アシモフのスタートレーダー
Asimov's Star Trader / SJG
ショートコメント
●SF小説界の巨匠アシモフの名を関した星間交易ゲーム
●ワープを使った鉄道ゲーム系のゲームシステム、アシモフの小説とは直接は関係なさそう
Inter-stellar Trading game which has a neme of "Asimov" the big name Sci-Fi writer.
Basically a railroad game which has warp drives. It seems that this game has no direct relationship with Asimov's novel
published designed players time
1987 David Ladyman 3-6 3+ hours
 ゲームシステムとしていかにもSFゲームらしい要素が含まれているのは、まずワープシステムです。通常の鉄道ゲームではマス目を数えて進んでいきますが、このゲームではワープ航路を選んでワープの成否をダイスで判定します。近距離のものはほとんど成功しますが、遠距離のワープ航路は失敗率が高くなります。
 このリスクの高い遠距離航路を確実にワープできるようにアシストする設備がステーションです。プレイヤーは移動の終了時にまだステーションの建っていない星系にいればそこにステーションを建設できます。目的地にステーションがあり、そのステーションの所有者が協力してくれる場合、ワープは距離や難度に関わらず100%成功します。このため、他者のステーションも利用できますし、また他者に利用してもらうことで利用料を受け取ることもできます。ですから移動の要になりそうな拠点にステーションを建てるのも重要なポイントです。
 惜しむらくは、このステーション建設のルールがゲームバランスを崩しています。皇帝と謁見するためにも名誉がゲーム中で重要なのですが、ステーションを建設することでも名誉が得られます。ステーションには自分の移動の補助という実益や、他者からの利用料という副収入が付いており、これに加えて名誉まで手に入るのですからウハウハです。このため堅気に荷物を運ぶよりステーションを拠点に建設する方が良いくらいのバランスになってしまっており、ゲームとしてはいささかいびつな印象があります。
 もう一つSFゲームらしい要素としては、プレイヤーのパーソナリティがあります。これはナビゲーター、エンジニア、サイキックなどの個性で、プレイヤーごとに与えられそれぞれに独自の利点を持っているのです。
 こうした要素が含まれていることで、このゲームは単なる鉄道ゲームの亜流から踏み出してSFゲームらしく仕上がっています。
アシモフの名を関した星間貿易ゲーム
 「アシモフのスタートレーダー」は、SJGから出たブックケースサイズのゲームです。箱の裏面にはスティーブ・ジャクソンとアイザック・アシモフ御大がゲームを囲んでテストプレイしている写真が移っています。
 とは言え直接はアシモフの小説を題材としている訳ではなく、巨匠アシモフ先生の名を借りるべく企画段階で参加してもらって監修してもらったというところのようです。
 ゲームの大きな仕組みとしては「エンパイアビルダー」のような鉄道ゲームと思っていただければ良いでしょう。円対称のボード上には星系を表すドットとこれを結ぶ難度の違うワープ航路が描かれています。
 これらの星系の各所に、カードによって送り主と送り先が指示され貨物が配置されます。これをロケットでワープを利用してピックアップし、指定された送り先まで送り届けて報酬と名誉を集めていくのです。 
 最後は十分な名誉を集めたところで皇帝陛下に謁見し、皇帝陛下の献上品を運ぶことに成功するとゲームに勝利できます。
 なんとなく「A列車で行こう」の最後の大統領専用列車を運ぶ終了条件を連想してしまいます。
ネガティブ・コメント
 「アシモフのスタートレーダー」は、初中級向けの非戦闘系のSFゲームとしてみるべきところのあるゲームです。
 ただし、AHあたりのものから見ると荒削りな印象は免れず、かなり大味なところがあります。
 一番問題なのは、勝利条件でもありクライマックスでもある皇帝陛下の謁見テーブルです。ダイスの目次第で皇帝陛下のご機嫌が激変するため、それまで地道に築き上げてきたものよりも、この一振りの方が大きいということになっています。
 負けているプレイヤーの逆転の余地を大きくしたのかも知れませんが、いささか荒い感じがします。
 またプレイヤーには災厄カードが配られていてこれを他プレイヤーの足を引っ張るために使えるようになっています。こうしたカードがあるゲームの常として勝ちかかったプレイヤーが順番に足を引っ張られる展開となり、ゲームは終盤に来て終わりそうで終わらない状態が続きます。
 このへんのテイストはSJGのものとしては「イルミナティ」と似ています。そういう世界観、ゲーム観のものなのだと言われればそうかも知れませんが、交易ゲームは商売の蓄積がもう少し重みを持っていても良いような気がします。
関連ゲーム
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アイアンドラゴン
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●スタースマッグラー