スナイパー・バグハンター
Sniper Bug Hunter / TSR-SPI

一言で言えば‥‥

人類 対 エイリアン、どちらが生き残るかのサバイバルゲーム

エイリアンものSFゲームと、個人戦術級の傑作システムがドッキング

Human vs Aliens, it's a survival game in Space.
recommended as a tactical wargame which can cover wide variety of situations.


プレイ人数 2人
プレイ時間 2〜4時間
ルール難度 中上級ウォーゲーム(戦術級)
デザイナー スティーブ・ウィンター
入手状況 海外中古ショップを当たられたし

戦術級ゲームシステム「スナイパー」の挑戦
スナイパーバグハンター
「スナイパー・バグハンター」は、SPI社から最初に登場し、TSR−SPIに移って大幅にリヴィジョンされ再登場した戦術級ゲームシリーズ「スナイパー」の最終作です。

このシリーズは、「スナイパー」、「スナイパー・ヘッツアー」という第二次大戦からスタートしました。その後、第3作の「スナイパー・スペシャルフォース」では現代の地域紛争やテロ対策などの小部隊アクションを扱うところまで進みました。これで、「スナイパー」システムは汎用小部隊戦闘システムとしての可能性を証明しました。そのスナイパーの最後の挑戦は、近未来のエイリアン対地球文明兵士の戦いでした。それが「スナイパー・バグハンター」です。
こうした事情を理解すると、「スナイパー・バグハンター」は、SFゲームを第一義としてデザインされたのでないことがわかります。むしろ、戦術級ゲームシステムの挑戦として、「どこまでこのシステムが適用できるか?」が本作品の課題だったのではないでしょうか?

こうした立場は、デザイナーズノートの端々にも感じられます。デザイナーは、「バグハンターでもスナイパーの基本システムは変更されずに残っている」と述べています。その一方で、第二次大戦から現代戦、近未来戦に進むに連れて、小部隊戦闘そのものが進化してきていることが個別ゲームのデザイン上の課題だったと術懐しています。いわく「バグハンターに登場する宇宙海兵隊の1兵士は、スペシャルフォースでの射撃チーム分、ヘッツアーでならまるまる1個分隊分の火力を持っている」と。
こうした歩兵のウォーキング・タンク化にも関わらずシステムが変更されなかった最大の理由として、デザイナーは「スナイパーではいつも引き金を引く人間の方が、引き金の先に付いている武器よりも重要であるとしてきた」ことを挙げています。とかく、戦術級ゲームではスケールが小さいが故に個別の兵器の個性まで描き出せてしまいます。そのために、多くの戦術級ゲームはシリーズ化されると、扱う武器の種類が増え武器のちょっとした差を表現するためにルールが詳細になっていきます。
これに対して、「スナイパー」システムは違う道を歩みました。異なる時代、異なる状況設定へと移っていき、そこでもいつも引き金を引く人間に焦点を合わせ続けたのです。どれほど有力な武器を与えられようとも、最後はその武器を人間が適切に操作できるかどうかがカギとなります。「スナイパー」システムの視点は、最初から最後までそこにあり続けました。

アクティベーションとタスク、パニックとリーダーシップ
コロニーの戦い
「スナイパー」システムの大きな特徴は、アクティベーションシステムにあります。
各兵士にはアクティベーション値が与えられます。各ラウンドに引いたアクションチットの数字により各兵士が行動できるかどうかが決まってしまいます。アクティベーション値が1の兵士は、引いたチットに関わらず必ず行動できます。対してアクティベーション値が6の兵士は、6のチットが引かれたときだけ、つまり確率1/6でしか行動できません。これにより同じだけの時間を与えられても、適切に次々の行動を行える兵士と、うろたえてしまって何もできない兵士とが描き分けられるのです。
また、部隊全体の練度を示すアクティベーショントラックが存在し、これにより1ターンに何ラウンドを実行できるか部隊毎に変化させています。部隊のトラックが良くない場合には、アクティベーション値の低い兵士はまったく行動機会のないままに1ターンを無為に過ごすことも起こり得ます。
このアクティベーションシステムによって、有能な兵士と無能な兵士は、ゲーム中に実行できる行動の数が数倍も異なってしまいます。このため、白兵戦兵器しか持っていない兵士が、重火器を持った無能な兵士を次々に切り倒すようなことも起こり得るのです。これが「スナイパー」システムの醍醐味であり、それゆえに些細な武器の能力差など些末なものとして受け付けない異端の戦術級システムとなっているのです。

もう一つ「スナイパー」システムで強烈なものとして、パニックチェックがあります。多くの戦術級ゲームは、モラルチェックや、パニックチェックといったシステムを持っています。しかし、その与える影響が「スナイパー」システムほどに凶悪ではないでしょう。まず、パニックチェックをするための条件設定が他の戦術級ゲームとの立場の違いを表しています。自身が損害を被った場合や、戦闘結果表で指示された場合にチェックするのは多くの戦術級ゲームと同じです。しかし、これ以外に、視界内や同じ室内で友軍兵士が死傷した場合にチェックしなければならなかったり、シナリオが始まって最初の銃声もしくは爆音が聞こえたときに全員がチェックしなければなりません。戦場の現実が人を立ちすくませるということを非常に強くルール化しています。またチェックの失敗の仕方によって、その場で慌てて伏せたり、後方へ逐電したりする区分けがあります。パニックからの回復条件も厳しいため、パニックに陥ったまま為すすべもなく屠られる兵士が少なくありません。

