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ザンス ボードゲーム
Xanth Boardgame / Mayfair Games

一言で言えば‥‥

ピアズアンソニー原作のファンタジー,ザンスシリーズの双六

洒落と駄洒落のザンスワールドで野次北道中を楽しもう

こんなゲーマーにお薦めしたい

ザンスシリーズ大好きで,すべてのディティールがわかる方に

英語のギャグを原文で理解して読める方に

プレイ人数 3−6人 (1人、2人)
プレイ時間 1−4時間
ルール難度 ルール自体は,ファンタジー双六
デザイナー マイク・ナイスタル
入手状況 絶版,原作の人気が高いため入手困難

魔法の国ザンスシリーズとは

魔法の国ザンスシリーズ
「魔法の国ザンス」は,ピアズアンソニー原作の長大なファンタジーシリーズです。

その第1作「カメレオンの呪文」は,格調の高さでは当時定評のあった英国幻想文学賞を受賞しました。「ザンス」は,非常に斜に構えた独特のファンタジーです。通俗的なファンタジーに対する皮肉とも取れる奇妙な設定が特徴です。

たとえば,ザンスでは誰もが魔法を持っています。と言っても,どの魔法も他愛のない代物ばかりで,通俗的なファンタジーに出てくる魔法使いのイメージとは程遠いものばかりです。ちょっとした奇術のようなものがほとんどなのです。ところが,第1巻(そして第2巻)の主人公であるビンクは魔法を持っていないために,ザンスを追放されてしまいます。第1巻は,ビンクが自分の魔法の能力を見出して故郷に帰る物語です。

ネタバレになるので書きませんが,ビンクの隠された魔法の能力というのが,いかにもザンスシリーズを象徴しています。とても皮肉な能力なのです。

ザンスのもう一つの特徴は,洒落‥‥,と言うより駄洒落にあります。作品全体が既成の通俗ファンタジーを風刺しているとするならば,文体もまたしかりです。こちらがどうしようかと思ってしまうような駄洒落が少なからず登場し,しかもその駄洒落から生じる連想をファンタジーの道具立てとして取りこんでしまったりしています。

ともあれ,このひねたファンタジーは大変な人気作品となりました。当初の予定を大幅に越え,大長編シリーズとして,今も継続中です。第3作以降は主人公が世代交代して,さらに新たな冒険が描かれていきます。近年では,第2部に突入,さらに本国では第3部に入ったとも聞きます。

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ザンスボードゲームとは
ザンスボードゲームのボックス
ザンスボードゲームは,この人気シリーズ「魔法の国ザンス」をボードゲーム化したものです。

基本的に「魔法の国ザンス」のストーリーは,主人公がクエストを達成するというものです。ザンスボードゲームは,ストーリーを踏襲して,主人公が連れとともにクエストに出るというスゴロクスタイルになっています。

基本的にスゴロクですので,ゲームルールは難しくありません。各自は自分が配られた主人公と相棒を持ち,別に配られたクエストカードの指示に従って,特定の出発地から特定の目的地へと進むだけです。

と言っても,それだけではゲームになりません。主人公たちは,その旅路を妨げる様々な奇奇怪怪な出来事,生き物に遭遇します。ゲーム上は,これは他のプレイヤーから提示される遭遇カードとして現れてきます。

ここで面白いのは,このゲームのカードはすべて1枚2役になっているということです。多くは他のプレイヤーに対する妨害カードとしての機能と,自分のプレイに対する補助カードとしての機能を持っています。このため,どのカードで他者を妨害し,どのカードを自分のために使っていくかが悩ましいところです。

初歩のゲームでは,1つのクエストだけを達成すれば良いことになっています。けれども,ザンスをもっと満喫したければクエストの達成数を2つ以上に設定しても構いません。

奇妙なものに満ちたザンスという世界
ザンスボードゲームのマップ
右側の写真がゲームボードです。原色の賑やかなファンタジー双六らしいアートワークです。

ザンスのいかにもザンスらしいところを,少しだけ紹介しましょう。左下の海のエリアにCのマークのついた丸があります。これは,「Cエリア」です。つまり,「シー(SEA)エリア」です‥‥。

エリアは3つに分類されていて,シーエリアとインランドエリアとCOASTLY(海岸)エリアとなっています。COASTLYエリアでは,シーエリアの危険と,インランドエリアの危険の両方が発生します。このためプレイヤーにとって,COASTLYエリアは,もっともCOSTLY(苦労が多い)なエリアです。

しょうもないので,このへんで止めますが,ザンスでは一事が万事,この調子です。

駄洒落ばかりでなく,というか駄洒落から派生したというか,なにはともあれ様々な奇怪なファンタジーガジェットに満ち溢れていて,見かけよりも旅のしがいがあります。途中で入手できるアイテムや,旅の道連れもあり,必ずしも苦難ばかりが待ちうけているわけでもありません。

また,このボードゲームの製作陣は,かなりのファンと見えて,ゲーム発売時点での小説の進行の多くをファジェットとして取り入れたようです。生憎と,わたし自身がザンスを初期作品しか読んでいないので,ここらへんの話しは他のプレイヤーからの伝聞ですが。

なにはともあれ,ギャグとガジェットに満ちたザンスワールドを,そのままボードゲームにすることに成功した作品ではないかと思います。

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ザンス ボードゲームの難点

ザンスボードゲームには,かなり大きな難点があります。それは,プレイが難しいことです。

冒頭にも書きましたが,基本的には双六ですのでルールは難しくありません。しかし,その一方で,ファンタジーならではの掟破りなガジェットが盛り沢山なゲームです。そのため,細部には様々な疑問点が生じます。ところが,困ったことにルールブックはそんなことには頓着していません。

それどころかルールブック自体がザンス調の駄洒落まじりで書かれています。「コンバット:有翼の有袋哺乳類」などと平気で書いてあります。もちろん「ウォンバット」の間違いです‥‥。

そんな訳で,ルールやガジェットはクリアさとは対極にある仕上がりです。ですから,ノリと,原作の元題材からの類推で合議でどんどん処理していけるようでないと,プレイ自体が頓挫してしまいます。

あと当然ですが日本語版ではありませんので記述は英語です。しかも1枚のカードが2役を担っているため記述が多めです。それに加えて往々にして駄洒落が入っています。そんな訳で,読むのは結構,ホネです。

このため,プレイはメンバーを極端に選びます。わたしの経験では,かなりの強者を集めたつもりでも,結局のところいちばん初歩の1クエストゲームしか終わったことがありません。日本人ゲーマーにとっては,相当に手強いゲームと言えるでしょう。

関連ゲーム / 類似ゲーム

ファンタジー双六で,ガジェットが豊富で,主人公のクエストストーリーであるという点では,GW社の傑作「タリスマン」が非常に近いでしょう。
小説原作ではなく映画原作ですが、同じようにファンタジーすごろくとして妙味のある作品として「ウィロー」があります。

各自が自分のキャラクターの冒険を担当する一方で,他のプレイヤーのキャラクターに対する敵役を演じるという構造は,SPI社の
「火星の大元帥ジョンカーター」に通じるものがあります。

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