7人の賢者
Die Sieben Weisen / Ravensburger Alea
ショートコメント
●毎ターンのクリスタルを求めて組み替えられていく同盟、彼我の利害や力関係をもとに、ときに強くときに弱く
●合従連衡のマルチプレイヤーズゲームの醍醐味が2時間の間にたっぷりと詰め込まれた重厚な小品
Ever changing alliances are seeking crystals depending on profit and strength, sometimes strong sometimes fairly weak.
The essence of multi-players game is fille with this small but really heavy 2 hours game.
published designed players time
2002 Reiner Stockhausen 4 2 hours
 ゲームの仕組が少しわかりにくいので、ルールブック構成は無視して大枠から順に説明していきましょう。
 ベストのプレイ人数は4人です。3人や5人でもプレイできることになっていますが、同盟が2人対2人でバランスする4人が良いでしょう。
 各ターンに4人のプレイヤーは、2人ずつの同盟を組み、相手の同盟と戦います。そして、勝った側の2人がクリスタルを獲得することができ、負けた側の2人は捲土重来を期して呪文カードを補償として得ることができます。そして、これは毎ターン、初めからやり直され、新たな戦場で新たな序列、新たな役職、新たな同盟が組み直されて、新たな戦いが行われます。
 実際の戦いは、プレイヤーが順に手札から1枚ずつカードをプレイしていくことで行われます。カードには、7つの役職に対応して、その役職のプレイヤーだけがプレイできる7色のカードと、どの役職でもプレイできるワイルドカードがあります。ワイルドカードは便利ですが威力では劣ります。
 このルールを睨んでプレイヤーは手番の開始時に、今回の戦いでどの役職に付くかを選びます。もちろん手札の中のカードを睨んで、その役職に付けば強力なカードがプレイできるであろう役職を選んでいく訳です。ただし、ここで重要な要素として、その戦いごとに役職の序列があります。これは戦場のタイルごとに記載されていて異なっています。そして、この序列は最終的に勝利したときに得られる2個のクリスタルの内、同盟内でどちらが高い得点のクリスタルを獲得するかを決めます。ですから、序列の高い役職に付けば高得点が期待できますが、その一方で同盟のパートナーを選ぶときには相手にとってはその同盟の魅力が薄くなってしまうことになります。
賢者たちの確執
 マルチプレイヤーズゲームの醍醐味は、合従連衡の同盟関係の妙味にあります。
 彼我の利害の一致や力関係を睨んで誰と結んで誰を攻めるか、あるいは誰と戦うために誰と行動をともにすべきなのか。
 そしてゲームの局面が移っていくに連れ、状況は変化し、また新たな関係が必要になっていきます。
 同盟と一口に言っても利害が完全に合致した強い結束もあれば、仮初めの「とりあえず組んでいるだけ」の脆い絆もあります。そして、表面上は同盟者でありながら、ときに裏切るタイミングを計っていることさえありえるのです。
 地政学マルチの醍醐味はこうした同盟関係にあると言って良いでしょう。けれども、そうしたゲームの多くは長いプレイ時間を要し、手軽にはプレイできませんでした。
 比較的プレイしやすく爆発的な人気を得たウェストエンドの「JUNTA」でさえ、ドイツゲームに比べれば重いものでした。
 ところが、この「7人の賢者」は、ドイツゲームの小箱で2時間でプレイできるにも関わらず、こうしたマルチプレイヤーズゲームの醍醐味を十二分に満喫させてくれるのです。

 闇夜に遺跡に集う賢者たちは、その力の焦点となるクリスタルを求めて、今宵も仮初めの合従連衡を結び、互いの勢力の力を尽くして戦うのです。
ファイナル・コメント
 ここまでに説明した全てのルールを使ってプレイヤーは自らの利益のために権謀術数の限りを尽くします。
 誰と組んでどうやってクリスタルを獲得していくのかの作戦は重要です。また、当面の戦いが必勝を期す戦いなのか、それとも負けて呪文カードをもらって後日に備えても良い戦いなのかは作戦の岐路です。あなたがどう思っているかと同時に、パートナーがどう思っているかも大問題です。
 そして、いざ戦いが始まってからでも、勝つつもりが思わぬ呪文で予定が狂ったりすることもあります。戦況が思わぬ展開になったときに、臨機応変に対応することができるのか、それがパートナーとの軋轢を生まないのかなど決断すべきことは後を絶ちません。
 ドイツゲームの小箱らしく2時間でプレイすることが可能ですが、2時間後には賢者たちは知恵の限りを絞りつくして憔悴しきっていることでしょう。
 小品といえどもブラックホールのように重い、マルチの醍醐味を存分に味わわせてくれる一作です。
関連ゲーム
ウォーロック
●マジックザギャザリング
●ウィザード
●フンタ
全ての要素が関連して
 上述のようにどの役職に付くかが、どの手札が使えるかに関連しており、さらに勝利したときの得点配分に関連しています。
 このため、役職選びの段階から複雑な思惑が錯綜します。
 この状況にさらに輪を掛けるのが、同盟が成立すると同盟内では自由にカードをトレードして良いというルールです。
 このため、同盟が上手く噛合うと劣勢と思われた勝負も望みが出てくることがしばしばです。
 また、非常にトリッキーなルールとして、カード中で最弱の数字である「1」のカードが各色に2枚ずつ用意されており、この2枚を揃えてプレイできると2枚目の「1」は「10」として扱われます。
 このルールがあるため、「1」は弱い数字で放出対象になりがちなのですが、必勝を期すための隠し武器としてキープする妙味が生まれています。
 そして、このゲームを賢者たちの確執らしくしている要素に魔法カードがあります。
 これはさらにトリッキーなカードで、相手の同盟のプレイしたカードをキャンセルしたり、追加の役職を入手してプレイ可能なカードを増やしたり、他のプレイヤーの動向を見るためにフリーのパスができたり、強烈なものとしては同盟パートナーと役職を入れ替えてクリスタルを獲得する序列を覆したりできるのです。
 ルールが多く感じられたかも知れませんが、ここで説明したことでほとんど全てですので、特に多いわけではありません。
 むしろ、全ての要素がプレイ中に重要であるため、一度プレイすれば全ての要素が否応なしに身に付くことでしょう。一つとして余分な要素というのはありません。ゲーム中のどこかで決定的な役割を担い得るポテンシャルを持つルールばかりです。