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スターシップトルーパーズ
戦闘準備せよ!
Starshiptroopers Prepare for Battle / AH


一言で言えば‥‥

映画「スターシップトルーパーズ」の新規ボードゲーム化作品

ヴィジュアルなコンポ,シンプルなルール,スピーディーなプレイ

こんなゲーマーにお薦めしたい

すぐにプレイできて,適度な戦場の興奮が味わえるゲームを求める方に

映画のスターシップトルーパーズを良いと思った方に

プレイ人数 2人
プレイ時間 30分−90分
ルール難度 ファミリーゲームプラスアルファ程度
デザイナー ベン ナイト
入手状況 流通在庫のみだが,海外,国内ともまだまだ入手可能

もう一つのスターシップトルーパーズ
スターシップトルーパーズのボックス
AH社が「スターシップトルーパーズ」というゲームを出すのは,これが2作目になります。

両者の共通点は,大元の原作小説が同じであるということだけです。率直に言って,それ以外にはゲーム的な類似はまったくありません。この新版「スターシップトルーパーズ」には副題として「プリペアーフォーバトル」と付けられています。

大雑把に言って,,旧版はボードウォーゲーマーのための作品でした。ヘクスで区切られたフルマップを使用し,1/2インチのコマが何百も付いていました。ルールブックは細かい字で書かれていて,ファミリーゲーマーだったら,このルールブックを見た時点で押入れに放り込んだでしょう。その一方で,アレクニドの巣をプロットシートに記述して地上と地下の2層からなる戦闘を再現したこのゲームは,独自の内容を持ったヘクスウォーゲームとして本格派のウォーゲーマーをも満足させた重厚な作品でもありました。

今回の新版は,大元の原作こそ同一ですが,むしろその原作を使って撮られた映画「スターシップトルーパーズ」のゲーム化と言って良いでしょう。箱絵はもちろん映画のワンシーンですし,プラスチックスタンドに差して使うプラスチックシートのコマも映画の写真を引用したキャラクターや虫たちです。ゲーム内容はとても簡単になり,映画を見て興味を持ったあまり普段はゲームをしない人にでもプレイできるようになっています。

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スターシップトルーパーズのゲームシステム

スターシップトルーパーズは,とてもシンプルなゲームですが,基本的なゲームの仕組みの中に工夫があります。移動と戦闘の手順が,非対称なのです。具体的には,以下のようになっています。

トルーパーズの移動
虫の移動
トルーパーズの攻撃
虫の攻撃

虫の移動と攻撃の間に,トルーパーズの攻撃が入っているのがミソです。トルーパーズに群がるように襲い掛かった虫は,トルーパーズの射撃をくぐり抜けて生き残ったものだけがトルーパーズを攻撃できるのです。
スターシップトルーパーズのマップ
映画を見た方はわかるかと思うのですが,これこそまさに映画のシーンそのものです。数と死を恐れぬ獰猛さで押し寄せてくる虫たち。必死にそれを打ち倒すトルーパーズ,しかし撃ち漏らした虫に一人また一人と食いつかれて肉の塊と化していく戦友たち‥‥。

難しいルールなどなしに,単純にゲームの進行の仕組みを変えるだけで,このゲームは映画の雰囲気を作り出すのに成功しています。

また,このゲームでは映画のさまざまなシーンに対応して全部で12のシナリオが用意されています。これらは,おおむね映画の流れに沿っています。シナリオごとに少しずつ新しいルールが導入されていますが,最初のシナリオを除く残りのシナリオでは,新しく読む必要があるルールは2ページ以下に抑えられています。また,個々のシナリオのプレイ時間は,1時間前後といったところです。ですから,どんどん次のシナリオへと進んで行けます。

そして,ここが重要なのですが,12のシナリオは単に数をこしらえただけではなく,それぞれがプレイしてみて雰囲気のまったく異なる展開になります。あるシナリオでは,生き残るための突破を試み,また別のシナリオでは敵の生体砲台を撃破しに行かねばなりません。敵の卵を叩くこともあれば,逆に危機一髪で回収艇で脱出する状況もあります。敵の偵察部隊の帰還を阻止するものもあれば,敵の巣に入っていく地中シナリオさえもあります。シンプルなルールのゲームで,よくこれだけ多彩な状況を作り出したものだと感心します。惜しむらくは,これだけの数があると,中にははずれと思われるものもあるのが残念です。特にいちばん最後のクライマックスとも言うべきシナリオ11,12あたりが盛り上がりを欠いているように思い,個人的には減点対象かなと思いました。

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旧作や原作小説との齟齬
スターシップトルーパーズのコマ
この新版「スターシップトルーパーズ」は,映画のゲーム化作品として,とても成功していると思います。にも関わらず,旧版のファンの一部や,原作小説のファンの一部からは,かなり否定的な目で見られているようです。
原作小説は,ロバート ハインラインの「宇宙の戦士」です。この作品の邦訳は早川SF文庫から出ており,そのイラストのモビールスーツはスタジオぬえの歴史に残る傑作でした。あの機動戦士ガンダムの原点もこの小説とそしてスタジオぬえのイラストにあるという話ですから,SFファンの間での原作小説(+日本語版イラスト)の存在の大きさというのは推して知るべしです。

ところが,映画版の「スターシップトルーパーズ」にはモビールスーツが出てきませんでした。彼らはずっと軽装備で,あの獰猛な虫どもと戦うのに「そんな格好でいいの?」と言いたくなるほどです。

これが小説と日本語版イラストのファンから見て,映画版に大きく失望を感じさせたことは間違いありません。

個人的な意見としては,映画版は,戦争というものの描き方や,エピソードの雰囲気という点では原作小説を良く踏まえていると思います。ですが,モビールスーツが出てこないという失望の大きさには替えがたかったのでしょう。

また,あれほどの軽装備で部隊を地上投入するという点については,もう少し説得力が欲しかったような気もします。スターシップトルーパーズのSF世界を形成する上で,彼らの装備に関するガジェットは説得力のあるものが欲しかったような気がします。

そんな訳で,ゲームの内容そのものというより,それ以前の入り口のところで,これを原作小説(+日本語版イラスト)と同じものを題材としたものとして認めるかどうかで異論が出てしまうようです。

関連ゲーム / 類似ゲーム

もちろん旧版の「スターシップトルーパーズ」を挙げなければなりません。

シンプルなルールでエキサイティングな展開を見せる人類対エイリアンの戦術級ゲームとしては,スティーブジャクソンの
「外宇宙からの恐るべき緑のもの」や,TSR/SPIの「スナイパーバグハンター」があります。ただどちらも映画「エイリアン」の影響下にあるのではないかと思われるので,少し色合いが違うかも知れません。

この他には,GW社の一連のミニチュアフィギュア系のゲームの中の「スペースハルク」がゲームのプレイ感やシチュエーションで通じるところがあります。

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