コスミックエンカウンター
Cosmic Encounter / Mayfair Games
ショートコメント
●イーオンが作り発展させ、メイフェアが研ぎ直したSFゲーム屈指の傑作
●ゲームシステムの根底を覆す能力を持った奇妙奇天烈エイリアン同士の宇宙戦争
One of the best Sci-Fi game, made by EON and developed by Mayfair.
Cosmic war among Aliens that each has spontaneous ability which can destroy
the game mechanics.
published |
designed |
players |
time |
1991 Mayfair ed. |
Eberie, Olotka, Norton, Kittredge |
3-6 |
2+ hours |
ゲームの基本は陣地取りです。
各エイリアンは、自分の星系に5つの基地を持ってゲームを開始します。そして、他の星系に侵略して行き、5つ星系外に基地を設けると勝利します。
ゲームシステムとしても単純で、運命カードを引くことで自動的に攻撃目標が指定されるので、その星系のいずれかの基地を選び、自分の戦力を1〜4個投入して攻撃します。このときに援軍を攻防両エイリアンとも呼びかけることができます。
援軍が確定したところで両プレイヤーは手札からカードを1枚プレイし、自軍と自軍側援軍とカードの合計数字を比較するのです。大きい方が勝利し、同点なら防御側の価値です。
このほかに戦闘以外の手段として交渉カードを選ぶことができ、一方が戦闘カード(数字のカード)で、他方が交渉だと戦闘カード側が勝利しますが、負けた方は賠償を取ることができます。
あとゲーム上のポイントになってくる要素として、手札は7枚スタートで、カードは使い捨て、全部使い切ると7枚補充となっています。
細かいことは置くとして、ゲームの基本的なメカニズムはこれだけです。あとはエイリアンの特殊能力がルールを様々に捻じ曲げて行きます。
SFゲーム界の金字塔
奇矯なゲームを作ることに掛けては定評のあったEONゲームズ。
その代表作といえば、進化ゲーム「Quirks」と、この「コスミックエンカウンター」でしょう。いずれも拡張キットが作られ人気を博しました。
特に「コスミックエンカウンター」は屋上屋を重ねて行き、どんどんエスカレートしていきました。オリジナルのイーオンだけでなく、英国のGW社版も出ており、さらに全面的にリビジョンしたメイフェア版の登場に至りました。この段階でゲームは一旦整理されて完成度を増し、「コスミックエンカウンター」と「モアコスミックエンカウンター」からなるメイフェア版2部作は、このゲームの完成版となりました。
近年になってハスブローからゴージャスコンポの新版が登場したようですが、ガジェットの豊富さという点では物足りないようです。このため、依然としてメイフェア版の評価は揺るぎません。
シンプルなゲームメカニクス、そのメカニクスを破壊するような強烈な能力を持つエイリアン。そのエイリアンの相互作用がもたらす予想もせぬ幾多のドラマ。
SFの持つセンスオブワンダーをゲームの基本的な部分で感じさせてくれるSFゲーム界の金字塔です。このゲームをプレイせずしてSFゲームを語るなかれと言っても良いかも知れません。


ファイナル・コメント
ゲームの大きな仕組みと、最大の魅力であるエイリアンの能力に絞って紹介しました。しかし、他にもいくつかのガジェットがあり、さらに多様なエイリアンたちがいます。
エイリアンの数はなんと48種類で、ここで12種類も紹介したのですが、1/4でしかありません。あとは実物を手にとって眺めて唸って欲しいと思います。
ちなみにこうした特殊能力の応酬の醍醐味が、一人の若者に新たなカードゲームを作らせました。ガーフィールドの「マジック・ザ・ギャザリング」です。一世を風靡し、トレカという新しいジャンルを創出したゲームも、その発想の原点は「コスミック・エンカウンター」にあったのです。
余談ですが、わたし自身も刺激を受けて単純なスゴロクに特殊能力キャラを満載した「マジカル・アスリート」というゲームを作りました。
このテの強烈なルール破り満載のゲームの弱点を挙げるとするなれば、ルールのジャッジが難しいケースが次々に生じること、そしてプレイバランスが取り難いことでしょう。
「コスミック・エンカウンター」でもエイリアンの顔ぶれによってプレイ時間も、その盛り上がりも大きく変わります。エンドレスな泥沼になることもあれば、呆気なく終わることもあります。呆気なく終わったときにはエイリアンを入れ替えてもう一度あそんでみてください。



エイリアンなやつら
いつもですとプレイの画像を入れるところですが、この「コスミックエンカウンター」の真髄は多様なエイリアンの強烈な能力に尽きます。ですから、そこを多めに紹介していくことにしましょう。
