
デーモンロード
DemonLord / Dwarfstar Games
一言で言えば‥‥
小品ながらもファンタジーウォーゲームの傑作
二大勢力が中央の中立部族を調略しながら激突する
Though it's tiny, it's one of the brilliant fantasy wargame.
Two big powers crash while making diplomatic action to the neutrals.
プレイ人数 |
2人 |
プレイ時間 |
2〜4時間 |
ルール難度 |
初級ウォーゲーム |
デザイナー |
Arnold Hendrick |
入手状況 |
published in 1981 |
デーモンロードのシステム

「デーモンロード」は、ドワーフスターゲームの一連の小箱の中でも、一際、評価の高い作品です。二大勢力が激突するファンタジーヘクスウォーゲームの小品です。こうしたファンタジーヘクスウォーゲームとしては、あまりにも有名な「ドラゴンパス(赤い月と白い熊)」や、この分科会でも紹介した「アルビオン」などがあります。こうしたライヴァルの多い分野で評価される「デーモンロード」の中身について紹介しましょう。
「デーモンロード」が傑作と呼ばれる所以は、やはりゲームシステムにあります。プレイアビリティ、プレイバリューのバランスが取れた良いシステムを持っています。
設定は、人間にかつて破れたデーモン帝国が再び眠りから覚めて侵略してきたことになっています。実際のボード上では、ボードの一方の側をデーモン帝国が、もう一方を人類が占拠しているところからゲームが始まります。その中央には重要な中立勢力たちがいて、これらがどちらに付くかで戦況が毎回のプレイで変わるようになっています。
こうした大きな戦況は、かの傑作「ドラゴンパス」を彷彿させます。個性的で重要な中立勢力の帰趨でプレイがダイナミックに変化することは、ゲームの劇的な展開とリプレイアビリティを増しています。
ゲームシークエンスは、一般的な移動/戦闘型ですが、これに加えて精霊を呼び出す召還の手順と、中立勢力に対する外交の手順が加わっています。また城塞に対する包囲戦があるため、通常の戦闘とは別に包囲戦フェイズが設けられています。このためウォーゲームとしてはオーソドックスながらも、ファンタジーウォーゲームならではの部分のプラスアルファがあります。ただし、プレイアビリティを下げるほどではありません。
このゲームのシステムで特筆すべきは、実は戦闘システムにあります。戦闘システムは、同一ヘクス戦闘なのですが、この解決はこのサイズのゲームとしてはかなり凝っています。まず地形ごとに戦闘に参加できるユニットの上限が決まっています。つまり狭隘な地形では戦闘正面が限られることが盛り込まれているのです。このため険しい地形では優秀なユニットを少数で守っていても、雑兵に押されてしまうことはありません。逆に平地では数の優位が役に立ちます。
また、戦闘の手順で射撃戦闘と白兵戦がきちんと分けられており、ユニットの装甲の違いなどの細かい要素まで盛り込まれています。戦闘正面が限られていることと相まって、実は個々のヘクスでの戦闘の解決に非常に細かい戦術が要求されます。このため、一つ一つのヘクスの戦闘が、凄くコンパクトな会戦級ゲームをプレイしているような彩りを持ちます。この戦闘システムはプレイタイムを長くしていますが、幸いなことに小品なので全体のプレイアビリティは決して低くはありません。
この他に魔法ももちろんあります。魔法はルールを読んだ段階では小粒な印象もあります。が、戦闘システムでもわかる通りキレの良い小技を積み上げて戦うタイプのゲームなので、実際のプレイでは十分に大きな効果を持っている印象に変わります。
デーモンロードのプレイ

左の画像はプレイ開始直後の画像です。
画面右側がデーモン帝国の版図で、紫のユニットがその勢力です。左側の平野部が人類の版図で、オレンジのユニットが人類側です。
重要なのは中央の中立勢力です。画面中央の森林には、緑色のエルフたちがいます。画面の上の方に水色の風の精たちがいます。
この古代のトカゲ人間たちや、ドワーフもしくはトロール(行ってみないとどちらが居るかわかりません)なども登場してきます。
プレイでは相手の都市や城塞を確保することで勝利得点が上げられるので互いに敵の守りの弱そうな拠点を攻め合うことになります。勝利得点で重要なのは、相手よりも多くの中立勢力を味方に付けると、相手に1点が入ってしまうことです。中立勢力を味方に付けたら、それだけの戦果を挙げねばならないのです。
同様に味方の増援も呼べるのですが、これも先に呼んでしまうと相手も呼ぶまでの間は相手に勝利得点が入ることになります。
プレイとしては中立勢力や増援を駆使して攻撃をした方が面白いのですが、それなりの戦果を挙げるには戦闘システムや魔法を駆使して戦わねばなりません。
終了条件はサドンデスは起きにくいので、休戦によることになるでしょう。ただ、休戦を持ちかけてもダイスによるチェックが二重にあるのですぐには成立しません。このため、プレイは結構、長引きます。この期間に劣勢の側は起死回生の攻撃を行い、もう一波乱巻き起こすことになるでしょう。

デーモンロードの難点
「デーモンロード」は,なかなかの傑作です。シチュエーションなどから「ドラゴンパス」と比較されるのは止むを得ないところでしょう。
比較したときに、それぞれの長所短所が良く見えてきます。「デーモンロード」の魅力は、システムの良さです。戦闘システムのディティールがあって、個々のヘクスの戦闘に戦術を揮う余地があり、ドラマも生まれてきます。対して「ドラゴンパス」の戦闘システムは、豪快というか乱暴で、一発決着です。
逆に「ドラゴンパス」の魅力は、キャラの個性が際だっていて、魅力ある中立勢力が豊富なことです。このため、調略活動の醍醐味や、全体のドラマチックな展開という点では「デーモンロード」を上回ります。
「ドラゴンパス」に「デーモンロード」の戦闘のディティールが盛り込まれれば‥‥と思いますが、プレイタイムが長くなりすぎて全体のダイナミズムが味わいにくくなってしまうかも知れません。また、「ドラゴンパス」はルールがごく簡単だからこそ、極端な個性のキャラを導入できている‥‥ということもあるかも知れません。
ここらへん、それぞれの長所と短所は表裏一体になっている難しさを感じます。
関連ゲーム
ここまで比較して述べたからにはAHの「ドラゴンパス(ケイオシアムの「赤い月と白い熊」)」は挙げねばなりますまい。
それ以外にこの分科会で扱ってきたファンタジーヘクスウォーゲームとしては、Aresの「アルビオン」や、FFGの「バトルミスト」、コロンビアの「ウィザードキングス」があります。
クエスト的な要素も含めたゲームとしては、インターナショナルチームの「ウーラム」も紹介しました。