「スナイパー」では、リーダーの持つ影響力も戦場での精神的な試練に焦点を絞っています。彼らは決して優秀な兵士として自ら最高の活躍をする存在ではありません。むしろ、一定の距離内の視野にいるうろたえている兵士に適切な行動をさせたり、パニックに陥っている兵士に平静を取り戻させたりする存在なのです。しかし、「スナイパー」システムでは、これこそ最も重要な働きなのです。ここまで読んでいただければ、「スナイパー」システムが「人間が戦うという行動を続けられるかどうか」に焦点を絞った異色の戦術級ゲームであることがおわかりいただけるでしょう。



不死身のエイリアンと戦うということ
宇宙船の戦い
「バグハンター」でも人類兵士たちの取り扱いは基本的に変わりません。アクティベーションが適切になされれば柔軟な行動がとれますし、そうでなければ凶悪なエイリアンの前に立ちつくすばかりとなるでしょう。
これに対して、「バグハンター」のエイリアンは、「スナイパー」システムの中ではこれまで登場したことのない異色の存在です。彼らにはアクティベーション値はなく、代わりに引いたアクションチットの数だけ任意の個体が行動します。エイリアンは攻撃本能に支配された最強の闘争本能を持つ存在なのです。他の戦術級ゲームシステムであれば、エイリアンが白兵戦攻撃しかできず火器を持っていないことは深刻なハンディキャップでしょう。ところが、この「スナイパー」システムでは最強の闘争本能に勝るものはないのです。
これに加えてエイリアンは特殊能力カードをランダムに引き、人類に未知の不気味な能力を持っています。これではもはや植民者はもちろん、宇宙海兵隊にも勝算なしとさえ思えます。実際プレイすると、多くのシナリオで人類側は大苦戦です。エイリアンが有力な能力をツモっていると、絶望的な戦いを強いられることもしばしばです。

SFゲームとしての「バグハンター」

ここまで「戦術級ゲーム」として「スナイパー・バグハンター」をどう評価すべきなのかということを議論してきました。それはデザイナーの意図がきっとそこにあるであろうと思ったからであり、また実際に作品がそう出来上がっていると感じたからでもあります。

では、SFゲームの一作品としてみたときに「バグハンター」はどう評価できるのでしょう。改めて考え直してみると、これもまた異色作であることがわかります。
第1に、二次大戦の戦術級から発展してきたゲームシステムをベースとしており、単作のSFゲームとして見ると非常に難易度が高くなってしまっています。さらに、ルールブックの構成が、基本ルール、中級ルール、上級ルール、バグハンターの特別ルール、シナリオの特別ルールと屋上、屋を重ねた形になっていることが学習しにくさに拍車を掛けています。疑問点が発生しても、どこを参照して良いのかさえわかりにくいのです。
第2に、シナリオが非常に汎用の状況設定として与えられています。人類側は植民者と宇宙海兵隊のいずれかを選ぶことができ、これにより戦場も惑星上だったり宇宙船内だったりします。エイリアンは、人間サイズの個体であるプレデタータイプと小型で群生するスウォームタイプが選べ、さらに特殊能力カードをランダムに引きます。このため、一つのシナリオといっても、大雑把に「大群のエイリアンに包囲された人類小部隊」というようなことを規定しているだけで、個々のプレイの度に内容はかなり異なってきます。結果として、プレイバランスなどのデベロップは甘く、競技性は低くなっています。
こうした特徴を書き出してみると、改めて「バグハンター」がSFゲームの単品ではなく、戦術級ゲームシステムの一つの新しい対象時代の拡張キットであるのを痛感します。

こうしたことを踏まえていただけば、プレイヤーをかなり選ぶゲームであると言えます。本格的な戦術級ウォーゲームを消化できるだけの気構えがないと、なかなかプレイしきれないのではないでしょうか。
その一方で、一作品でありながら、エイリアン映画の種々のシチュエーションのほとんどを再現できるだけのシステム、コンポーネントが揃っているオールインワンのゲームでもあります。宇宙船内を逃げ出してしまった標本エイリアンを探すシナリオから、圧倒的なエイリアンの大群に攻め寄せられる絶望的なコロニーに至るまで、このゲームにはプレイヤーの挑戦すべき多くのシチュエーションが用意されています。さらに自作シナリオまで展開すれば、それこそ個人戦闘レベルの状況であれば、SF映画のほとんどのシチュエーションが再現できるのではないでしょうか? やりごたえは十分にあると思います。



関連ゲーム / 類似ゲーム

この題材のゲームは少なくありません。映画「エイリアン」を彷彿とさせるゲームとしては、SPIの「BSMパンドラ号の遭難」や、SJGの「外宇宙からのおそるべき緑のもの」があります。
宇宙船内戦術戦闘ゲームとしては、GDWの
「メイデイ」「アザンティハイライトニング」が同じスケールのゲームということになるでしょう。
ミニチュアフィギュアを使ったゲームとしては、GWの「スペースハルク」や、
「アドヴァンスド・スペースクルセード」があります。

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