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アルビオン
Albion / Ares #11 SPI games

一言で言えば‥‥

Ares スタッフが総力を挙げたファンタジーヘクスウォーゲーム

雑誌の付録ゲームながら渾身の力作なのだが‥‥

a fantasy hex-wargame in which the stuff of Ares poured their endeavor.
it is filled with gadgets, however not filled with fascination unfortunately
.

プレイ人数 2人
プレイ時間 3時間〜
ルール難度 中級ヘクスウォーゲーム+フルガジェット
デザイナー David J. Ritchie
入手状況 published in 1981

雑誌ゲームながらファンタジーヘクスウォーゲームの渾身作

#11 アルビオン
「アルビオン」は、Ares誌の全盛期の一作です。フルマップ、フルカウンターシート、ルールブック別冊という豪華な作りとなっていて、当時のAres誌のスタッフの意気込みが感じられます。
そうした全盛期の作品はどれも力作なのですが、その中でも「アルビオン」は渾身作と言えます。オリジナル設定のファンタジー世界を創出し、その一大叙事詩をボードゲームとして再現してみせようというのです。こうしたファンタジーヘクスウォーゲームとしては、あまりにも有名な「赤い月と白い熊(ドラゴンパス)」があります。多かれ少なかれ、こうしたファンタジーヘクスウォーゲームは「ドラゴンパス」と比較される運命にありそうです。
「ドラゴンパス」もそうでしたが、こうしたオリジナル設定のファンタジーウォーゲームでは、まず設定の魅力がなければなりません。そして、そこに登場するキャラクターの魅力がなければなりません。そしてなおかつヘクスウォーゲームとしてプレイして面白くなければなりません。
「アルビオン」の舞台は、その名の通り白亜の断崖の向こうの島が、まだエルフやトロールの住む土地だった時代に取られています。その島はいまブリテンと呼ばれています。エルフの強国アルビオンが統べるその土地に、魔法を受け付けない禁忌の種族である人類が攻め入ること三度。今度はトロールと同盟を結んで、アルビオンの王、オウベロンが極北の海に探検に出て留守の隙を衝いての戦いです。
フルカラーの美麗なブリテンのマップに、魔法の統べる領域と人間の無味乾燥な物理の統べる領域とが色分けされ、それぞれの種族の城塞が各所に散在しています。イギリスのフルマップと言うと、ヒストリカルシミュレーションでも見る機会がありますが、上述の設定を頭に入れて眺めると違った感慨を持ちます。とりわけこのマップはサイモンセンの最高傑作とも呼ばれており、その美麗さの向こうにオウベロンの探検船が波を切る音、トロールの棍棒とエルフの剣の剣戟の音が聞こえてくるようにも思えます。

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アルビオンのシステムとプレイ
アルビオンのセットアップ
やはりマップを一見して欲しいのでセットアップの画像を載せてみました。エルフのユニットは緑系列、トロールのユニットは茶色系列、人間のユニットは赤系列になっています。
ブリテン島の東南端には既に人間の橋頭堡であるウェールドゥがあります。アルビオンはそのすぐ北側に位置しています。トロールたちは島の北部と西部の辺境に位置しています。つまり、大雑把に三方からエルフは包囲されているのです。
この状況から人間/トロールの同盟軍がエルフに奇襲を掛けるところからプレイは始まります。準備不足のエルフ陣営は守りの薄い城塞を奪取されてしまいます。
しかし、このゲームでは魔法領域ではエルフに防御効果がある上に人間に損耗チェックがあります(物理領域では逆)。このため、エルフ領の深くへと侵攻し、残存兵力を集中させた拠点を攻める段になると人間側も苦戦するようになります。
また、このゲームでは地上の移動は困難ですが、沿岸の諸領は海軍を持っており、これによって海岸線を迅速に海路で移動できるようになっています。このため、内陸で手こずっていると思わぬ上陸作戦で反撃されたりもします。
かくて陸海に渡る両軍の対決はアルビオンの地が魔法に支配され続けるのか、物理に取って代わられるのかを決めるまで続いていくのです。

