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ワールドキラー
World Killer / SPI / Ares #1


一言で言えば‥‥

SFゲーム史に残る専門誌「Ares」の創刊号付録ゲーム

生体融合操縦型宇宙戦闘機隊が,宇宙要塞の守る惑星を強襲

こんなゲーマーにお薦めしたい

シンプルな3D宇宙戦闘ゲームとして

「Ares」創刊号のゲームという歴史的記念碑として

プレイ人数 2人
プレイ時間 30−90分
ルール難度 初級ウォーゲーム,ただし3D戦術級
デザイナー レドモンド サイモンセン
入手状況 海外ゲームショップに当たれば可能性あり

SFゲーム専門誌「Ares」の創刊号
ワールドキラーの広告ページ
70年代から80年代に掛けてシミュレーションゲーム界の巨人であったSPI。

そのSPIが,1980年に,SFゲームの専門誌を創刊しました。これが,「Ares」誌であり,その創刊号が「ワールドキラー」でした。

この創刊号を見ると,当時の右肩上がりのゲーム界の状況,その一部としてこれまた活況であったSFゲームシーンというのが甦ってきます。フィルムレビューのコーナーでは,「スタートレック」が取り上げられています。これを読むと,「スタートレック」が最初に登場した時には左程の注目を受けず,シリーズを断続的に重ねていくに連れ評価が高まり,人気も出てきたことがわかります。

ゲームそのものの記事としては,「銀河のゲーム」という当時の時点で入手可能だったSFゲームを広くレビューしたものがあります。名前を見ると,今でも入手可能なものは数えるほどしかなく,ゲームという存在が一時のものであることをひしひしと感じさせてくれます。

わたしのように往年のB級SFゲームに思い入れのある人間にとっては素晴らしい記事です。もしかすると,この創刊号の今となっての最大の価値は,この記事にあるかも知れません。

SPIの当時の時点でのSFゲームのラインナップ広告も巻頭にあり,これも今となって見ると貴重な資料です。

そういった意味では,付録ゲームよりも,むしろ誌面にB級SFゲームの歴史を語る重みがあるかも知れません。往時を偲びたい方,当時に興味のある方なら入手を試みてみられてはいかがでしょうか。

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ワールドキラーの設定
ワールドキラーの表紙
「ワールドキラー」は,ワールドキラーやドミネーターという襲撃艇を指揮する侵入者プレイヤーと,Vダスターや,スペーストレイン3という防衛艇や,アウトライダーという軌道要塞を指揮する惑星防衛プレイヤーが対戦する3次元宇宙戦闘ゲームです。

リアルタイムで読んでいたわけではないので断言はできないのですが,この設定はこのゲームのオリジナルと思われます。雑誌に2ページのイラスト中心のストーリーボードが載っています。

表紙のイラストにもある通り,操縦者はハードウェアとリンクした状態で操縦を行うようです。ただ,リンクしているにも関わらず,操縦者の周囲に様々なスイッチや表示灯が散りばめられているあたりが,当時の「未来イメージ」を偲ばせます。

ワールドキラーのゲームシステム

「ワールドキラー」は,3次元宇宙空間戦闘のゲームです。SPIは,この題材が好きだったのか,いくつものゲームでこうした3次元戦闘システムを取り入れています。このゲームは,その中でもシンプルに3次元戦闘だけをプレイするものです。

マップは碁盤目に区切られており,そのそれぞれのマスが四重の四角になっています。この四重の四角のどこに配置するかで,そのマスの中での高さを表す仕組みになっています。このゲームでは,高さは+3から−3までの7階層しかないので,この表示の仕方はプレイアビリティから見て適当です。ここらへんは,SPIの誇るグラフィックデザイナーであるサイモンセンの面目躍如というところでしょう。
ワールドキラーの戦闘
各艦艇は1ターンに原則として,一つの行動しかできません。移動,攻撃,修理のいずれかです。

移動ルールは単純で各艦艇のジャンプ性能値の範囲で立体空間をジャンプします。運動性能や,慣性システムをまったく考慮せず,単に今いるキューブと,移動先のキューブの間の距離とジャンプ性能値の比較だけで決まります。距離はピタゴラスの定理で算出するのですが,数表にまとめられています。

言ってしまえば味も素っ気もないゲームシステムなのですが,それでもゲームとして成立しており,プレイするとちゃんと機能します。そのための工夫は,両軍の艦艇の性能の味付けと,状況設定にあります。侵入者側の艦艇は,敵の惑星を攻撃して撃破しなければならないという使命を負っています。けれども,移動と攻撃の一方しか原則としてできないシステムだと最初に侵入していったときに敵の防衛射撃をまず浴びてしまうことになり,ゲームとしては苦しくなってしまいます。ところが,このゲームでは侵入者側の艦艇に射程距離の優越を与えています。これにより侵入者は少し離れた位置から先制できるようになっており,攻撃のモーティベーションが生まれるようになっています。

反対に惑星防衛側の艦艇は,射程距離がないので苦しいのですが,惑星周辺を守る要塞だけは一定の射程を有していて,アウトレンジ攻撃で惑星を叩かれてしまわないようになっています。また,艦艇は友軍艦艇/要塞と隣接することで共同防衛効果が出るようになっていて,敵のアウトレンジ攻撃に成す術もなくやられたりはしないようになっています。

こうした状況設定と,それに見合った戦力の設定によって,味も素っ気もないゲームシステムながらも,ちゃんと命を吹き込まれたゲームになっています。

このゲームには,基本シナリオのほかに増援シナリオも用意されています。また,自作シナリオを設定できるように艦艇ユニットが余分に色々と付いています。

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関連ゲーム / 類似ゲーム

3次元宇宙戦闘のゲームとして,ごく近いものとして同じSPIのバトルフリートマーズスターフォースの戦術戦闘ルールがあります。

宇宙空間でのドッグファイトのゲームは空戦ゲームの一種として一時はかなり色々と出ました。スターウォーズや,宇宙戦艦ヤマト,軌道戦士ガンダム,超時空要塞マクロスなどの原作付きゲームも豊富です。そんな中からいくつか挙げておくとすれば,スターウォーズの空戦を題材にしたウェストエンドの
スターウォリアーと,最近になって発売されたジャストプレインウォーゲームのスペースナチス フロム ヘルあたりがプレイアビリティが良く,また今でも手に入る可能性が高いでしょうか。

もっともこうしたSF空戦ものの現在の主流は,ボードゲームではなく,コンピューターゲームかも知れません。実際のコックピットからの眺望を提供し,リアルタイムで決断を迫るSF空戦シミュレーターこそが,宇宙パイロットの興奮を欲するゲーマーへの最良の答えかも知れません。

余談になりますが,宇宙空間でのこうした艦艇戦闘はナンセンスであるという記事が,ほかならぬ「Ares」の創刊号に載っています。ゲームとしては面白いが,技術的に見て将来現実になる可能性が低いというのです。同じ号にわざわざこの記事を持ってくるあたりの逆説的なセンスは独特です。

また,Ares全体についてはAresを覚えていますか?をご参照ください。

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