指輪物語
Lord of the Ring / Hasbro-Parker

一言で言えば‥‥

20世紀を代表するファンタジー「指輪物語」を見事にゲーム化

A級の題材をA級デザイナーが見事に仕上げたA級ファンタジーゲーム

こんなゲーマーにお薦めしたい

原作「指輪物語」のファンはもちろん、これから「指輪」を読もうという方にも

最近のクニッツアはどうもと思っていた方に改めて彼の才能を

プレイ人数 3〜5人 (1、2人)
プレイ時間 1〜2時間
ルール難度 ファミリーゲーム
デザイナー ライナー・クニッツア
入手状況 2001年現在発売中

指輪の物語を描くシステム
指輪物語
「指輪物語」の原作については、いまさら紹介するまでもないかも知れません。20世紀を代表するファンタジーであり、世界中で広く読まれているばかりでなく、他のファンタジー作品にも多大な影響を今もなお与えつつある存在です。

「指輪物語」がゲーム化されるのは、これまた初めてのことではありません。
おそらく過去の作品の中でもっとも重要と思われるものは、SPIの「War of the Ring」ではないかと思います。この作品は、指輪物語のキャラクターの冒険から指輪戦争までを描いた対戦ゲームでした。
原作の記述から正確に起こした美麗なマップと、登場するガジェットを網羅した精密さで、登場以来20年あまり「指輪物語」のゲームの決定版の地位を保っていました。

そんな状況に新たな展開をもたらしたのが、ドイツファミリーゲーム界の鬼才であるクニッツアです。クニッツアのこの新作では、プレイヤーはフェロウシップの登場人物たちの誰かになります。誰もサウロン側にはならないのです。そして、迫り来るサウロンを表現したゲームシステムを相手に、プレイヤーたちは指輪を破壊する旅を急ぐのです。
このシステムは、かつてスターウォーズのゲームの中でも人気を博したウェストエンド社の「エスケープフロムデススター」と良く似ています。デススター要塞からの脱出のためにゲームシステムと戦うプレイヤーたちのゲームです。基本的な枠組はそっくりそのままと言って良いでしょう。
ただし、鬼才クニッツアは、基本的なアイデアは同じながらも抜群のセンスで、「Lord of the Ring」をシンプルで、それでいて十分にガジェットを持ち、ジレンマの楽しい、適切なチャレンジ度のゲームに仕上げています。

おそらくゲームシステムを相手に戦う多人数チームプレイのゲーム(上述した「エスケープフロムザデススター」の他には、SPIの「タイムトリッパー」や「チタデルオブブラッド」などに原型がみられます)の一つの進化のエポックと言って良いのではないでしょうか?

もしかすると本作品をキッカケに、同じようなゲームがしばらく流行するかも知れません。

物語の具体的な手順
指輪物語のプレイ
指輪物語は、カードを使用しながら進むマルチトラックのスゴロクともいうべき構造のゲームです。

左の画像が実際にゲームセットを広げたところです。上の方の横に細長いボードが旅の全行程を表したマップです。いちばん左側に白い円錐が立っていますが、これが徐々に右に移動することで旅が進んでいきます。
新しい場所に入ると、その場所の指示に従います。旅の中には4カ所の難所があります。これらの場所では特に重要な対決が起こり、そのためシナリオボードに移ってプレイします。
ボードの下側2/3が最初のシナリオ、モリアのボードになっています。
シナリオボードはシナリオごとに異なるものが用意されていて、後のものほど険しくなっています。シナリオボードに移ると、プレイヤーはマルチトラックのスゴロクを進んで行くことになります。このとき、プレイヤーは手番にランダムタイルを1枚引き、その指示に従います。その後、カードをプレイして任意のトラックを進んでいきます。
マルチトラックと書きましたが、モリアのボードの中央下側に3つの円錐が立っているのがわかるでしょうか? これらがモリアにある3つのトラックの出発位置です。タイルやカードで該当するトラックのマークが出ると、そのトラックを進むことになります。マルチトラックの内の一つがメイントラックになっていて、これを走破することでシナリオをクリアできます。トラックには、戦闘・旅程・機転・友情の4つがあります。モリアではサウロンの魔物と戦うことが主眼なので戦闘のトラックがメインになっています。
メイン以外のトラックを進むことで、プレイヤーはシナリオで積むべき経験を得ることができます。メイントラックだけを進めばシナリオはクリアできますが、こうした経験を積まずに進むとサウロンの悪の力に誘い込まれていくことになります。
では全部のトラックをクリアすれば良いかといういうと、今度は時間の制約があります。ランダムタイルの中に時間が過ぎたことを示す日時計のマークがあるのですが、これが出るとシナリオに用意されたイベントが順に発生していきます。モリアのボードの左側がイベントが順に並んだ表になっています。イベントは大抵はあまり良くないので、時間を無駄にせずにシナリオをクリアした方が良いでしょう。
いちばん手元側にプレイヤーのキャラ、フロド、サム、ピピンのカードと、その手札があります。プレイヤーは自分の手番に手札を使ってトラックを進むほかに、イベントなどの指示に対抗するためにも手札を使います。プレイヤーごとに特殊能力が異なっているため、誰がどういう役割分担をするのかが重要です。また、さきほど言った経験はキャラごとに判定するので、全員が上手にさまざまな経験を積んでいくのが良いのですが、そのためにもチームプレイが重要になります。

ここらへんのゲームシステムのシンプルにして十分にガジェットとジレンマを含んでいるあたりは、さすがは鬼才クニッツアというよりほかありません。彼のゲームデザインの中でも、この作品はエポックメイキングなのではないかと思います。



指輪物語にはこれと言った難点はなさそう

「指輪物語」は,傑作です。原作のモチーフが上手に生きており、これまでの対戦型の指輪物語ゲームに対して、チームプレイ冒険型の指輪物語ゲームを提案しました。そして、その提案はクニッツアならではの絶妙のバランスのデザインで仕上げられています。

プレイタイムも1−2時間で決着がつき、対戦相手のゲームシステム(サウロン)の強さもほど良いように思います。おそらく多くのプレイヤーにとっては、初見では痛い目に遭うけれども、経験を積んでチームワークが取れてくるとクリアできるような設定加減だと思います。
「チェインソーウォリアー」が好きで「もっと虐めて欲しい」プレイヤーや、チームプレイが上手くなくてちっともクリアできないチーム向けの難度の調節も用意されています。

英語版は大手のハスブローから出たので入手状況も良いでしょう。日本ではドイツ語版が訳付きで数カ所で販売されている模様です。

ということでこのゲームにはこれと言った難点は見あたりません。まさにA級ゲームと言いましょうか。
そういう意味では、このホームページの取り扱い範囲ではないかも知れません。それが強いて言えば難点でしょうか‥‥?



関連ゲーム / 類似ゲーム

SPIのウォーオブザリング、ICEのリドルオブザリングを始め、このほかにもTSRなどからも指輪物語のゲームは出ていたと思います。最近の新作では指輪物語コンフロンテーションが面白いです。
全体のキャンペーンの他に指輪戦争の個々の戦いのものまで含めると、さらに増えるでしょう。

ゲームシステム的には、ウェストエンドのエスケープ フロム ザ デススターがいちばん近いでしょう。チームでなくソリテアのものとしてはゲームズワークショップの「チェインソーウォリアー」を一例として挙げておきます。完成度としては「指輪物語」の方が進化形だと思います。

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