
ミレニアム
Millenium / International Team
一言で言えば‥‥
銀河帝国を築いた人類,その帝国への侵略者,銀河大戦が始まる
戦略マップで星系の支配を争い,戦術マップで艦隊決戦の帰趨を決する
こんなゲーマーにお薦めしたい
星間戦争ゲームというSFゲームの王道を愛するプレイヤーに
多少の不具合は自分たちで工夫してプレイすることのできるゲーマーたちに
プレイ人数 |
2人 |
プレイ時間 |
3時間〜6時間 |
ルール難度 |
初級ウォーゲーム,ただしルールに曖昧さあり |
デザイナー |
??? |
入手状況 |
もはやオークションに頼るしかないか? |
ミレニアムのシステム
インターナショナルチームの平箱というと,1980年頃に店頭に並んでいて,その巨大さで人目を引いていたものです。ヒストリカルシミュレーションものもありましたが,SF/Fものも少なくありませんでした。
これらの中では,「ザルゴスロード」が雑誌の紹介などもあってもっとも著名ではないかと思います。しかし,今回紹介する「ミレニアム」も内容的には同社のゲーム中でもトップクラスの一作で,もっと知られて良いゲームでしょう。
「ミレニアム」は,銀河帝国を築き上げた人類が,その版図の外側から侵略を受けるゲームです。いわゆる星間戦争もののゲームで,三次元的な取扱をするマップを用い,その外側から外敵が進入してくるという点でSPIの古典「スターフォース」のゼノフォーブ戦役シナリオを彷彿とさせます。
「スターフォース」の名前が出ましたが,スターフォースの応用ゲームと,ミレニアムは,システム的にハイブリッドであるところも類似しています。戦略マップで星系間の移動や支配権の争奪を実施するのですが,個々の戦闘は戦術マップで解決するのです。これによって星間戦争の大戦略の醍醐味と,艦隊決戦の戦術の興奮が一つのゲームにパッキングされるのです。
ミレニアムで面白いところは,三次元に散らばった個々の星系について,その状態をランダムにカードで決めるところにあります。そして,その情報はこの宙域の支配者である人類プレイヤーにのみが知っています。そして,これらの星系の中の一つを地球プレイヤーは母星と決めておきます。
これに対して侵略者プレイヤーはマップの宙域の外側の任意の方向から侵入してきます。これは事前に地球プレイヤーにはわかりません。勝敗は,侵略者の植民計画が達成されるかどうかで判定されますが,それとは別に母星地球が敵の手に落ちてしまっても決着が付きます。
このため,地球側は地球の位置を秘匿しながらプレイを進めるのですが,いざ地球が危地に陥ると全力でそれを守らねばなりません。ここのところのジレンマの設定が面白くできています。また,戦略マップでの移動方法が2種類あり,広いマップを地道に少しずつ確実に進む通常航法と,一気に大距離を越えられるが着地点の精度がサッパリなワープ航法があります。これによって広大な三次元マップが上手く生きてきています。

ミレニアムの実際のプレイとそこでの様々な問題点
左の画像は戦略マップ上での実際のプレイの進行を撮影したものです。
マップは四角形で区分されており,これがさらに四等分されていて,その中央に円が描かれています。円の部分が恒星系を表していて,その外側は系外宙域を表しています。
マップは立体になっていて,高度差は色で表されています。立体のマップというのは,事実上,高さの分だけフルマップが重なっているのと同じですから,実は平面ウォーゲームなどとは比べ物にならないほど広いことになります。往々にしてこの広さがプレイした際に生きていないのですが,ミレニアムでは前述した二つの移動方法で上手く生かされています。
ただ問題点として,広い宙域に対してユニットの密度が低いということは否めません。このため,両プレイヤーともたくさんの星系を,わずかな艦隊でどうやって守り,どうやって攻め,どこは諦め,どこで決戦を求めるかに悩みます。
このゲームの最大の問題点として,攻撃側である侵略者の兵力が全体として防御側である地球側の兵力と同等であるということがあります。このため,当初は侵略者必敗ゲームではないかと見られていました。その後,いろいろと議論したのですが,わたしたちのところでは「侵略者側は第1ターンは侵入手順に加えて,さらに通常の移動手順が得られる」という奇襲ダブルムーブを与えるのが妥当ではないかという話しになっています。ここらへんはルールブックではどちらとも取れそうなところです。
また侵略者は星系に対して降伏勧告をできるのですが,ここらへんのルールも記述が不足しています。どうもバランスからみると,移動中に降伏勧告できるのではないかと思われますが,シークエンス的には不自然な印象もあります。このほかに同一星系に複数の惑星がある場合の取り扱いなども記述がほとんどなく,はっきりしません。
これらは侵略者の侵攻計画のタイムスケジュール組みに重要で,直接プレイバランスを左右します。なぜなら,ゲームには20ターンというタイムリミットが設定されているからです。
ミレニアムの戦術戦闘
ミレニアムの戦術戦闘は別の戦術マップに移して実施します。大きく二つのケースがあり,艦隊同士の遭遇戦と,艦隊対惑星の侵攻戦です。
前者は敵の艦隊を掃討するために強力な艦隊で,より規模の小さい艦隊を叩きにいくときに発生します。ただ,この場合,弱い方の艦隊は戦闘が始まった途端,さっさと回頭して逃げることが多いので,逃げ足の遅い艦を高速戦闘機がどのくらい捕捉して叩けるかの争いになります。ゲーム的な良し悪しは別として,宇宙空間戦闘って案外こんなものかなと思わされます。
艦隊対惑星の侵攻戦では,惑星側の防衛システムが強固なため,侵略者側は大変です。この消耗を考えると,侵略者側の艦隊兵力が地球側の艦隊兵力と同等という設定はどうかなという気がしてくるのです。
ミレニアムの難点と魅力
ミレニアムの難点を中心にここまで書いてきました。要約すると,ルールに不透明要素が多く,戦力設定のバランスに疑問があるということです。
ただ,その一方で三次元マップで戦略戦闘が上手く機能しており,戦術マップとのハイブリッドという着想もSFゲーマーの心を魅惑するツボを押さえています。その意味でとても魅力的なフレームワークを持っているというのも事実です。
ですから問題点を自分たちで解決しながらゲームの完成度を納得のいくところまで高めて遊ぶという姿勢があれば,このゲームは取り組む値打ちが十分にあるでしょう。その中には,ユニットの追加製作などという結構,大変な作業も含まれます。
私見ですが,このテの三次元星間戦争のゲームで,戦術戦闘をハイブリッドしたものとしては,ミレニアムはもっとも高い水準のフレームワークを持っていると思います。後はテストレプレイをもっとやって疑問点を潰し,バランスを調整しておいてくれれば‥‥という印象です。
今となってはその部分は自分たちでやるしかありません。それをやるかどうかが,このゲームをどう評価するかに直結するでしょう。
関連ゲーム / 類似ゲーム
SPI社のスターフォースがゲームのフレームワークとして非常に近いところに位置していると思います。
この他に三次元星間戦争のゲームの代表作としては,コスティキャンがウェストエンド社から出したウェブアンドスターシップがあります。
インターナショナルチームの他のSF宇宙戦ゲームとしては,クロルとプルムニがあります。

