ウィロー
The Willow Game / TOR books
ショートコメント
●ルーカス・ファンタジー「ウィロー」を、コスティキャンとゴールドバーグがボードゲームに!
●善と悪の陣営が予言された赤子を争って繰り広げる波瀾万丈のシーソーゲーム

Lucus's Fantasy "Willow" is designed as a boardgame by Costikyan and Goldberg.
Waving Seesaw game in which Good and Evil fight around the foretold child.
published designed players time
1988 Greg Costikyan 2-6 2-4 hours
 「ウィロー」は、鬼才コスティキャンが原作映画を上手にツボを抑えてデザインしたボードゲームです。
 プレイヤーは映画の主要登場人物の一人になります。悪側は、ジェネラル・ケールと、プリンセス・ソーシャです。善側は、ウィロー、マド・マーティガン、ブラウニーコンビのフランジーンとルール、そしてアイアーク・ソウベアーです。
 悪の女王バヴモーダは、居城ノックマールで赤子の到着を待つ強大な存在としてゲームの盤端で待ち構えています。もう一方の善の魔法使いフィン・ラツィエルは盤上に点在するパワープレイスのどこかにポッサムに変身させられて善のキャラの到着を待ちわびる伏せられたカードとして存在します。
 ゲームは映画のストーリーの要点を上手に抑えて展開するようになっています。悪のキャラは二人しかいませんが、非常に強力です。善のキャラを探し回り、見つけると襲い掛かって赤子を連れ去ろうとします。
 これに対して善のキャラは、最初は脆弱な存在です。しかし、4人と人数が多く、その内の誰が赤子を連れているかわからないことが利点になっています。また、悪のキャラは善のキャラを捜索で発見しないと攻撃できないというルールもあります。
 善のキャラは赤子をリレーして連れ回りながら、パワープレイス(ストーリー上も重要だったいくつかの場所)を訪れて武器や仲間を増やして力を付けていくのです。
 その中で特に重要なエピソードが二つあります。そのいずれもがゲームのシステムの中に上手に盛り込まれています。
 まず、さきほども紹介したポッサムに変身させられてしまっているフィン・ラツィエルを発見して彼女を人間に戻すというエピソードがあります。魔法は極めて強力なので、彼女を戦力に復帰させることは非常に重要です。でも、ポッサムのままの彼女は魔法を使えません。そのため、見習中のウィローや、頼りにならないブラウニーたちでなんとか変身呪文を実現しなければなりません。
 もう一つのエピソードは、悪のプリンセス・ソーシャと、マド・マーティガンが恋に落ちるというエピソードです。ブラウニーたちの惚れ薬が重要な役目を果たすのですが、これもゲームで再現されています。ゲーム開始時にブラウニーが持っている惚れ薬、そしてマーティガンとソーシャの三者が同じ場所に集まると、彼と彼女は恋に落ちるのです。
 このイベントで悪のキャラは一人になり、善のキャラが5人になってしまうのですから、これまたゲームの流れを決定的に変えることになります。
 この他にも変身の呪文や、封印されたティア・アスリーンなど、ストーリー中の重要なガジェットは漏れなくカバーされています。
 ボード上を走り回るだけのスゴロクと思いきや、上手にストーリーが展開されていくあたり、さすがはコスティキャンと言って良いと思います。ゲームデザインの妙を見る意味でも、興味深い作品でしょう。
ルーカスの作ったオリジナル・ファンタジー「ウィロー」

 「スターウォーズ」の製作者であるジョージ・ルーカスが作ったオリジナル・ファンタジー「ウィロー」は、明快でわかりやすい良質のファンタジーストーリーでした。
 悪の魔女、バヴモーダが権勢を奮い、次々に抵抗する国々を制圧していた時代が舞台になります。そんなとき、このバヴモーダの支配を打ち破るべく運命付けられた女の子が生まれると予言されたのです。
 予言を聞いたバヴモーダは、国中の妊婦を借り集め生まれてくる子供の腕にあるはずの印を捜し求めました。首尾よく子供を見つけることができたのですが、子供は儀式で葬られる前に助けられ川に流されてしまいました。
 その赤ん坊を下流で拾ったのが、ネルウィン族(小さな人)の農夫で魔法を多少よくするウィロー・ウフグッドでした。
 ウィローは、赤ん坊をダイキーニ(大きな人)に返すべく村を友人たちと旅立ちました。
ネガティブ・コメント

 ストーリーを上手にゲームシステムの中に取り込んでいるという点は、さすが鬼才コスティキャンと唸らせるのですが問題もあるゲームです。
 問題はデベロップメントでのバランス仕上げがきちんとされていないように思える点です。
 ゲームの中心はカードなのですが、一部のカードは凶悪なまでに強く、逆にあきらかにハズレのカードも少なくありません。このため、「引き」の要素が非常に強くなっています。ですから、作戦を練って勝ちを目指していくゲームではないように思います。
 システム的には相互作用があって面白いので、もっとバランスを取って競技性を高く仕上げることもできたのではないかと思うのですが、そうなっていません。惜しいように思います。
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