ステンレススチールラットの帰還
The Return of Stainless Steel Rat / Ares #10
ショートコメント
●ハリー・ハリスンの「ステンレススチールラット」を題材にしたパラグラフボードゲーム
●犯人探し推理ゲームの要素を盛り込んだ宇宙ステーション内のサスペンスアドベンチャー
Paragraph boardgame which covers "Stainless Steel Rat" written by Harry Harrison.
Suspence Adventure game inside a space station including essence of detective story.
published designed players time
1981 Greg Costikyan 1-2 90+ minutes
Ares パラグラフゲームの発展途上
 パラグラフ式のボードゲームの出発点ではないかと目されるのが、「Ares」の「BSMパンドラ号の冒険」です。
 これに続く「Ares」でのパラグラフ式ボードゲームの第2弾がこの「ステンレススチールラットの帰還」です。ハリー・ハリスンの原作シリーズは、昔、サンリオSF文庫で日本でも出発されていました。ただし、このゲームのストーリーはオリジナル設定のようです。
 「BSMパンドラ号の冒険」では、惑星の条件や地形をフックにして、様々なパラグラフの中から条件が噛合うと特殊なイベントに入っていくというシステムでした。そして、その特殊なイベントは異星生物との遭遇でした。
 この「ステンレススチールラットの帰還」は、宇宙ステーションのコンピューターが何者かによって狂わされて暴走したと言う設定になっています。主人公のするりのジム・ディグリッツことステンレススチールラットは、コンピューターの暴走を止め、その真犯人を突き止めることに挑みます。
 システム的には今回は宇宙ステーション内のスペースのタイプと2ダイスを二桁の数字として読む36通りのランダムナンバーをフックにして分岐していきます。そこで出会うイベントは、妨害する狂ったロボットとの遭遇や、ステーション内の容疑者たちとの遭遇です。
ファイナル・コメント
 コスティキャンのデザイン、Aresの後期のフルサイズゲームとあっては期待も大きくなろうと言うものです。しかし、プレイすると残念ながらそれほど感心しません。
 問題点は三つあると思います。
 第一に、犯人を当てる推理ゲームは、これ自体がサブジャンルをなしており、他にもっと良いゲームがあるということです。リプレイアビリティに難があるサブジャンルなので、それほど人気があるとは言えませんが、それでもいくつか良いゲームが出ています。わたしが好きなのは「オリエント急行殺人事件」でした。
 第二に、宇宙ステーション内の地図にあまり意味がありません。ランダムナンバーとエリアのタイプだけでフックしていますから、こんなに広いステーションをいろいろと歩き回っていくと、その探索の仕方でなにかが突き止められるというような仕組ではないのです。ですからムダに広く、構造にも意味がなくなってしまっています。
 第三に、フックして起こるイベントの多くが狂ったロボットとの遭遇による戦闘なので、起こるイベントが単調で妙味がありません。前の項目と合わせてみると、折角パラグラフをたくさん用意してある割には、それをロジカルに解いて行くような楽しみにはまったく結びついていません。
 トリッキーな面白さと言う点では、「Ares」最後のパラグラフゲームである「ダモクレスミッション」の方が見るべきものがあると思います。 
関連ゲーム
BSMパンドラ号の航海
ダモクレスミッション
●オリエント急行殺人事件
●テイルズオブアラビアンナイト
●バーバリアンプリンス
スタースマッグラー
スタートレックアドベンチャー
 設定から分かるとおり、真犯人を突き止める探偵ゲームの要素を盛り込んでいるところが新機軸です。

 左の図がプレイの画像です。
 中央のジムの姿はジムの装備状態や負傷状態を記録する欄になっています。その周囲に三重の円があるのですが、これはジムに対する敵味方の相対的な位置を管理して戦闘を解決するためのボードになっています。
 さらにその周囲に細かいマス目に分割された9重の円周がありますが、これが宇宙ステーションを表しています。色分けは各スペースのタイプを表しています。
 このゲームは二人でプレイできるようにもなっていて、その場合にはジムの女房で相棒であるアンジェリーナをもう一人がプレイします。画像の右端に切れてしまっていますが、アンジェリーナの装備や戦闘のためのチャートがもう一つあります。このほかにプレイ中に参照するテーブルやチャートが要領よくまとめれれています。

 ルールやプレイエイドは要領よくまとめられています。
#10 ステンレススチールラットの帰還