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アイアンドラゴン
Iron Dragon / Mayfair Games

一言で言えば‥‥

鉄道ゲームの定番シリーズのファンタジー世界版

架空世界ならではの賑やかさと工夫が楽しい作品

こんなゲーマーにお薦めしたい

鉄道ゲームが好きで,架空の世界を受けいられる方に

ファンタジーが好きで,そんな世界で鉄道王を目指したい方に

プレイ人数 3−6人
プレイ時間 2−6時間
ルール難度 鉄道ゲームの標準+ファンタジーのガジェット
デザイナー ダーウィン・ブロムリィ,トム・ワム
入手状況 流通在庫がまだあるのでは?

鉄道ゲーム「エンパイアビルダー」のシリーズ

アイアンドラゴンのボックス
鉄道ゲームは,それ自体が一つのサブジャンルを成しています。誰か「B級鉄道ゲーム分科会」を作ってくれても良さそうなものです。残念ながらまだ見たことはありませんが‥‥。

とまれ,その鉄道ゲームの中の著名なシリーズに「エンパイアビルダー」のシリーズがあります。このシリーズは,クレヨンボードのマップの上に,線路をクレヨンで引いていくものです。様々な姉妹作が出ており,あちこちのゲームサークルでプレイされているので,どこかで見かけたことのあるという方も多いでしょう。

この「エンパイアビルダー」の新機軸として,ファンタジー世界を舞台にしたゲームが登場しました。これが「アイアンドラゴン」です。

つい先頃オークションで入手し,先日プレイしたばかりです。不勉強にして知らなかったのですが,デザイナーの一人は「外宇宙からの恐るべき緑のもの」や「FILE13」のデザイナーでもあるトム・ワムです。もう一人のブロムリィは,このシリーズでは御馴染みのデザイナーです。

この2つの作品はどちらかというと色物の一発芸的な色彩が強いのですが,それとは打って変わって「アイアンドラゴン」は正統派の作り方でファンタジーと鉄道ゲームを融合させることに成功しています。

また,タイトルのアイアンドラゴンはボックスの表紙になっています。このファンタジー世界では北方の火山地帯にドラゴンが住んでいます。そのドラゴンを飼い慣らして機関車にしているのです。

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アイアンドラゴンのシステム
アイアンドラゴンのマップ
「アイアンドラゴン」は「エンパイアビルダー」シリーズのシステムを使用しています。

プレイヤーは自分の色を決め,その色のコマとクレヨンを受け取ります。最初の貨物カードを受け取り,それを元に計画を立てます。計画に基いて初期予算で最初の小規模な線路を引きます。

その線路を使って貨物を産地で積み,貨物カードに指定の目的地へと運びます。得られた資金でさらに線路を延長し,どんどん行動範囲を広げ,汽車も性能アップしていきます。

こうしたシステムはシリーズで共通のものです。ですから他の作品をプレイしたことがあるプレイヤーなら,少し差異を説明してもらうだけで容易にゲームを始められるでしょう。

「アイアンドラゴン」をして他の作品と大きく雰囲気を変えているものは,なにより舞台が架空のファンタジー世界であることです。画像はマップの一部を示しています。良く見えないかも知れませんが,左側の大陸がメインの大陸で,右側の大陸はゲーム上は新天地とも言うべき場所です。実はこの右下のエリアは,オズの国なのです。そして,画面中央に二つある赤い六角形は大都市を表しています。この二つの大都市の間には,虹の掛け橋が繋がっていて海を渡ることができるのです。つまり,オズは,虹の向こう側,オーヴァーザレインボウなのです。

また,もう一つ大きな特徴は,プレイヤーは鉄道会社の線路建設工夫長としてファンタジーキャラクターを雇うことができることです。マップの中の黒ドットは平地ですが,茶色の三角は山地を,緑の木のマークは森を表しています。他にもジャングルもあれば砂漠もあります。

もし貴方の工夫長がドワーフなら山地に線路を引くのが容易になります。エルフなら森に線路を引くのが容易になり,人間なら川や海に橋を掛けるのが容易になるのです。工夫長はゲーム中に雇いなおすことができます。この要素はシリーズのほかのゲームにはないものです。ファンタジーでなければナンセンスな設定ですが,ファンタジーのゲームとしてみれば魅力的で説得力のあるルールです。そして,これはプレイヤーの作戦を考えさせる味付けにもなっています。

この他に,なんとオークが仕切っている地下世界というのが正規のマップの下に別マップとしてあるのも強烈なシステムです。そして,この世界でエール(ビールの親戚のエールです)が取れる唯一の場所は地下にあるのです。けれども地下ではオークに対して所場代を払わねばなりません。もっともそのオークさえも恐れるトロールの工夫長を雇えばその限りではありませんが。

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アイアンドラゴンの難点
アイアンドラゴンのプレイ
「アイアンドラゴン」に限らずエンパイアビルダーのシリーズのゲームに共通の難点があります。それは,基本的に拡大投資型のゲームであるため,先行したプレイヤーが良い機関車を手に入れ,良い条件の路線を引いてペースに乗ってしまうと,止めようがありません。

マルチプレイの政略ゲームなどでは弱者連合がトップを止めることができますが,エンパイアビルダーのシリーズのゲームでは弱者が連合して強者を止める良い手立てがありません。

このため,ワンサイドになってしまうと手が付けられないことがあります。先日,プレイしたときには一人のプレイヤーがオズの大陸と本大陸の西岸を環状に結んでしまい,利益率の高いオズの呪文書で巨万の富みを築いて爆走してしまいました。

右上の画像がその時の勝ちパターンを記念撮影したものです。

とは言え,こうした他人の足を引っ張れないという点は,このゲームの雰囲気を明るく保っている側面もあります。ですから,一概に欠点とばかりは言えないかも知れません。マルチ政略ゲームの足の引っ張り合いに疲れたときに,虚心坦懐にファンタジー世界に鉄路を伸ばしていくのも良いのではないでしょうか。

このシリーズや,他のホワイトボードを利用するゲームに共通の魅力として,白いマップにクレヨンで書きこむということそのものが楽しいというのもあります。

これの代償となる難点は片付けでしょうかね。ティッシュペーパーでクレヨンの大半を拭き取り,消えにくいところはプラスチック消しゴムを掛けるのが,わたしのお薦めです。

関連ゲーム / 類似ゲーム

このシリーズの最新作は月面を舞台にしたルナーレールズです。
鉄道ゲームのシリーズから派生したSF/Fゲームとしては,1830のシリーズから出たTIMJIM/PRISMの2038があります。ただし,このゲームはアステロイドでのロケットによる物流のシステムを導入していて,線路を引いたりはしません。

アステロイドベルトで物流をすると言えば,GDWの古典
ベルターもあります。その他にSFゲームで物流系のゲームとしては,AHのヴィーナスの商人や,SJGのアシモフのスタートレーダー,SPIのAres誌のスタートレーダーなどがあります。

またデザイナーのトム・ワムのほかの作品としては,毛色が全然ちがいますが外宇宙からの恐るべき緑のものを忘れてはなりません。

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