ゴッズファイアー
Godsfire / Task Force Games
ショートコメント
●リン・ウィリスの作った政治・経済戦要素をたっぷりと盛り込んだ銀河帝国系マルチプレイヤーズゲーム
Multi-players game of galactic empires including various elements of politics and economics by Lynn Willis.
published designed players time
1979 Lynn Willis 2-4 1+ hours
シンプルでプレイアブルな三次元移動システム

 日本では「ブラッドツリー解放戦争」くらいしか紹介されていないリン・ウィリスですが、中堅クラスのSFゲームデザイナーとして本国ではそれなりに活躍しています。
 その中でもこの「ゴッズファイアー」は、オリジナルがメタゲーミングから発売され、その後にタスクフォースゲームズから本格的なボックスゲームとしてリプリントされたという作品です。
 内容的には三次元マップを用いた銀河帝国系のゲームで、SFゲーム界の永遠のゴールデンテーマに当ります。
 ゴッズファイアーは、大きく基本ゲームと上級ゲームに分かれています。
 基本ゲームでは、移動と戦闘からなるシンプルなウォーゲームです。三次元空間を表すシステムが独特で、画像のようにメガヘクスの中にサイズの異なるサークルが渦巻状に並べられています。大きいものほどマップの上方に位置しており、小さいものほど下方に位置しているという遠近法表示になっています。これによって、+5から−5まで11階層のマップが上下に積み重なっていることになります。
 移動システムは比較的シンプルで、セル(特定レベルのヘクス)を移動するごとに原則として1移動力を消費するものになっています。三次元であると言うことを別にすれば、平面上を移動するときはメガヘクスを隣へ、上下に移動するときはメガヘクス内の1つ上下のサークルへ移動する普通の移動システムです。
 ボード上に白く表示された領域があり、この中に位置するセルはネビュラセルで、移動力が倍の2掛かります。
ファイナル・コメント
 「ブラッドツリー解放戦争」もそうですが、リン・ウィリスのゲームは、政治・経済・ゲリラ戦のカラーが非常に強い気がします。その意味でこのゲームの真意は上級ゲームにあると思います。
 ただ、わたし自身、ルールは読みましたが、マルチの銀河戦争ゲームで、経済や政治をここまでやってしまうと銀河戦争の展開を楽しむという本題がスローダウンしてしまうのではないかという気がしてプレイまでは漕ぎ着けていません。
 サブシステム自体は着想が面白いのですが、ここらへんを本気で扱うなら今の時代であればコンピューターゲームにするのかなという気がします。
 その一方で、三次元移動システムは正に立体化した普通のヘクスウォーゲームという作りになっていて、それがプレイしやすく面白くまとまっています。このゲームを発掘して紹介する意義は、今ではむしろこちらにあるように思います。
 また、このゲームはシナリオを並べて、この架空世界の未来史を語ると言う構造になっていて、その意味ではSPIの「スターフォース」と同じ作りになっています。ただし、未来史の作り込みという点では、「スターフォース」の方が上手でしょう。
関連ゲーム
スターフォース
ミレニアム
●スターフォール
●トワイライトインペリウム
●ホーリーウォー
ブラッドツリー解放戦争
 この移動システムはヘクスウォーゲームの感覚で扱うことができて非常にプレイしやすく、「スターフォース」や「ウェブアンドスターシップ」のような厳密なピタゴラス式の移動システムよりずっとプレイアビリティが高いように思います。
 左の画像はシナリオ1のセットアップですが、このシナリオでは三次元空間で相手をブロックして封じ込める演習が扱われています。三次元空間に立体的な移動障害であるネビュラがあり、それを利用して相手を振り切ったり、包囲したりすることになります。
 このシナリオは、三次元空間を隣接セルを通じて移動する「ゴッズファイアー」のゲームシステムならではのもので、平面でなく三次元であることを肌身に感じさせてくれる面白いシナリオです。
 今ではあまり話題にならないゲームですが、この三次元システムはプレイアビリティが良く、生き残っていても良いような気がします。
リン・ウィリスらしい政治・経済上級ルール

 「ブラッドツリー解放戦争」と言えば戦術級ゲームでありながら、政治・経済の要素が盛り込まれていたのが印象的でした。リン・ウィリスはこうした要素をゲームに取り込むのが好きらしく、「ゴッズファイアー」の上級ルールも、そのほとんどが政治・経済ルールになっています。
 実際にプレイしたことはないのですが、ボードゲームギーク辺りの評判を見ると、プレイタイムが非常に長くなり、また内政に労力が掛かりすぎてマルチの星間戦争ゲームとしては少々問題が多いようです。ただし、ルールを読む限りでは随所に面白い着想があり、非常に示唆に富んでいます。
 経済システムの中核はオーソドックスな、課税、資金保有、部隊生産という行動からなります。右の画像が星系の政治・経済状態を表すシートです。4つの地域に分かれていて、そのそれぞれについて政治・経済状態を管理すると言う木目細かな作りになっています。
 各地域の端にタテに並んでいる円が経済規模を表しています。経済規模を大きくするにはそのための投資が必要で、これによって地域は農業1から農業2へ、さらに工業1、そして工業2へと発展していきます。
 このときに面白いルールとして、工業地域はそれを支援する農業地域がないと成立しません。つまり、都市への食料調達をする農業基盤が必要なのです。工業1なら農業1もしくは2が1つ、工業2なら農業2が1つ必要です。このため、4つの地域からなる星系の最大発展状態は工業2が2と農業2が2までということになります。
 また、非常に特徴的なルールとして、地域ごとの政治姿勢があって、これによって生産できる部隊が違っています。この政治姿勢を変更しようとすると、一旦、政情不安な状態に忠誠度を下げなければならないというルールになっています。忠誠度の概念があることから想像される通り、反乱のルールもあります。
 さらに、凄いルールとして他のプレイヤーの星系の地域に対して扇動工作をできるようになっています。これに対する防衛策も打てます。
 また、地域ごとに経済が独立していることから資金管理も星系ごとに管理するようになっており、地域間を資金移動するときにはマネーマーカーを資金輸送船に見立てて実際にマップ上を移動させます。