ロードオブザリング:サウロン
Lord of the Rings : Sauron / Sophisticated Games
ショートコメント
●クニッツアの新機軸協力プレイ型ゲームに、究極の敵がついに登場
●フェロウシップたちの行く手を阻むサウロンの存在はゲームをどう変えるのか?
Ultimate enemy finally appears on a innovative cooperation game designed by Knitzia.
How can Sauron change this innovative game by facing against the fellowships.
published designed players time
2002 Reiner Knizia 4-6 90+ minutes
 その代わりに、各ホビットの手番の開始時に限定的な影響力を及ぼすことができます。
 また、ホビットプレイヤーが従来のルールであればダイスを振るように指示されたときには、フルに影響力を及ぼすことができます。いずれの場合も手番のホビットプレイヤーは「サウロン」と囁いてサウロンプレイヤーを呼び出すことになります。
 二番目のカードがサウロンプレイヤーの主要なプレイカードとなるサウロンカードの一例です。
 サウロンカードには、複数のアイコンが書かれています。限定的な影響を及ぼすときには、ホビットプレイヤー側がこれらのアイコンから1個だけを選んで効果を受けます。フルに影響するときには全てのアイコンの効果を受けます。
 このことを踏まえた上でサウロンプレイヤーはどのタイミングで手持ちのどのサウロンカードからプレイしていくかを決定することになります。これによってゲームの進行に従ってどのホビットがどのような影響を受けていくかは、サウロン、ホビットたちの双方の思惑と駆け引きによって変化していきます。
 ちなみに、カードの例のアイコンの上のものは新たに導入されたブラックライダーのアイコンです。ブラックライダーはフィギュアとして用意されていて、各シナリオボードごとにトラックのサウロン側の端からスタートして、ホビットたちのいるマスまで進んできて、そこでターンしてサウロンの元へ戻っていきます。ブラックライダーがサウロン側の端まで戻ってしまうとサウロン側の勝ちになります。
 その次のカードはナズガルカードです。これは非常に強力なイベントカードです。プレイ開始時に2枚配られ、以後、シナリオボードが進むごとに新しいものが1枚ずつ補充されていきます。
 これを潜在的な圧力として使うか、積極的に投入して直接攻撃していくかは、カードの性質とサウロンの考え方次第ですが、このカードによってフェローシップにとって一番恐れるべき要素が、サウロンコマの接近なのか、シナリオボードでのタイムアウトなのか、ブラックライダーの偵察なのかが変わってきて展開が異なってきます。
 ここまでフェローシップ側に不利な話しばかりが並びましたが、救済策も打たれています。
 キャラクターカードが新たに1枚ずつ加わり、1回使い捨てではありますが各自に新しい能力が付与されました。4番目のカードがその一例で、ブラックライダーの移動を止めることができるというメリーの能力です。
 また、最初の3つのシナリオボードのサブのアクティビティトラックに新たにリソースチップが置かれます。これを取ることでリソースカードが得られ、これがホビットたちを助けてくれます。最後のカードはその一例で、ガンダルフの指輪、ナーリアです。
サウロン、立ちはだかる!

 「ロードオブザリングス」は、クニッツアのデザインによる新機軸の指輪物語ゲームとして成功しました。
 このゲームには当初から二つの拡張キットが予定されており、シリーズ最後の登場となったのがこの「サウロン」です。
 「ロードオブザリングス」の新機軸は、プレイヤー全員がフェローシップのホビットたちの役割を演じていて、カードやタイルで表現される敵やタイムリミットと戦いながら共通の目的達成を目指しているということでした。最初の拡張キット「友と敵」でも、この構図は基本的には完全に維持されていました。
 しかし、この「サウロン」ではタイトルの通り、サウロンの存在がゲームに登場し、新たに一人のプレイヤーがサウロンの役割を担って他のホビットを演じるプレイヤーたちの前に究極の敵として立ちはだかります。
 これは決定的な違いであり、ゲームの雰囲気をいくつかの点で大きく変えています。
 このゲームのサウロンは、RPGでのゲームマスターのような強力な権限を持っているわけではなく、きっちり規定されたボードゲームのルールの中でプレイして参加者の一人として勝敗を競います。ただ、一人だけ他のプレイヤーと目的が決定的に対立しているだけです。
 フェロウシッププレイヤー側から見ると、これまでのランダムなゲームシステムという敵よりも歯応えのある、そして戦い甲斐のある敵が登場したことになります。このため、フェローシッププレヤーたちの団結は今までになく強まり、足を引っ張り合うより、サウロンを前に一歩でも前進しようという機運が盛り上がったように思います。
ファイナル・コメント
 ゲームの仕組について、簡単ですが大体の説明はしました。
 冒頭にも書いた通り、この拡張キットは最初から構想にあったようで、本体と異質な要素を持ち込むものである割には上手く整合してはまっています。
 実際のプレイに与える影響は前半で書いた通り、これまでのランダムなゲームシステムに対して協力するというプレイから、明確な敵のいるゲームに変わったということに尽きます。
 不思議なものでランダムなゲームシステムを相手にして協力しろと言われても、意外に協力マインドは高まらないもので、自分だけ助かろうというプレイヤーが結構いたりします。
 ところが、サウロンがいるとそれだけで協力姿勢は急に強まり、最善を尽くすためのディスカッションが真摯に戦わされるのです。

 そんな状況の中で他のプレイヤーが懸命の協力をする中、一人で全員を敵に回して戦うサウロンですが、そんな孤立した状況でも十分に満足がいくような出番の数と、自身の選択によるホビットたちへの攻撃が可能になっています。そして、十分に強力であり、孤立していても辛く感じることはないでしょう。
 わたしは実際にサウロンをプレイしてみましたが、小賢しいホビットどもの談合を嘲笑うごとく一人一人始末していくのは、結構、病み付きになってしまいそうです。

 本体の良さを生かしながら新しいテイスト、新しいムードを作り出しており、良い拡張キットだと思います。本体を気に入った方なら是非とも一度は挑戦してみて欲しいです。
関連ゲーム
ロードオブザリング
●ロードオブザリング:友と敵
指輪物語:コンフロンテーション
●指輪物語:デュエル
●指輪物語:カードゲーム
ウォーオブザリング
 新しく加わった主要なカードの種類を説明しながら、ゲームシステムの中でのサウロンの役割を俯瞰していきましょう。
 いちばん左はサウロンプレイヤーに配られるルールリマインダーです。サウロンが活性化するタイミングと、そのときにできることが書いてあります。
 サウロンには他のプレイヤーのような意味での手番はありません。