Casar in Gallia
by Ancient Wars

●アンシェントウォーシリーズとは

 S&Tのアンシェントウォーシリーズは、1991年の「トラヤン」から始まって、「ローマンシビルウォー(1993)」、「カエサルインガリア(1993)」、「ゲルマニア(1995)」と続いた四部作です。そして、昨年2004年に実にシリーズスタートから13年目にして、四部作を統合したルールと、複数のマップにまたがる新シナリオを網羅したボックスセットの拡張キットが発売になりました。

 デザイナーは鬼才ジョセフ・ミランダです。このシリーズもまた彼らしい独創的な切口でデザインされた傑作でした。
 先ず、切口としては、「当時の指揮官の悩み」を再現する視点でデザインをしています。このため、いろいろな要素が当時の指揮官の目に映ったようにプレイされるように考えています。
 典型的なのがマップで、現在の我々の知っている世界地図からは大きく歪んだマップになっています。これは当時の世界観に基づいたデザインをしているためです。
 また、行軍ルールも独特です。道路に沿った行軍は、損耗は生じはするものの比較的精度良く目的地に着きます。これに対して道路や川を利用しないクロスカントリーな移動ではかなりの確率でスキャッターが起こってしまい、目的の場所に着かないことが起こってきます。
 そして、最後がストラテジムマーカーシステムです。プレイヤーは、最高指揮官の能力や地域の支配状況、戦果などによってストラテジムマーカーを得ることができます。マーカーには、軍事、政治、エージェント、さらに個別ゲームごとの特殊なものの4種類があります。
 軍事マーカーを使うことによって、通常はできない強行軍や、インターセプト、戦闘時のイニシアチブ獲得のための修正、部隊の練度向上などができます。
 政治マーカーによっては、部隊の徴集、植民、政治活動などができます。
 エージェントマーカーでは、暗殺と諜報活動ができます。
 プレイを通じてこれらのマーカーを獲得し、さらに獲得したマーカーで様々なアクションを遂行していくのです。
 こうした軍事、政治のアクションベースのゲームシステムが、古代戦で指揮官が要求されたスキルや決断の場面を再現してくれるのです。
 独創的ではありますが、それほど複雑ではなく、部隊密度が非常に低いこともあってプレイアビリティは非常に良いと思います。最初にルールを読み通すのが少し骨ですが、そこを乗り越えれば後は比較的プレイしやすいと思います。



●カエサルインガリア

 「カエサルインガリア」は、BC59年からBC51年までのカエサルのガリア戦記の時期を扱います。
 この4部作のマップは連結できるようになっていますが、ガリアのマップはフランスからスペインさらにイギリス方面をカバーしています。
 シナリオは4つで、最初の1年を描く「ヘルヴェティアの行軍」、BC54年の「ブリタニアへの侵入」、BC52年の「アレシア」、そして全体のキャンペーンとなっています。

 今回、試みにシナリオ1をプレイしてみて、面白ければそのまま継続してキャンペーンができるのでそうしようかと思っていました。
 ところが、実際にプレイするとどうも面白くありません。最大の理由は、カエサルが突出して強く、バーバリアン側には拮抗するような存在がないことです。
 TSR−SPIの「ユリウス・カエサル」のときにも書きましたが、基本的にガリア戦記のシチュエーションの主役はカエサルであり、そのプレイ展開はモグラ叩きです。
 このときに競技用ゲームとして問題になるのは、叩かれるモグラの方のバーバリアンプレイヤーのモティベーションをどう確保するかだと思います。「ユリウス・カエサル」では、カードプレイが重要で、バーバリアン側は多数の手札を持つことができ、これを反乱イベントにセットにして一気に展開することでゲーム全体の中で何度か大きな仕掛けができるようになっています。この楽しみを掌中に秘めつつ、普段は敵地深くに入ってきたローマ軍をゲリラ戦で悩ましつつ、叩かれるのに耐え忍ぶ訳です。
 ところが、この「カエサルインガリア」では、こうした部族の活性化がイベントテーブルなどになっていて基本的にダイスの目次第です。十分に戦力を持ち、十分なストラテジムマーカーを獲得できるカエサル側は、こうしたランダム要素のリスクも考えつつ自分の行動をコントロールできます。しかし、バーバリアンはダイスの目次第でできることが決まってしまい、場合によっては全く打つ手がないこともしばしば起こってしまいそうです。
 このため、ゲームプレイとしてバーバリアン側に長時間のプレイを持続するモティベーションがないように思い、結局、途中、中断となりました。

 プレイアビリティという点では「ユリウス・カエサル」より「カエサルインガリア」の方が優れています。また、連結して大きなパースペクティブが得られるという点でもアンシェントウォーズは嬉しい作品です。
 しかし、ガリア戦記というシチュエーションを競技用ゲームとして練っているという点では、「ユリウス・カエサル」の方がガリア戦記だけの専門ゲームだけあって優れているようです。

BC58 JULIUS CAESARに進む
BC73 Spartacusに遡る