ベルター
Belter / GDW
ショートコメント
●小惑星開発野郎たちのシミュレーションゲーム、70年代のGDWらしさが溢れる豊富なガジェットのSFゲーム
Sci-Fi simulation game of asteroid exploration and development filled with 1970's taste of GDW.
published designed players time
1979 Mark Miller, Frank Chadwick 2+ very long
GDWらしさ溢れる小惑星開拓ゲーム

 GDWのゲームに対する個人的なイメージを一番代表するのがこの「ベルター」です。
 具体的にどういう要素をGDWらしいと思うのか改めて書き出して見ましょう。

@題材の切出し方がSF黄金時代の50年代SF小説風
Aゲームとしてのシステムデザインがシミュレーション的
B政治、経済、戦闘の諸要素の全てを盛り込んでいる
Cデベロップメント、テストプレイで、「ゲームとして」遊びやすくするというところは窺えない

 と言ったところでしょうか。Cの部分は、近年のドイツゲームで目が肥えたゲーマーには、およそ信じられないくらい不親切なところがあります。
 その一方で、@の魅力はSFゲーマーとしては応えられませんし、AやBも「これがGDWなんだよ」と思わせる部分です。
ファイナル・コメント
 以上、説明してきたように、「ベルター」はアステロイドベルトを舞台にしたSFゲームにあって良さそうな要素はみんな放り込んであるゲームです。
 経営、経済、技術の要素に始まり、労働問題、政治問題にいたるまでなんでもありです。
 そして、その取り扱い方がシミュレーション的なのです。つまり、「ゲームとしてのプレイしやすさ」よりも、「現象の記述としてのもっともらしさ」が優先されています。このため、プレイアビリティは決して良くありません。
 実際、プレイすると、最初は宇宙船も設備も少なくてプレイ可能な範囲にあるのですが、経済が拡大すると急速に大変になっていきます。メンテナンスや給与支給にも気を配らねばなりません。このへんのマネージメントだけで手一杯になっていると、隣の会社の武装船が自社設備を襲撃してきたりするのです。
 昔はノートパソコンが高価だったので、発売当時、A3の集計用紙を一冊用意してマネージメントをガリガリやったのが記憶に残っています。友人がノートパソコンの「1−2−3」でやり始めたときにはビックリしたものです。このへんになると昔話になってしまうのですが、こうしたプレイアビリティの悪さを差し引いても「ベルター」の思い出は楽しいものです。

 良くも悪くも「ベルター」は、GDWらしさ、1970年代のSFボードゲームらしさが溢れる典型的な作品です。フルシステムで最後までプレイするということは無理かも知れませんが、メンテナンスルールを止めたり、雇用ルールを簡略化すれば、プレイアビリティは上がるでしょう。特に小規模の事業が軌道に乗って拡大する辺りの初期は、楽しく遊べます。そこには、フロンティアスピリットを感じさせるものがあるからです。
 経済が拡大して戦闘行為が起こり始めるとギスギスしてきますが、それも新しい時代を迎えたということで、ゲームの中で時が流れ時代が移ったことが実感されます。帳簿作業は大変なので嫌いな人も多いと思いますが、「そういう題材、そういう時代なのだ」という感慨もあります。
 いろいろ言いましたが、「終わりまでプレイする」とか、「勝敗を付ける」ということにこだわらなければ、今でもプレイする価値はあると思います。
関連ゲーム
2038
スタートレーダー
アステロイドパイレーツ
スチームトンネル
小惑星野郎どもの世界を全てカバーするシステム

 「ベルター」は、アステロイドベルトを舞台にした開発系のマネージメントゲームです。
 とは言え、そこはGDWですから、アステロイドベルトのこの時代を舞台にしたSFゲームとして入っていて欲しい要素はなんでもみんな入っています。
 先ず開発の骨組みを説明してしまいましょう。
 プレイヤーは、盤上に散在するアステロイドへ宇宙船を付けて、そこにある資源の量を調査します。調査の結果が良ければ、そこで採掘を開始します。採掘量が満足の行く量に達すれば、宇宙船でマーケットへ輸送します。そこでは資源の相場が形成されており、その価格で売却して資金を獲得します。この資金をさらに宇宙船や採掘設備に投資して拡大再生産を展開していきます。ここらへんまではアステロイドベルトが舞台のマネージメントゲームであればどこの会社が作っても似たような骨格になりそうなところです。
 ただ、そこはGDWが作ったのですから、シミュレーション的なこだわりのガジェットがそこら中にあります。
 調査結果は、アステロイドにある資源の種類、鉱脈の数、各鉱脈で出る資源の純度という複数のパラメーターを持っています。宇宙船には探査船と貨物船があり、貨物搭載能力の設定もあります。採掘するにも効率の悪い手堀りと機械採掘があります。純度の概念があることから分かるように、なんと精錬することもできます。精錬することで純度が上がってコンパクトに輸送しやすくなり、付加価値も付くのです。
 宇宙船や設備のメンテナンスルールもあります。このためメンテナンスコストを支払う作業が生じるばかりでなく、整備不良にすると故障もしますし、そうすると修理のルールもあります。施設には生命維持能力の設定もあり、人員の配置の問題も生じます。人員のルールがあるため、労働問題も含まれています。ドイツゲームなら労働者マーカーを購入するだけなのでしょうが、そこはGDWなので労働問題と治安問題が含まれた取り扱いになっています。
 プレイヤーたちが産出する資源によって資源相場の需給バランスが決まってきます。物価が高騰するようだと、職を求めてマーケットに労働者が集まってくるのです。ここから人員を採用します。人員には、船員、鉱夫の区別があるばかりか、お約束という気もしますがならず者や兵隊もいます。雇用すると給与を支払うという問題が発生し、不払いをするとサボタージュや、スト、さらには暴動という問題すら起こり得ます。 
 ならず者や兵隊がいるということは戦闘ルールがあるということで、俄然、話しは厄介になってきます。
 宇宙船同士の戦闘が可能で、宇宙船には武装のルールがあります。GDW名物のレーザー戦闘とミサイル戦闘の綾があり、さらに施設や貨物を奪うべく白兵戦ができるわけです。同じアステロイド上であれば、武装設備同士でミニ戦争すらできるルールになっています。実際に起こったのを見たことはありませんが。

 もう一つSFゲームならではのガジェットとして、CTと呼ばれる反物質の存在があります。これは稀にアステロイドベルトで見つかるもので、まだ研究段階ですが、非常に高価で取引されます。これを扱うためには特別な設備が必要で、事故の危険性もあります。その一方、CTを爆弾として使うこともできるルールになっています。
 政治的な要素もゲームに盛り込まれています。CTは条約の対象品になっていて、政治的な制約を受けています。
 また、上級ルールになりますが、PKFと呼ばれる治安機関プレイヤーも設けられています。PKFはアステロイドベルトの治安を維持して資源を安定供給することで、資源相場を適正価格以下に維持するという勝利条件を持っています。
 PKFは軍事的に突出している訳ですが、もちろんベルターたちはPKFの統制に抵抗して団結して反乱を起こすこともできます。