終わりなき戦い
The Forever War / Mayfair Games
ショートコメント
●「宇宙の戦士」と並び称されるホールドマンの傑作宇宙戦記小説「終わりなき戦い」のボードゲーム
Boardgame which covers the novel "Forever War" by Joe Haldeman which is as famous as "Starship Troopers"
published designed players time
1983 James Griffin 2 1+ hours
「終わりなき戦い」をシナリオで描く戦術級
 ジョー・ホールドマンの「終わりなき戦い」は、SF戦記小説としてはもっとも著名な作品の一つでしょう。シリーズ物を別にすると、単独の長編としてはハインラインの「宇宙の戦士」、カードの「エンダーのゲーム」と併せて戦記ものSFの海外長編御三家だという人もいます。
 わたし自身、原作を読んだのが大昔なのでレビューを書くに当って少し復習しました。この世界ではトーランというグループマインドを持つヒューマノイドと数世紀に渡る泥沼の宇宙戦争を展開しています。コラプサージャンプで距離が無効化され銀河全体に戦争は広がっていますが、その一方でウラシマ効果で様々な世代の部隊が戦場に入り乱れています。
 「終わりなき戦い」は戦記小説ではあるのですが、この数百年に渡り、世代を越えて戦い続けている戦士たちというモチーフに主眼があり、戦争自体の戦術的興味や作戦的興味は「宇宙の戦士」ほどには重視されていなかったと言う印象があります。
 その意味では戦術的興味や作戦的興味そのものが前半のバックボーンである「エンダーのゲーム」とは対極に位置するように思います。

 ゲームの「終わりなき戦い(ザ・フォーエバーウォー)」は、メイフェアから発売された戦術級ゲームです。戦士の戦いを描く小説のゲームですから戦術級のマルチシナリオ形式と言うのはオーソドックスなところです。
 ゲームシステムは戦術級としてはオーソドックスです。移動・戦闘のシステムで、戦闘には射撃戦闘と白兵戦とがあります。
 シナリオは防御側が地形を設定して防御施設であるバンカーを秘密プロットし、攻撃側が降下進入して戦闘が始まります。
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ファイナル・コメント
 AHの古典「スターシップトルーパーズ」とどうしても比較されると思うのですが、後発の割には先達を上回ることはできなかったように思います。
 「スターシップトルーパーズ」は、アレクニドの巣をプロットするブラインドゲームが抜群に面白いのですが、そういった妙味は「終わりなき戦い」にはありません。割と普通の戦術級ゲームになってしまっている感じです。
 ただ、これは原作のシミュレーションとしては止むを得ない部分もあります。ハヤカワ文庫版の解説にもある通り、原作小説ではトーランという敵についての描写は意図的に希薄になっています。戦士たちは心理学的に刷り込みをされていて戦い続けていますが、いかにも悪役らしく独特の戦術を駆使するアレクニドと比べると、少々、できの悪いコピー戦士と戦っているような感じなのです。
 原作小説自体、「宇宙の戦士」のホットに対して、「終わりなき戦い」はクールでドライな印象があったので、ゲームの方がいささかドライに仕上がっているのも止むを得ないのかも知れません。
 あとシナリオの規模が全体的に妙に大きいのも気になります。その割にはシナリオごとに戦術的な妙味があるという訳でもありません。シナリオごとの妙味という点では、さらに後発の「プリペアーフォーバトル」が面白いですね。
 左の図がプレイの様子です。
 降下した地球側の緑色の部隊が、トーランのバンカーを探して接敵しつつあるところです。
 このゲームは戦術級ゲームらしく、種々の兵器が出てきます。そのときに、設定紹介のところで書いたように数世代に渡る部隊が戦場にいるため、部隊ごとに技術レベルが設定されています。新しい時代の部隊ほど強力な兵器を持っていたり、戦闘時に修整がもらえたりします。
 マップはメイフェアお馴染みのジグソーボードで、いろいろに組合せができるようになっています。

 わたし自身はプレイしたことがありませんが、マルチプレイヤー用のルールも用意されています。
 さらに、シナリオ自作用のツールも用意されています。シナリオカードの作りなどは、AHのスコードリーダー辺りの影響を感じます。