ゲームオブスローンズボードゲーム
A Game of Thrones the boardgame / FFG
ショートコメント
●ジョージRRマーティンのゲームオブスローンズの世界を題材にした地政学マルチの新世代傑作ゲーム
Excellent diplomatic multiplayers game of new age which describes the world of "Game of Thrones" by J.R.R.Martin
published designed players time
2003 C. T. Petersen 3-5 4+ hours
ゲームオブスローンズ
 「ゲームオブスローンズ」は、筆力という意味では抜群の才能を持つことで定評のあるJRRマーティンの最新ベストセラーシリーズです。
 7つの王家が割拠する架空のファンタジー世界を舞台に、多彩な登場人物が政略と愛憎の物語を繰り広げていきます。
 この架空世界は不定期の長い冬を迎えるようで、北には大自然の驚異が潜んでいて牙を研いでいます。
 また、かつて7王国を統べていた竜の血を引くターガリエン王家は海を渡った地で生き延びており、捲土重来を期しています。
 小説は大規模な群像劇で、しかも世代を越えて物語りは展開していくようです。一部の人物だけを中心に描いていくような良くあるファンタジーと異なり、広い範囲が緻密に描写されています。
 まさに地政学マルチゲームの題材には打ってつけと言えるでしょう。
ファイナル・コメント
 「ディプロマシー」や「マキャベリ」の正統な後継と言うべきゲームですが、マーカーを使ったシステムの採用でプレイはグッとやりやすくなりました。
 同時に様々なガジェットがゲームの基本的な部分に盛り込まれていて、これはデザインの勝利だと思います。
 原作の諸要素が上手く盛り込んであり、しかもそれがプレイでどれもそれなりの意味を持っています。なかなかこういう完成度の高いデザインにはお目に掛かれません。
 既に拡張キット「クラッシュオブキングス」が予告されています。
 未登場の7番目の王家、マーテル家が登場し、攻城戦のルールなどが加わるようです。
関連ゲーム
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 このため、いくらたくさん進軍したくても最大で3箇所、制限を受けている状態では2箇所しか進軍を実施できないのです。
 このマーカー配置のシステムは非常に良くできていて、中世的な軍事システムではサポートできないような全面戦争や、守銭奴に徹した過剰な資金搾取政略などは、ごく自然に起こりえないようになっているのです。
 また、スペシャルマーカーが良い味を出しています。これは通常のコマンドマーカーより少し強くなっていて、戦闘時の修整値が少し大きくなっており、これを何処に注ぎ込むかが駆け引きの要素になります。
 この制限ルールも良くできているのですが、これを説明するにはボード上にある3つのトラックの説明をしなければなりません。
 7つ(本体ゲームでは6つまでしか出てきません)の王家が凌ぎを削っていることを表す3つのトラックは、以下のようになっています。
●アイアンスローン:王座を表すトラックでゲーム中ではプレイの解決順位を決めます。このトラックの1位が現時点の王であり、ビッディングやイベントでの同点タイを判定する権限を持っています。
●バリリアンスチールブレード:武力を表すトラックでゲーム中では戦闘の同点タイのときの強弱関係を示します。同点だったときにはこのトラックで上位に位置するプレイヤーが勝つのです。ですから小数点以下の戦力差だと思えば良いでしょう。さらにこのトラックの1位だとブレードマーカーを与えられ、これは毎ターン1回だけ臨時の1戦力として使えます。
●メッセンジャーレイブン:指揮系統の強さを表すトラックです。プレイ中に使用できるスペシャルマーカーの数を決めます。上位2つの王家はスペシャルマーカーを3つまで使えますが、下位になると減って行き、最下位だと1個も仕えません。つまり、5種類のマーカーが2個ずつで修整の強いものが全くない状態でプレイすることになります。1位だとレイブンマーカーを与えられ、マーカーを公開後に1個だけマーカーを交換できるという特権が与えられます。
新世代の地政学マルチ
 「ゲームオブスローンズボードゲーム」は、古典的な名作ボードゲーム「ディプロマシー」や、「マキャベリ」の正統の系譜上に位置するタイプの地政学マルチです。
 プレイヤー間の交渉と駆け引き、そして武力衝突による版図争いがゲームの中心です。
 「ディプロマシー」では、プロットシートに鉛筆で毎ターンの計画を記入し、同時にこれを公表して解決を行います。
 この「ゲームオブスローンズボードゲーム」でも大筋は同じですが、もう少しスマートで、同時にいろいろなガジェットやニュアンスを含んだシステムを使います。
 プレイヤーには、1セットのコマンドマーカーが与えられ、このコマンドマーカーを伏せて自分のユニットのいるエリアに配置していきます。
 コマンドには以下の種類があります。
●襲撃:公開後に最初に解決され隣接エリアの相手の行動を妨害する作用があります。
●進軍:公開後のもっとも主要な行動であり、自軍エリアから他のエリアへ軍を進めます。他プレイヤーのいるエリアへ進軍すると直ちに戦闘を解決します。
●防御:現在エリアに留まって防御を固めます、攻撃を受けた時に防御修整が得られます。
●支援:隣接するエリアで発生する戦闘を支援する命令です。隣接エリアで戦闘が発生する度に攻防いずれに味方することもできます。
●統治:そのエリアから経済的収入を確保する命令です。

 各自のセットには5種類のコマンド、各3個ずつが用意されています。逆に言うと、これだけしかありません。しかも、3個の内の1個はスペシャルマーカーになっていて制限があります。
 さらにこのゲームには王家ごとの特色や、登場人物の要素も含まれています。
 このゲームでは戦闘の解決には、両軍の戦力を基本としますが最後に両プレイヤーが各自の王家カードから1枚をプレイして合算します。
 各王家のカードは7人の登場人物が描かれていて、戦力的には3、2、2、1、1、0、0となっています。これ以外に特殊能力が一部の人物にはついています。このカードは1回使い捨てで、7枚全てを使い切ると全部再補充されます。
 したがって強いカードを先に使うと、残りは弱いカードばかりになり相手に付け込まれることになります。このため、弱いカードをどういうタイミングで使うかは重要です。そのために談合の上で国境沿いで小競り合いをするというようなこともあり得ます。
 カードのサンプルは左から順にスターク家のカテリンとエッダード、ラニスター家のサーセイとジェイムです。既訳の「七王国の玉座」での主要人物です。
 戦力はどの王家も上述したように同じ配分なのですが、特殊能力が異なっていてスターク家は防御が強く、ラニスター家は攻撃が強くなっています。
 最後になりましたが、このゲームはターン数固定で10ターンで終了します。その間に北からワイルドリングの攻撃が何度か来るのも重要なガジェットになっています。ターン数が決まっているためプレイ時間の目安が付けられ、その範囲でアクションを取らねばならないのが、ゲームのまとまりを良くしています。