして保護することもできます。
 実際の戦闘では、双方がフォーメーションを組んだ状態で激突するのですが、フォーメーションの攻撃ボーナスを利用して敵のフォーメーションの要の艦や脆弱な艦を狙って攻撃の応酬をすることになります。戦闘結果には狙った艦の脱落(戦闘終了後に復帰するが、その戦闘中は戦力にならなくなる)や破壊の他にフォーメーションの粉砕があります。
 各艦隊はフォーメーションの予備を合計で6個まで持つことができて、粉砕されたなら予備のフォーメーションに切り替えていくことになります。フォーメーションがあるとないとでは大きな差があるので、先にフォーメーションが切れた側が一気に不利になります。
 このときに妙味があるのは、上級のフォーメーションはボーナス効果が強力なのですが、これを維持するためには多くの編成艦が必要だと言うことです。このため、最初は多数の艦で強力なフォーメーションを組み、脱落や損失で艦数が減ったり、フォーメーションを撃破されたりして低位のフォーメーションに移行していくことになります。この当たりは、特に戦術マップなどを持っていないシステムでありながら、陣形を組んでの艦隊戦の雰囲気があります。
隣接した星系間で戦われる宇宙戦闘
 「ダブルスター」は、GDWのいわゆる平箱の一作です。二つの隣接した宇宙コロニーが、宇宙艦隊を派遣して互いの星系を攻撃すると言う古典的なSFボードゲームの一つです。
 舞台となるタウケチ星系は、連星になっていて、そのそれぞれを回る惑星系があるという設定です。
 最初に植民してきたイスラム系は、居住に適したアンヌルを巡る惑星群を選びました。そして順調に発展をしていきます。50年遅れて入植してきた中国人たちは止むを得ず居住の困難なアズザールを開拓することにしました。
 その後、両方の文化はそれぞれの惑星系の中で発展を続けていきました。2世紀が過ぎ、イスラム圏では鉱物資源が不足して発展が失速してきました。一方中国圏では居住可能な空間が不足して人口過密が深刻になりました。かくて両者は相手の持つものを狙って戦端を開いたのです。
 艦隊数はコマンドシップの数で制約され、フォーメーションのルールがあるため個々の艦隊は一定以上の艦数が欲しくなります。このため盤上を動く艦隊の数はそれほど多くなりません。
 このお陰で少し複雑でラウンド数の長い艦隊戦闘のシステムにも関わらず、プレイアビリティは十分に確保されています。
 対地戦闘も同じようなテイストになっています。
 敵の惑星と同じヘクスに入ると、対空砲火を2ラウンド受け、次は艦隊の個々の艦が爆撃を実施します。
 地上には対空システム、生産設備、そしてゲームの勝利条件である人口があります。これが戦闘結果で破壊されていきます。
 この人口の数字が人口密集地域では3桁のポイントになっており、これを爆撃して磨り減らしていくことになります。
 フォーメーションのトレーニングは自星系での方がしやすく、また対空砲火が強力なため、システム的に防御側に有利な傾向があります。このため艦隊戦で優位を築いても追撃していくと、反撃を受けてシーソーになりやすくなっています。
ネガティブ・コメント
 「ダブルスター」は、サブシステムのバランスに大味なところや、パラメーターの数字の設定の数値感覚が少しおかしいような印象はありますが、まずまずの出来栄えのゲームです。なにより連星系の二つの惑星群同士で艦隊を送り込みあって戦うと言うところがB級SFゲームとして非常に魅力的です。
 ところで、このゲームには幾つかのシナリオが用意されていますが、最大規模のアルマゲドンが本番でそれ以外の小規模のシナリオは機能不全気味です。理由は、ユニット数が少なくなるのですが、フォーメーションルールで説明したように1艦隊の大きさは一定以上欲しいゲームなので艦隊数が減ってしまうのです。
 その結果、主力艦隊同士の決戦で帰趨が全て決まってしまうような大味な展開になります。
 大味と言う意味では、フォーメーションの切れ目が戦闘の切れ目なので、戦闘結果でフォーメーションが崩れることの意味が大きく、その作用が他を圧しているというのもあります。
 これが相乗的に作用するので、規模の小さいシナリオは練習用の位置付けでしかないように感じられます。
 もしプレイされるのでしたら、多少、ユニット数が多くて敷居が高そうに見えてもアルマゲドンシナリオに挑戦することをお薦めします。
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