アルビオンのルールブックを読むと、部隊と個人の両方が上手くミックスされていてスゴく良い感じに思えます。ルールブックを読んだ段階で評価するのであれば、彼の「ドラゴンパス」は荒さが目立つので、むしろ「アルビオン」こそはファンタジーヘクスウォーゲームの決定版なのかとさえ思えます。リッチーとカープ(デヴェロッパー)のコンビのクレヴァーなシステムに期待は高まるばかりです。
アルビオンのプレイ
ところが、実際にプレイするといろいろと気になることが起こってきます。まず、地形防御効果が部隊に対しては非常に厳しく課せられます。それに対してキャラクターの能力には課せられないので、敵地を攻撃するには大部隊より英雄や魔法使いをゾロゾロ連れていった方が役に立ちます。特に魔法使いは、印刷された魔法力に加えてターンにより決められている基本魔法力を加えて評価されるので、他を圧倒する強さです。ファンタジーの世界ですから雑兵の数より大魔法使いが偉大なのも無理からぬとは思いますが、実際のプレイ感としてはちょっと異常な感じもあります。魔法使い同士の叩き合いのためのヒットポイントとしてしか部隊が機能しない印象すらあるのです。

このゲームにはガジェットもたっぷりと用意されています。人物の特別ルール、土地の特別ルール、アイテムの特別ルール、魔法の特別ルールがそれぞれまるまる1ページもあるのです。都合まるまる4ページ、これをきちんと頭に入れてプレイするというのは大変です。そのため初心者は、その内のほんの一部だけを使うように推奨されていて★印が付けられています。
で、ここからは★印限定ルールでしかプレイしたことがないということを承知の上で読んでいただきたいのですが、率直に言ってガジェットの魅力がもう一つありません。ゲームにはさまざまなキャラクターが出てきますが、その個性はパラメータの大小という形でしか表れません。アイテムなどもパラメータに修整を与える形のものが多いようです。
このため、キャラクターの個性が、あまり際だたないのです。上述の戦闘でも述べましたが、魔法使いは印刷された能力に全員一律にターンごとに決まる基本値を足してしまうので、戦闘では魔法使いの人数が一番重要で、強弱の差はさほどでもありません。もっとも一騎打ちルールが用意されているので、一騎打ちになれば強力な魔法使いはやはり強いのですが‥‥。

プレイしてみていないので、フルガジェットにしたときに魅力が増すのかはわかりません。けれども、個人的な印象としては★印限定ルールでの魅力の薄さからすると労力を掛けてまるまる4ページものガジェットを頭に入れてやってみよう‥‥とまでは思い入れられませんでした。
作りから伝わってくる情熱のほどには、プレイしたときにキャラの魅力が生きていません。伝説の魔法使いは、どの魔法使いもそれぞれに凄くて、それぞれに個性的であって欲しいものです。けれども、このゲームではちょっとした数値の大小に埋もれてしまって、往々にして誰が参加しているかより何人参加しているかがプレイを決してしまいます。

ルール的には荒さが目立つ「ドラゴンパス」ですが、その豪快というか乱暴なルールが各キャラに強烈な個性を与えて成功していました。それと比較すると、「アルビオン」のスマートではあるけれども魅力不足な点は考えさせられます。パラメーターの詳細な割付だけでは、ファンタジーキャラの魅力は生まれないのかも知れません。

関連ゲーム / 類似ゲーム

ファンタジーヘクスウォーゲームとして比較すべきは、まずドラゴンパスでしょう。
それ以外では、ドワーフスターゲームの
デーモンロードや、ヤキントのビーストロードなどがあります。

リッチーは、ゲームの企画としてはイロモノの面白いところをいつもやってくれるデザイナーで、Ares誌の中ではアフターホロコーストものの
オメガウォーがあります。

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