上の画像の左上から順に行きます。
アンチマターは、反物質エイリアンで、なんとアンチマターが関わると数字が大きい方が勝つのではなく、小さい方が勝つというルールに変更されてしまうのです。これも強烈な能力ですが、実際にプレイすると非常に弱いエイリアンです。なぜなら相手はアンチマターの時に他のときには使えない弱い戦闘カードを消化できるのに、アンチマターはいつも小さいカードが必要なので大きいカードの使い道がないからです。ウチでは見掛け倒しエイリアンと言われています。
チェンジリングは、輪廻転生エイリアンで、戦闘が起こると先ず相手とエイリアン能力カードを完全に入れ替えてしまいます。つまり相手に生まれ変わるのです。このエイリアンがいるとゲーム中にエイリアン能力がどんどん入れ替わって行きますので、いろいろなエイリアンを体験できます。
クロノスは、やり直しエイリアンです。一回戦闘が終了したところで都合が悪いと時計を巻き戻してやり直しにしてしまう能力です。これはゲームのマナー感覚からすると信じられないような合法的能力です。相手からして見れば手の内を知られた状態で二度目も連勝しないと本当には勝てないのですから手強い相手と言えます。惜しむらくはプレイ時間を長くするエイリアンであることです。
フィルチは、廃品回収エイリアンです。相手の使用したカードを任意で拾うことができます。ですから相手が良いカードを使ってきて負けてしまっても悲観することはありません。それは手に入り次には自分が使えるのですから。
マクロンは、巨人エイリアンです。戦闘の基本ルールでは攻撃に1〜4個のコマを投入できると書きました。ところが、マクロンのコマは巨人なので1個で4戦力なのです。その代わり1個だけしか攻撃に投入できませんが。これは単純に戦闘に強い能力でわかりやすいと言えましょう。
マインドは、テレパシーエイリアンです。戦闘の一方のプレイヤーの手札全てを、戦闘開始時点で見せてもらうことができます。これによって相手の手の内を知ることができるのです。もっとも知ったからと言って必ず勝てる訳でもなく、相手が使ってくるカードを確実に予想しきれる訳でもありません。しかし、相手から見ると手札を全て見られるのはとてもイヤなことなので、プレッシャーを与えるエイリアンであることは確かです。
オラクルは、預言者エイリアンです。戦闘のときに同時にカードを出さずに、相手が出したカードを見てから自分のカードを決めます。クロノスのやり直しや、マインドの相手のカードを全部見る能力もそうですが、ゲーム的にはイカサマとも言えるほどの強力な能力です。その中でもオラクルのものは非常に強力で、僅差で勝って大差で効率よく負ける展開を期待できる強力な能力です。
パシフィストは、平和主義エイリアンです。戦闘ルールで交渉カードを出して相手が戦闘カードだと戦闘に負けるが賠償を取れると説明しました。ところが、パシフィストはこの組み合わせで勝つことができるのです。なぜなら彼らは平和主義者だからです‥?
フィランスロピストは、プレゼントエイリアンです。このエイリアンの能力は一見どうしようもなく見えます。つまり、戦闘の度に相手にプレゼント(カード1枚)をあげられるのです。これがどういう意味を持つかは実際にゲームをすると身にしみます。カードは使い捨て、そして全部使い切らねば補充されません。ですから、ショボいカードでもどこかで使わねばなりません。ところがフィランスロピストはそれを贈り物として厄介払いできるのです。一方で相手はショボいカードを押し付けられていずれ使わねばならなくなります。この組み合わせで彼我のメリットデメリットの差は非常に大きく、実は手強いエイリアンの一つです。
スニブラーは、泣き言エイリアンです。このエイリアンの能力の強みも変梃りんです。スニブラーはプレイヤー中で自分の被害が一番大きかったり、自分の基地が一番少なかったりすると泣き言を言えるのです。そうすると他のプレイヤーは事態を善処しなければなりません。これは強いという感じがする能力ではないのですが、少なくとも最下位には常にならずに済み局面に遅れない保証がされている訳で見た目のしようもなさからは想像しにくいしぶといエイリアンです。
ソーサラーは、魔法使いエイリアンです。これもとんでもない能力で、戦闘で両者がカードをプレイし終えた後、実際にオープンして解決する直前にカードを入れ替えてしまうことができるのです。これはオラクルに対抗する格好の能力で、たとえオラクルが預言を用いて僅差で勝とうとしても、最後の瞬間に勝敗を逆転できるのです。
トレーダーは、貿易エイリアンです。戦闘の前に自分の手札と相手の手札をまるごと交換することができます。これはフィランスロピスト同様に良い能力です。また、フィルチや、今回紹介しなかったクローンのように良いカードを溜め込むエイリアンにとっては天敵とも言える存在です。