ルナーレールズ
Lunar Rails / Mayfair Games
ショートコメント
●エンパイアビルダーシリーズ、ついに宇宙に出る
●月面を新たな舞台に物資を鉄路で運びまくれ
Best seller railroad game series "Empire Builder" now lands onto the Moon.
Carry variety of loads by your train throughout the Moon.
published designed players time
2003 M.Robert Stribula 3-5 3+ hours
 第一にボードが球面であるということが最大の特徴です。
 ボードはニアーサイドとファーサイドの二つの円盤になっており、その周は全て反対側の面と繋がっています。このため、異なるサイドの二点間の距離感覚を身に付けることが必要です。意外なところが近いのを見落としたりするので要注意です。

 第二にイベントで起こるメテオシャワーが強烈だということがあります。月面は大気の保護がない状態で隕石が降ってきます。その一方で大気がないが故に気密構造の破損は深刻な問題です。このため、線路がイベントに対して脆弱だという点はシリーズ中でもっとも顕著と思われます。しかも、このメテオシャワーはボード上のどこにでも起こりえるので、橋が洪水で流される場合より予測してリスク管理しにくいのです。

 第三にニアーサイドは海が多く平地が比較的多いのですが、ファーサイドは山だらけで建設コストが極めて重いということがあります。これは球面ボードが狭いことを補ってゲームが短期で終わらないようにしています。同時に月面開発が必然的に地球に近いニアーサイドから始まるようにもしています。
エンパイアビルダーシリーズ、月面着陸

 「エンパイアビルダー」シリーズはクレヨン線路引きの人気鉄道ゲームシリーズです。
 このシリーズがついにファンタジー世界に突入したのがシリーズの前作「アイアンドラゴン」でした。そして、今度の最新作ではSFの舞台、月面へと上陸したのです。この「ルナーレールズ」、予告から発売まで随分と待たされました。
 右がそのボックスアートです。月面のドーム都市、空に輝く地球、その前を横切る月面鉄道。ブルーを基調としたカッコイイボックスアートです。

 ゲームのシステムとしては、シリーズの基本的な仕組はそのままです。
 プレイは移動と建設を繰り返すことで進行していきます。3枚のデマンドカードを手持ちとして、指定された物資を目的地へと輸送してキャッシュを稼ぎます。それをさらなる鉄路建設に再投資して月面の8つの大都市の内の7つを接続するネットワークを作らねばなりません。
 そして、最後はキャッシュを250稼ぎ出すと勝利できます。
 おそらくシリーズのほかの作品をプレイしたことがあれば、いくつかの特徴的なポイントだけ教えてもらえればすぐにプレイできることでしょう。そして、新しい舞台で再び鉄道を目指すことになります。

 「ルナーレールズ」のもっとも特徴的なところは、舞台が月面だということでしょう。このことはいくつかの意味を持ちます。
ファイナル・コメント
 上述した通り、月面という目新しいマップではありますが、ゲームとしてはいつもの「エンパイアビルダー」です。
 ですからゲームとしての長所も短所も「エンパイアビルダー」なりです。
 良いところは、クレヨンで線路を引いていく作業が楽しい鉄道ゲームを、月面という新しいマップでプレイできるところです。
 悪いところは、少々プレイタイムが長く、その割に拡大再投資の軌道に乗ったプレイヤーが順調に進んでいくのを阻止しがたい逆転のないゲームだというところでしょう。
 シリーズ中でもイベントのリスクが高いことと、球形のマップの感覚がつかみにくいことで難度は少し高いでしょうか?

 ただ、待たされた割にはSFならではの味付けが少なかったような気もします。
 「アイアンドラゴン」では、ファンタジーキャラクターの機関士カードの特殊能力が新機軸として登場し、ファンタジーならではと思わせました。
 それに比べると「ルナーレールズ」では、SFならではのルールというのはメテオシャワーくらいしかなく、ちょっとインパクトが弱い気がします。
 月面の発展による段階の移行のようなガジェットがあっても良かったのではないかという気がします。たとえば最初は大都市の数が少ないけれども、物資の輸送によって発展的に新しい大都市が登場してくるとか。
 あるいは発展することによってそれまで建設不能だった地形に建設が可能になっていくとか、新技術による個性の差が生まれる余地があるとか‥。
 SFなのですから考えればいろいろなことができるのだけに、割といつもの「エンパイアビルダー」の域から突き抜けていないのは勿体ない気がします。
関連ゲーム
アイアンドラゴン
●ヘルレイルズ
2038
●アウトポスト
●ベルター
アシモフのスタートレーダー
 こうした違いはあるものの基本的にはゲームは、いつもの「エンパイアビルダー」です。
 上手く商売を組み合わせてキャッシュフローが回るようにして建設を進めていかねばなりません。他のプレイヤーの線路を使えるルールも、ストライキや、商品の枯渇やブームがあるのもいつも通りです。
 運ぶ物資には「水」や「ヘリウム3」や「ロボット」のような月面SFならではのものもありますが、基本的に特殊効果があるわけではありません。