アウトリーチ
Outreach / SPI
ショートコメント
●SPIの「スターフォース三部作」の一つ。銀河のアームをまたがる星間帝国の発展を描く大河浪漫ゲーム
One of the "Star Force" triology, which describes galactic empire's development beyond arms of the galaxy.
published designed players time
1976 Irad B. Hardy 1-4 3+ hour
銀河の渦状腕を越えて

 SPIのSFゲームの多くは、ゆるやかな未来史で結ばれていました。
 この未来史を最初に体系的に骨格付けたのが「スターフォース三部作」です。いちばん知名度の高い「スターフォース」は、タイトルの通りスターフォース規模の恒星間作戦級ゲームでした。人類がアルファ・ケンタウリに向かう時代から、紀元2700年代のゼノフォーブの侵略までを扱っています。「スターソルジャー」は、これと同じ時代を扱った戦術級ゲームです。
 今回紹介する「アウトリーチ」は、三部作の中でももっともスケールが大きく、時代も残りの2作品より後になり、紀元3000年以降のミレニアムを扱っています。
 ゲームマップを見ると、銀河の中心から地球側へと向かう一角が描かれています。いくつかの渦状腕がマップを横切っており、銀河系が渦巻状であることを実感させてくれます。
 そして、このマップ上でいくつかの銀河帝国が、シナリオごとにアームを越えて帝国の興亡を繰り広げていきます。
 スケールの大きさもさることながら、コツコツと地道に積み上げるタイプのマネージメントゲームでもあります。そして、幾度か劇的な危機と遭遇することになり、それを乗り越えて再び発展していくという展開が意図されています。
 プレイ感も含めて、とても大河浪漫的な壮大なSFゲームになっていると思います。
ファイナル・コメント
 「スターフォース三部作」では、世間的に「スターフォース」の評判が一番高く、日本でも訳付販売されたのは「スターフォース」だけでした。
 これは故ないことではなく、「アウトリーチ」には実際にプレイすると、やはり気になる点もあります。
 最たるものは、プレイタイムが長いことです。1ターンの進展が小刻みであることからシナリオターン数が長めで、最短のシナリオでも25ターンとなっています。
 また、拡大差生産型のマネージメントゲームなのですが、管理する星系の生産の規模がだんだんと大きくなっていくため、計数作業が段々と煩雑になっていくと言う問題もあります。
 もう一つ、普通のヘクスウォーゲームのサイズのヘクスになっているのですが、これもプレイしにくい原因となっています。スタック制限がないことや、複数の勢力が同一へクス内で激突したりすることもあって、実際には規模の小さいシナリオでは使用する部分だけを拡大コピーして使用した方が良いような気がします。
 星系の状態を示す方法や、異なる種類を示すスターフォースの表示方法など、プレイエイド的な部分でも今ならもっと工夫ができるのではないかと思う部分もあります。
 そういう意味で、良くない意味での古さ、プレイに対する親切な工夫の不足が感じられてフラストレーションを感じます。
 全体的なストーリー感は良いだけに、この魅力を生かしてリメイクするような話しがあって欲しいものです。
 もっとも銀河規模の帝国の興亡をプレイアブルに描き出すという点ではSPIの後続の「ザソードアンドザスターズ」が成功しているので、このゲームがリメイクされる必要は早々になくなってしまったということなのかも知れません。
関連ゲーム
スターフォース
●スターソルジャー
ザ ソード アンド ザ スターズ
インペリウム 第2版
アメーバウォーズ
フリーダム インザ ギャラクシー
アウトリーチのゲームシステム

 「アウトリーチ」のゲームシステムは、それほど複雑ではありません。ユニットの基本は、恒星単位の拠点となる恒久施設のスターゲートと、星間航行する基本兵力であるスターフォースになります。
 プレイ開始時には、プレイヤーの勢力は数個の星系にスターゲートを設置した小星間帝国です。この星系から得られる収入で、新たなスターフォースを編成します。これで星間空間を渡って未知の星系を探索します。探索した星系にスターフォースを投資する形でスターゲートを設置し、これをレベルアップしていくことで星系から収入が得られるようになります。
 こうして少しずつ新しい星系を開拓して経済規模を大きくして帝国を拡大していくのです。
 スターフォースには3種類が設定されていて、もっともコストの安い通常スターフォースは航行能力も戦闘能力もそこそこです。
 対して特殊化している2種類のスターフォースがあり、探索スターフォースは未知空間への航行能力や、探検能力に優れています。
 最後のドレッドノートスターフォースは戦闘のスペシャリストであり、強大な火力を持っており戦闘に大きな優位をもたらします。
 3種類のスターフォースをどう配備して運用していくか、局面に応じたマネージメントが必要になってきます。
 もう一つ、このゲームの大きな要素としてFATEがあります。これはランダムイベントのようなものですが、種類が少なく発生確率も高いので、1ターンの展開が小刻みで最短のシナリオでも25ターンあるこのゲームでは、銀河帝国の発展に伴って遅かれ早かれ遭遇する正に運命と言うべき要素です。
 初期に出会いやすいフェイトは、ノンプレイヤーの第三勢力になっています。これも最初は弱いものが、後に行くほど強力なものが出てくるようになっています。
 また、DISSOLUTIONと呼ばれる帝国の根本を揺るがすような危機イベントがあり、何度か帝国は崩壊寸前の暗黒時代を迎えるようなことが起こりえます。ただし、同じ危機イベントは1回しか起きないようになっているので、危機を乗り越えて再興するたびに帝国は新たな規模まで発展することになるでしょう。
 そして、さらに進展すると帝国は新しい文明の段階へと飛躍していくことになります。
SFの大河浪漫を満喫させてくれるゲーム

 「アウトリーチ」は、銀河アームを越えて発展していく大銀河帝国を感じさせてくれます。
 その意味でSFならではの大河浪漫ゲームとしての魅力に溢れています。
 このゲームをプレイすると、アシモフ、クラーク、ハインラインと言った作家の銀河帝国を描いた未来史の正統派に相通じる魅力を感じます。営々とした地道な努力が、幾多の危機に遭遇しても最後には乗り越えて未来を切り開いていくというバラ色の未来エネルギーを感じさせてくれるのです。
 その意味で、「スターフォース三部作」の末尾を飾るにふさわしい大作でしょう。
 ちなみに画像のプレイ風景は、最初のシナリオの第1ターンと第7ターンです。同じアームに属する二つの帝国が接触して対決すると同時に、一つ内側のアームへの拠点に先行することを目指すと言うものです。