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ヴィンチ
Vinci / Descartes Editeur


一言で言えば‥‥

ルネサンス以降の欧州,民族の興亡‥‥???

気分はもうファンタジー版コスミックエンカウンター!

こんなゲーマーにお薦めしたい

後味の苦くない地政学マルチをお探しの方に是非とも!

ファンタジー陣取りものをお好きなゲーマーなら損はないでしょう

プレイ人数 3−6人
プレイ時間 2−3時間
ルール難度 初級ウォーゲーム
デザイナー フィリッペ・カヴァーツ
入手状況 ドイツゲームの近作なので,現時点では入手可能

ヴィンチの世界
ヴィンチのボックス
東方から移動してきた農耕民族は,小アジアの穀倉地帯の先住民を駆逐して居を構えた。同じ時期,北方からは山岳蛮族がウクライナへと侵入し,西の海岸線には,ガレー船団によって被征服民を奴隷として徴用する海洋種族がやってきた。かくてヨーロッパは激しい民族興亡の時代を迎え,数知れぬ民がこの地をうつろっていったのである。

というのがヴィンチの世界です。

個性豊かな民族がヨーロッパを興亡するヒストリカル・シミュレーションゲームという触れ込みのゲームです。

しかし,実際にプレイすると,「気分はもうファンタジー」となってしまいます。あまりに個性豊かな民族たち,豪快に勢力圏が変遷していくゲームシステム,停滞した帝国は捨ててどんどん新しい帝国へと移っていける後腐れのなさ,そのすべてがゲームをアッケラカンと仕上げています。

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ヴィンチのシステム
ヴィンチのプレイ
ヴィンチは,AH社(オリジナルはギブソン社)の名作「ヒストリーオブザワールド(通称「世界史」)の流れを汲んだシステムを採用しています。プレイヤーは,各時点で自分の帝国を一つだけ持っています。新しい帝国は決まった数のトークンを与えられ,これによりヨーロッパへと侵入し自分の居場所を作ります。少し違うところは,次のターンにトークンの配置に余裕があれば,さらに続けて同じ帝国をプレイできるところでしょう。しかし,いずれ帝国はトークンの数の制約からくる発展限界に達し,それ以降はむしろ他の帝国からの圧力で衰退していきます。

プレイヤーは任意の時点で新しい帝国に移ることができ,以前の帝国はなくなりこそしませんが,新興のエネルギッシュな帝国の草刈場となっていきます。

とかく地政学マルチは裏切りと恫喝の外交が展開され,殺伐とした結果により友情が試されることになりがちです。しかし,このシステムであればプレイヤーは他のプレイヤーをゲームからドロップアウトさせることはなく,やられた側もやりなおしが利きます。このため,今まで歴史のダイナミズムには興味がありながらも,ゲームとしての殺伐とした雰囲気に怖気を揮っていたプレイヤーも,「世界史」やこのヴィンチなら安心して取り組むことができます。

「世界史」では,史実の帝国が,史実の順に,史実で存在した位置に登場します。かくて「世界史」は,まさに「世界史」を織り成していきます。

ところが,このヴィンチでは各プレイヤーは,一種のドラフトによって自分の民族の個性を購入し,盤外の任意の場所からヨーロッパへと侵入することになります。このため,選択は非常に自由なものとなり,しばしば民族の強烈な個性は,ファンタジーゲームとしか思えないドラマを生み出します。

