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スタートレックアドヴェンチャー
StarTrek the Adventuregame / Westend


一言で言えば‥‥

宇宙それは人類に残された最後の開拓地‥‥

あの「宇宙大作戦」のエピソードを体感する対戦型パラグラフゲーム

こんなゲーマーにお薦めしたい

最初の「宇宙大作戦」のファンの方であれば是非とも

英語のパラグラフをスムーズに読みこなせるSFゲーマーなら一見の価値あり

プレイ人数 2人
プレイ時間 2〜4時間
ルール難度 ゲームとしては簡単,問題は英文読解力
デザイナー グレッグ・コスティキャン
入手状況 アメリカの中古ショップで根気よく探すべし

宇宙,それは人類に残された最後の開拓地‥‥
スタートレックアドヴェンチャーのボックス
このオープニングは,往年の初代スタートレックこと「宇宙大作戦」のファンには懐かしいフレーズでしょう。

カーク船長,副長のスポック,ドクターマッコイ,‥‥。エンタープライズ号の乗組員が繰り広げる奇妙な冒険。ときに奇妙な物体と遭遇して難渋し,ときに奇怪な生物の侵入を受けて危地に陥り,ときに開拓途上の文明の騒乱に巻き込まれ,ときに高度な生命体の玩具として翻弄され,ときに宿命のライヴァルであるクリンゴンと対決する‥‥。

彼らの冒険は人気を呼び,次々に続編が作られ,映画にもなり,さらに世代交代して新シリーズまで生み出していきました。

とは言え,最初のシリーズでは必ずしも予算に恵まれていたとは言えず,作られた時代もあって書割の惑星の上と,いつも使いまわせる船内舞台で,俳優たちの会話を主体に進む作品でもありました。むしろ,だからこそ古くからのSFファンにとって,低予算の中を工夫して取り,ストーリーの面白さや,キャラクターの魅力で見せてくれたことが人気を呼んだのかも知れません。

スターウォーズ以降,SF映画は特撮に掛けた予算で議論されるような傾向が強まりましたが,「宇宙大作戦」は,エピソードやキャラクターで楽しませてくれた思い出の作品です。

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スタートレックアドヴェンチャーのシステム

この「スタートレックアドヴェンチャー」は,数あるスタートレックゲームの中でも,「宇宙大作戦」らしさを上手く出している傑作ゲームです。このゲームは,いわゆるパラグラフ方式のゲームです。

プレイヤーは,惑星に辿り着くと,カップの中に入れられたたくさんの惑星タイルの中からランダムに1枚を引きます。ここに記された惑星の名称を対戦相手に告げると,相手はおもむろにパラグラフブックを開いて,その惑星に対応するパラグラフを読み始めます。「航星日誌●●■■,我々は‥‥」といった具合です。

パラグラフには,参加しているパーティーの持つ能力や,陣営,そしてプレイヤーの決断による分岐が用意されています。これを読み進んで解いて行くことにより,「宇宙大作戦」のエピソードや,オリジナルのエピソードが再現されていきます。

ここまでは,いわゆる普通のパラグラフブックと変わりがないのですが,鬼才,コスティキャンは,これを対戦ゲームとして工夫しました。プレイヤーは2人に限定されてしまうのですが,一方を連邦,他方をクリンゴンとしたのです。そして,両者は互いの勢力圏の間にあるオルガニアンセクターを冒険して,自陣営の勢力の拡大を目指すのです。

パラグラフブックはお互いが交互に読み合うことになり,惑星を一つずつ交互に探査していくことになります。エピソードの解決の仕方によって,その惑星が自陣営に友好的になったり,参加に入ったり,あるいは敵対的になったり,永久中立となったりします。その結果は随時累計されていき,最後に大きな成果を上げていた側が勝利します。

パラグラフによる探検のほかに,連邦は特使を送りこんで惑星の説得にあたることができ,他方のクリンゴンはエージェントを送りこんで連邦に対する破壊工作をできたりします。こうして,このゲームは単なるパラグラフゲーム以上の駆け引きと競技性を持つようになっています。とは言え,メインの面白さは,パラグラフによる冒険の帰趨にあることは変わりません。

あとパラグラフの面白さとして,クリンゴンとしてプレイできることの面白さがあります。パラグラフでは陣営による分岐があるほか,パーティーの能力による分岐でもクリンゴン側は連邦と異なる能力があり,かなり違った展開になります。

連邦でプレイすると,「ああ,これはあのエピソードだな,そう言えばTVではどうやって解決したっけ‥‥?」と考えるようなことになります。ところが,クリンゴンだと,話しの展開が途中からどんどん変わってきてしまうので,独創的な問題解決をしなければならず,これが未知数という魅力を持っています。

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スタートレックアドヴェンチャーの難点
スタートレックアドヴェンチャーのプレイ
ここまで述べてきた通り,「スタートレックアドヴェンチャー」は,良くできたゲームです。

プレイして面白く,またパラグラフゲームにありがちな「どうしようもなくなってだらだら続く」というようなこともありません。規定ターン数が終了したところで勢力判定をして勝敗の決着がつくからです。

むしろ,「まだ,もっと冒険したいのに‥‥」というところで終わる腹八分目の設定がにくいとさえ言えます。

いちぶ内輪ネタのパラグラフがあったりするのですが,そうと知らずに読んでいると「アッ」と言わされるあたり上手に組みこまれています。わたしは作品世界にマッチングしない他作品のガジェットの取りこみには否定的なのですが,この作品のそれは上手に脚色されていて苦笑いしつつも楽しませてもらいました。

このゲームの難点を強いてあげるなら,二つあります。

一つは,パラグラフ方式で共通の悩みですが,リプレイアビリティに難があるということでしょう。もっとも個人的には,「プレイしたいのに手がつかないゲーム」のリストが長くなる一方なので,このことは問題ではないと思いました。

もう一つは,英文のパラグラフを読みこなせるかどうかでしょう。ボードゲームのルールブックなどは,語彙が限られていて読みやすいのですが,RPGのサプリメントや,パラグラフなどは,どうしても小説的に語彙にヴァリエーションが付けてあり,かなり語彙力がないと辛いと思います。対戦する二人ともがすいすいパラグラフを読解できるというのは条件としては結構シヴィアなのではないかという気がします。

とは言え,最近は電子辞書なども良くなって来ましたし,基本的な構文解析力さえあれば単語は辞書に頼んで挑戦してみる価値は十分にあるでしょう。「宇宙大作戦」のファンであれば,頑張って取り組んでみて欲しいところです。

関連ゲーム / 類似ゲーム

ウェストエンド社のスタートレック系のボードゲームは,3点のようです。第1作が,この「スタートレックアドヴェンチャー」です。続いて,
「スタートレックエンタープライズエンカウンター」が出ています。3作目は,ソリテア用のミニゲーム3点の詰め合わせで,3作目ということと,3点セットということを掛けてか,「スタートレック3」のタイトルとなっています。

この他に,日本でもツクダホビーが版権を取ってRPGを出していました。

また,パラグラフ方式のゲームとして,ウェストエンド社からは
「テールズオブアラビアンナイト」が出ていました。こちらは多人数でプレイでき,パラグラフの数も倍以上もある大作でした。SFゲームではパラグラフ方式の先達としてSPI/Aresの「BSMパンドラ号の航海」があります。宇宙での探査任務ということで,折からスタートレックが放映されていた時期でもあり,パンドラ号もエンタープライズ号に啓発されていたのかも知れません。

いずれにせよ今を去ること20年以上も前の時代の古き良き懐かしきSF作品たちの時代のものです。

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