フォートレスアメリカ
Fortress America / Milton Bradrey
ショートコメント
●近未来の架空戦、3方から襲い来る侵略者の攻撃にさらされる窮地のアメリカ、「インベージョンアメリカ」再び!
●SPIの建国200周年ゲームの悪夢が、ミルトンブラッドレーのゴージャスなフィギュアゲームで再現される
America under attack of 3 invasion force from east, west and south.
Nightmare of SPI's "Invasion America" comes again by MB's miniture figure game.
published designed players time
1986 Michael Gray 4 3-5 hours
窮地のアメリカ再び!
 アメリカが近未来に周囲の諸勢力から同時に侵攻を受けるというシチュエーションは、SPIが合衆国建国200周年のときに作成したビッグゲーム「インベージョンアメリカ」の設定として有名です。
 アジアには日本もしくは中国を中心とした大勢力が結集して西から、中南米も新興勢力として結集し南から、欧州も結集して東から、三方同時にアメリカに襲い掛かってくるというシチュエーションです。
 イロモノと言ってしまえばそれまでですが、実際には国土を本格的に侵攻されたことのないアメリカにとって、これは独特の悪夢的なシチュエーションとしてB級映画的な魅力を持つ設定なのかも知れません。
 1986年に、「インベージョンアメリカ」から10年を経て、鬼才マイケル・グレイの手でミルトンブラッドレーから「フォートレスアメリカ」が出ました。グレイと言えば、同じミルトンから「オメガウィルス」や「13デッドエンドドライブ」も出しており、この手のイロモノゲームの巨匠と言っても良いかも知れません。
 また、このゲームは、同じサイズで同じようなコンポーネント仕様のゲームが一連で出ており、前にWW2を世界規模で再現する「アクシス・アンド・アライス」、ローマ帝国の危機を描く「エンパイア」、後には日本を舞台にした「ショーグン」と並んでいました。 
ファイナル・コメント
 このゲームは近年になってオークションで入手して、つい先日、初めてプレイしました。イロモノだと思っていましたが、ゲームシステムにはいろいろな工夫が施してあり、プレイバランスもギリギリでアメリカが陥落するくらいのところになっています。
 連携の良い侵略者であればアメリカを打ち倒すことができるでしょうが、それでも真の勝者はその内の一人だけということになります。非常に面白いゲームで、プレイアビリティから言っても「インベージョンアメリカ」を置き換えた佳作と言って良いと思います。
 少々気になるのは、歩兵の1ターンあたりの移動力が1しかなく、輸送も戦略移動もないため戦線の移動速度が極めて遅いところに制約されていることです。これは近未来戦としては少々違和感を感じます。
 もっとも電撃戦が可能なシステムだとアメリカ側に勝機は全くなくなってしまうかも知れません。
関連ゲーム
インベージョンアメリカ
●SSアメリカ
レッドクリスマス
●ウォーインジアイス
●ミニットマン
●アクシス・アンド・アライス
オメガウィルス
 「フォートレスアメリカ」のゲームシステムは、比較的シンプルです。
 3方の侵略者のそれぞれのプレイヤーターンと、防衛側のアメリカのプレイヤーターンにより進行していきます。
 プレイヤーターン内のシーケンスは少し捻りがあって、まず増援フェイズ、続いて準備移動にあたる第一移動、戦闘、そして第二移動の順になります。侵略者側は最後に補給チェックを行う必要があり、もし補給が切れているとその部隊は全滅してしまいます。アメリカは補給ルールがなく、代わりに優位性を持つレーザー技術によるレーザー防衛射撃の手順が加わります。
 侵略者は最初のターンに初期兵力である20ユニットで侵攻を開始し、以後、2〜6ターンに8ユニットずつ40ユニットを増援していきます。このゲームの流れを決定付けている要素として、侵略軍のユニットはこの60ユニットで全てで、それ以上の増援はなく後は消耗していくだけだということがあります。
 一方、アメリカは増援はカードによってランダムにゲリラ的に発生し続け、これは途切れることがありません。
 したがって侵略軍の衝撃力が衰えて停止したところで侵略者側が勝利条件を達成していなければ、事実上のアメリカの勝利となります。侵略者側の勝利条件は全部で30あるアメリカの都市を3者合計で18個ターン終了時に確保することです。
 このターン終了時というのも曲者で、最後がアメリカのプレイヤーターンであるため、思わぬところにゲリラ的に出現してきたアメリカ軍による奪回作戦というのがあるため、侵略者側の攻撃で18を確保しても終わらないこともあります。
 また、アメリカが敗北した後、最後の1ターンをプレイし、その後で侵略者同士は戦果(都市、資源エリア、アメリカのレーザーを破壊など)を比較し、もっとも大きな戦果を挙げた一人だけが勝利します。侵略者同士は味方ではなく、ゲーム中終始交戦可能です。そのため、アメリカを倒せるという目算が立つ辺りから侵略者同士が接するところでは微妙な空気が漂います。
 通常の移動/攻撃型のゲームシーケンスと少し違ってクセがあるのは、準備移動である第一移動では基本となる歩兵の移動力がゼロであり、また移動力のある機動ユニットも敵の支配下エリアには(たとえそこに敵がいなくても)入れないことです。ですから、陸上ユニットにとっては第一移動でできることは機動ユニットを攻撃対象に隣接させる準備だけなのです。この例外がヘリコプターで、これだけが敵地に着陸でき、しかも移動力が2あるので隣接する敵を越えてその背後に着陸して退路を経つことができます。
 また、移動力が4ある爆撃機は敵地を占領はできませんが、遠方へ支援に赴き、そして第2移動で帰還してくることができます。
 こうしたクセがあるので、多少、慣れて使いこなすのにはコツが要るような気がします。
 また、ユニットごとに振るダイスが異なっており歩兵や装甲車は6面体、戦車とヘリは8面体、爆撃機とレーザーは10面体になっています。一方、戦闘結果判定は、ユニットに関わらず原則として5以上を出すと相手に1ダメージ与えられるという「大きい目、出ろ」システムですので、振れる面数が大きいものほど単純に強力になっています。
 大雑把そうなシステムに見えますが細かいところで良くできていると思うのは、戦闘のときに兵科ごとに手順が細分化されていて、どの兵科で攻撃したときには相手ユニットのどの兵科にダメージを与えられるかが規定されていることです。
 これによって爆撃機がいきなり歩兵に撃墜されたりするというようなアンリアルなことは回避されています。
 また、複合兵科効果が盛り込まれていたりする辺り、ゲームシステムが「インベージョンアメリカ」の頃よりも進化していることを感じさせてくれます。
 ゲームは、侵略軍が各方面からどんどん侵攻してくる中、アメリカが5大湖周辺で最後の防衛線を展開しつつ、一方侵略軍の背後でパルチザン活動をして都市の奪回も開始するという流れになることでしょう。
 侵略軍は着実に侵食しているでしょうが、その一方でアメリカのレーザーによって進行の弾頭役である爆撃機やヘリを打ち落とされ、また背後で沸いてくるパルチザンには手を焼いていることでしょう。このパルチザンユニットは歩兵扱いなのですが、単独で展開していると6面体ではなく8面体を振ることができるという厄介者です。この辺りはゲリラ戦の手強さが再現されています。
 アメリカの増援がカードで規定されているため、このアメリカの抵抗活動がどこでどんな部隊で行われるかでゲームは毎ターン、ドラマが生まれるようになっています。さらに、アメリカが都市を奪回すると追加の増援カードを引くのでドラマがドラマを呼ぶこともあります。ゲームは最後まで白熱することでしょう。