ヴィンチの住人たち
ヴィンチの民族1
では,具体的にどのような個性の民族がいるのか少し紹介しましょう。民族の個性は二つのチットの組合せで決まります。したがって,チットの種類以上に様々な組合せがあり得ます。
右の図の左側は,農耕民族です。このチットの民族は農耕地を占めることで通常の1点ではなく,2点を得ることができます。右下の赤い数字は民族のコマの数を表します。2枚のチットの合計のコマ数で民族は登場します。農耕民族は,あまり拡張主義ではないようで「2」という小さい数字がついています。
左から2番目のチットは六分儀で航海民族を表します。彼らは海を自在に渡る能力を持っており,海洋を通じて帝国を広げることができます。彼らは広がりやすいためか「5」という大きめの数字が付いています。
三番目の交差した剣は,武器を造る能力に長けた民族です。彼らは新たな土地に侵攻することが容易です。四番目のチットは奴隷を取る民族です。彼らは先住民を除去することで勝利得点を上げることができ,非常に攻撃的です。このゲームでは衰退や放棄でゲーム途中に空きエリアができることが少なくありません。多くの民族はこうした抵抗のない空きエリアへの侵入を優先しますが,奴隷を取る民族は異なった決断をすることが多いでしょう。
五番目のチットは城塞を建てる民族です。彼らは毎ターン城塞を築き上げます。そこは防御力が増し,さらに次のターンには攻撃の拠点として役立つのです。かくしてヨーロッパは古城の散在する土地となっていくのです。最後のチットはダブルチットです。このチットは,もう1枚のチットの効果を2倍にします。これによって,強烈な個性を持つ民族が誕生します。たとえば,農業民族なら農耕地で2点ではなく,さらにもう1点加えた3点を得ることができます。
ヴィンチの民族2
次の図の左側は蛮族です。蛮族は「何の能力も持っていません」が,右下の数字が最大の「6」となっていて,その勢力そのものが能力と言えます。
一つ飛ばして三番目のものは「将軍」です。この民族は,毎ターンの侵攻で7つの余分なコマを受け取りますが,ターン終了時には返さねばなりません。このため,あっという間に拡張しますが,そこで限界に達してすぐに衰退していきます。アレクサンドロスを思わせます。
その次の青色のチットは医学を持つ民族です。医学は人口の増加をもたらし,通常の民族とは異なって毎ターン1つずつ新たにコマが増えていきます。このため,この民族には発展限界がなく,放って置くと大変なことになります。わたしたちのところでは,通称「ゾンビ」とも言われています。
その次のアイマスクと剣のチットは,間諜能力を持つ民族です。彼らはその能力により1ターンに1エリアだけ相手の戦力を無視して侵攻することができます。彼らの諜報能力の成果は,いかなる防御策をもものともしません。このため,この民族を敵に回すと,後退するエリアをもたない状態では,たとえどれほどの大勢力がいても一瞬で撃破されてしまいます。
最後のチットは革命民族です。通常,民族は盤外から盤端のエリアに侵入してきます。それに対して,この民族はどこからでも登場できます。つまり,既成の国家の革命勢力として誕生してくるのです。
これらの組合せで,本当に個性豊かな民族が登場してきます。

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ヴィンチの問題点

ヴィンチは,とてもエキサイティングで面白いゲームです。地政学マルチの陥りがちな煮詰まった雰囲気も緩和されており、多くの人に薦められます。
個性豊富な民族が登場し,展開もヴァラエティに飛んでおり,負けていても逆転のチャンスもあり,かと言って序盤からの積み重ねも意味があります。

そんな傑作ゲームにも二つほど些細な問題があります。一つは,ランダムな要素が新しく競りに登場してくる民族チットの組み合わせ以外にまったくないことです。このため,プレイにあたっては,ランダム要素の強いゲームよりも自分の決断に対する責任が重いと言えます。ただし,強豪プレイヤーはマークされて他の大勢の集中攻撃を受けるでしょうから,初心者にもチャンスは回ってきます。ですから,これはそれほど深刻な問題ではありません。

もう一つの問題は,全然「ルネサンス以降のヨーロッパ」という能書きに説得力がないことです。プレイヤーによっては,土地に対するこだわりや,民族の個性を実在した民族に当て嵌めての思い入れを見出そうとするかも知れません。けれども多くのプレイヤーにとっては,もう気分は架空世界の国盗物語でしょう。

関連ゲーム / 類似ゲーム

SFゲームではありませんが,AHのヒストリーオブザワールドが近しいでしょう。
個性豊かな勢力のぶつかり合いという意味では,コスミック
エンカウンター
が近しいでしょう。
この他にファンタジー系の地政学マルチの一例としては,イーオン社の
ボーダーランドを挙げておきましょう。

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