スターゲート
Star Gate / SPI
ショートコメント
●バターフィールドの隠れた小品、いかにもSF的なフレームワークを持った独自色の強い佳作
Unknown small game by Butterfield, in which very unique Sci-Fi situation is covered by unusual game system.
published designed players time
1979 John Butterfield 2 2 hours
SPI未来史の異端児

 「スターゲート」は、SPIが出していたミニゲームシリーズ「スペースカプセル」の第2作として出版されたゲームです。
 デザイナーは、空戦ゲームやソリテアゲームで冴えを見せるバターフィールドです。「RAF」、「バトルズオーバーブリテン」、「アンブッシュ」などを手掛けています。SFゲームでは、「フリーダムインザギャラクシー」や、「BSMパンドラ号の航海」を手掛けています。
 こうして並べて見ると、バターフィールドのタッチというのが何となくわかるのではないでしょうか。他のデザイナーとは異なったゲームデザインのメカニクスがあるような気がします。

 「スターゲート」の設定は紀元2519年、銀河を80年に渡って一方的に浄化と称して他の文明を粉砕してきたヴィルニアンとの戦いを描いています。ヴィルニアンは、トライシップと呼ばれる三位一体宇宙船の圧倒的な威力と、スターゲートと呼ばれる謎の技術を使って、空間に突然ゲートを開けて仕掛けてくる奇襲攻撃で圧倒的な存在でした。
 地球を初めとする4つの文明は、ヴィルニアンに一矢報いるため寄せ集めの艦隊を作り上げ、ヴィルニアンがエネルギーを補給するヌルゲートの周辺で待ち伏せします。合体させると圧倒的な威力を持つ三位一体宇宙船も、エネルギー補給のために帰還するときにはばらばらになっています。
 彼らがヌルゲートの傍に帰還用のスターゲートを開けて通常空間に帰って来るところが唯一のチャンスです。このチャンスを逃して合体を許しヌルゲートに接近させてしまっては勝機を逸してしまうでしょう。
ファイナル・コメント
 独創的なルールから構成されていて、他のゲームと類似したところがないので非常にとっつきが悪いです。
 けれども、ルールブックのページ数は4ページしかなく、それほど難しいわけではありません。少し腰を据えて取り組むと、魅力的なシチュエーションと、独創的なゲームシステムが連動してユニークなゲーム経験を与えてくれることがわかります。
 移動ルールが異質なものが戦うゲームとしては、OSG/AHの「アルファオメガ」がありますが、同じようなとっつきの悪さと、それを乗り越えたところでのユニークなゲーム体験は似ています。
 単にマップの色合いやユニットのデザインが違うだけで、ヒストリカルの空戦ゲームと大して変わらないSF空戦ゲームが多い中にあって、このゲームは「SFゲームだから作れる奇抜なメカニクス」を持っていると思います。
 傑作と言うほどには誉められないのですが、バターフィールドの才気は十分に感じられます。なかなか類を見ないゲームですからSFゲーマーを自認する人なら遊んで見て欲しいところです。
関連ゲーム
スターフォース
●アルファオメガ
BSMパンドラ号の航海
●ダークスターズ
ヴェクター3
●タイタンストライク
 「スターゲート」は、タイトル名からも、また年代から見ても「スターフォース」三部作と繋がっていそうな第一印象を受けるのですが、どうも齟齬があります。
 「スターフォース」の年代史では、2505年にパンヒューマンヘゲモニーがレイム、ルカルダと三つ巴の戦争を繰り広げているので、「スターゲート」の背景となるヴィルニアンによる浄化戦争とは噛合いません。また、人類と共に戦う寄せ集めの文明は、イググイ、メタメキシッシュ、デュオノイプスという聞いたこともない顔ぶれです。どうやら、このゲームはSPI未来史から逸脱してしまっているようです。

特殊なシチュエーションと独創的なゲームシステム

 冒頭に書いたように「スターゲート」は、特殊なシチュエーションを描いています。
 ヴィルニアンはスターゲートから通常空間へと出現し、少しはなれたところにあるヌルゲートへとエネルギーを補充しようと帰ってきます。これに対して地球を初めとする4文明連合軍は、通常航行でスターゲートの出口付近へと待ち伏せ攻勢を掛けます。
 このときに、ヴィルニアンはトライシップと呼ばれる三位一体の宇宙船から構成されています。コントロールシップ、ウェポンシップ、トランスポートシップからなります。三隻が合体したときにフルに能力を発揮できるようになっており、大昔のテレビゲーム「ムーンクレスタ」の自機とイメージがだぶります。
 ゲームの序盤は、トライシップはばらばらで、しかもヌルゲートから離れているためヴィルニアンは苦戦を余儀なくされます。バラバラの内に各トライシップのいずれかの個別シップを撃破してしまえば完全に合体することはできなくなってしまいます。実際、全てのトライシップのいずれかの個別シップを撃破すると地球側は勝利するという条件になっています。
 その一方で、一旦、合体すればトライシップはかなり強力であり、一隻でも連合軍を相手に奮戦できる能力があります。また、ヌルゲート周辺ではヴィルニアン宇宙船は能力が向上するため、戦場がヌルゲート周辺に移ることでもヴィルニアンは優位を取り戻していきます。
 この仕組と場面設定は、いかにもSF宇宙戦闘ゲームらしくて面白いと思います。
 これと連動して独創的なのが移動、戦闘のゲームシステムです。移動は、文明ごとにルールが違っていて、もっとも一般的なのはリニア移動です。これは、移動フェイズ中は移動能力の範囲で一方向に直進だけするという移動システムです。地球や、ヴィルニアンのトライシップの内の、ウェポンシップとトランスポートシップはこの仕組で移動します。途中でターンすることはできなくはないのですが、減速するためかターンするところで敵の防御射撃に極めて脆弱になり、実際には本当に必須の場面以外では恐ろしくてできないでしょう。
 連合軍のイググイは、テレポートができます。これも直線上を移動するのですが任意の距離までジャンプでき、途中のヘクスの影響を受けません。通常のリニア移動では、敵のヘクスに侵入したり通過したりするときにアプローチと呼ばれる臨機射撃のような手順を受けます。テレポートでは、通過時にはこれを受けないのです。
 連合軍のメタメキシッシュと、ヴィルニアンのコントロールシップは、ウォブリングという移動ができます。移動力の範囲で好きなように移動でき、リニア移動のようにターンすることで脆弱になったりしません。
 戦闘も独特で、地球側は同一へクス戦闘で攻撃を掛けるのが原則で、これを遠距離攻撃で支援はできるのですが、遠距離攻撃単独では攻撃ができません。このため、前述したアプローチの手順を経てヴィルニアン宇宙船のいるヘクスに入らなければなりません。
 対してヴィルニアンのトライシップは合体すると、隣接へクスへの攻撃が可能になりアプローチの手順を受けることなく連合側の宇宙船を攻撃できるようになるのです。
 こうした文明ごとの移動ルールの違いや、ヴィルニアンのトライシップの強烈な仕組が、このゲームを独創的でユニークなものにしています。