JULIUS CAESAR
BC58-53
TSR-SPI by Richard Berg
ユリウスカエサル
「ユリウスカエサル」は、紀元前58年から53年までのガリア戦記をカエサルの視点から描いた戦略級シミュレーションゲームです。

フルマップ1枚、200ユニットの体裁です。しかし、実際にはマップ上にチャートなどがたっぷり印刷されていてヘクスマップの部分は半分しかありません。また、ユニットは1レギオンが1コマ、1部族が1コマにまとまっていて、一時に活性化してボード上で動くのは数えるほどでしかありません。このため、実際のプレイの印象としてはハーフマップ、100ユニットくらいのゲームの感じです。

ただ、そうは言ってもシステムが非常に独特で、かなりとっつきが悪く、プレイアブルとも言い切れません。
ゲームシステムの特徴は二つあります。
第1の特徴は、少数のユニットのみが機動するため、非フェイズ側のプレイヤーが一定の範囲に入ってきたフェイズ側のユニットに対してインターセプトをできるようになっています。このシステムは、同じバーグの「ドルイド」のシリーズ(ちなみにシリーズの他の作品は「13コロニーズ・イン・リヴォート」、「太平天国の乱:マンチュー」、「サイドショウ」)と類似しています。
第2の特徴は、ガリアの部族を活性化するカードプレイにあります。ガリアの各種族を表すカードが用意されていて、これがガリア、ローマの各プレイヤーにシナリオ指定の枚数配られます。毎ターンさらに1枚ずつ追加して引いて行きます。ガリアは最大12枚まで、ローマは5枚まで、これをキープできます。
部族には状態があって、最初はインアクティブです。どちらかのプレイヤーがカードプレイして活性化すると、そのサイドの同盟部族になります。敵に征服されると服従状態になります。ガリア側で征服された部族は反乱により再びローマに反旗を翻すことがあります。ローマに同盟していてガリア部族に征服された場合は、その支配部族がローマに屈服するとインアクティブに戻ります。ローマ側は5枚までしか部族カードを持てないので、同盟の中で力の弱い部族は政治的服従という手順を経て服従させてしまって手札から外すことができます。ここらへんのカードプレイはゲームテクニカルな部分も含んでいます。


ヘルヴェティアン活性化
今回、最初のシナリオ「アリオヴィスタスとヘルヴェティアン」をプレイしました。ゲームが扱う期間中の最初の2年をプレイします。

ゲームはヘルヴェティイ族が活動化してローマと同盟している部族の領地に侵入したところから始まります。左の図がその場面です。画面の下側はガリア・トランスアルピナで、そこにある大スタックはカエサル率いるローマの5個レギオンです。
第2ターンにヘルヴェティイ族はローマ側のアエヅイ族を包囲します。しかし、この包囲戦が首尾を挙げる前に、第3ターンにカエサル率いるローマ軍が包囲救出に駆けつけました。しかしローマにとって自体は一難去ってなんとやら、今度はアヅアツキ族とリンゴルン族が同時に蜂起します。第4ターンにカエサルは自ら3個レギオンを率いてヘルヴェティイを追撃します。一方、残り半分の勢力をクラッサスに預けリンゴルン族の平定を命じます。
トロサテス、エルサテスの蜂起
第5ターン、ガリアトランスアルピナから北側で忙しくしているローマ軍の虚をついて、南部海岸線でトロサテス、エルサテス族が同時に蜂起しました。かららはローマ軍の守備隊の居るナルボを第6ターンに陥落させてしまいます。
第7ターン、クラッサスを北へ進ませる一方で、カエサルはアクアセクスティア(ガリアトランスアルピナのローマ拠点)へと戻り、新規に2個レギオンを召集します。広いガリアをカヴァーするのに兵力が足りないのです。
第8ターンは秋の最終ターンとなります。冬には新たに部族を活性化できないことから、ローマ軍は手札のスエシオネ、トレヴェリ、メディオマトリキ族を活性化してローマ同盟に加えて得点確保に出ます。第9ターンは冬のターンです。行動に厳しい制約が課されるため両軍とも街に籠もって春を待ちます。
北部の反乱
第10ターン、北部のヴェロウアチ、アムビアニ、カルヌテスが一斉蜂起してローマ側のスエシオネ族を包囲。ローマ側は戦力にならないメディオマトリキ族を政治征服し、アクアセクスティアの兵力を北と西へと差し向けた。
第11ターンにガリアは有力なパリシイ族も北部反乱に参戦、さらに第12ターンにはスエシオネを最終的に制圧した。しかし、その直後にクラッサスが駆けつけ、諸部族連合を逆包囲。このころ西へ向かっていたカエサルもトロサテス族を征服する。
これでガリアの北と西に上がった火の手は消し止められたかに見えた。しかし、第13ターンには今度は強力なアルヴェルニ族がローマ軍が北と西へ出払ったのを見計らって蜂起、なんとアクアセクスティアエへと進軍する。
さらに第14ターンにはラインの東からゲルマンがついにガリアへと侵入。こうした強力な部族の本拠への進軍を受けてローマ軍は一斉にアクアセクスティアエへの帰還を開始する。
アクアセクスティアエの危機
しかし、カエサルの努力も及ばず第15ターンにはアクアセクスティアエは陥落。これを見てゲルマンは別の目標を求め北へ転進。クラッサスはこれと距離を取って睨み合う。
第16ターンにカエサルはアクアセクスティアエに籠もるアルヴェルニ族を包囲。
第17ターン、ゲルマン族はトレヴェリ族を制圧し、ここで冬を越すことを決意する。一方、冬越えの拠点のないカエサルは、アクアセクスティアエの包囲を冬季も続行することを決意。
最終、冬の第18ターン、貴重な補給を大量消費しながらもカエサルはアクアセクスティアエの奪回についに成功。
結果としては、1年目にローマ軍は勝利得点1点を獲得したが、2年目には相次ぐ反乱に苦戦を余儀なくされ無得点となり合計1点どまり。勝利条件は2点なので、ガリア側の辛勝と判定された。




今回、2年間のシナリオのプレイに、のべ9時間ほどかかってしまいました。実際にはルールブックを読み直している時間が非常に長く、ルールに習熟すれば、きっと半分の時間でプレイ出来るだろうと思いました。そういう意味ではルールブックに、1年=2時間と書いてあるのは、そうおかしくない水準でしょう。
ただ、プレイでルールを実際に運用してみると、項目をまたがって全体の関係を理解しなければならないことが多く、結構大変です。特にローマ側はどういう段取りを踏んで部族を征服し、そのカードをデックから取り除けるのか理解しておく必要があります。敵の部族は単純に征服すれば良いのですが、同盟部族は政治的に制圧するとカードがデックに戻ることに注意が必要です。

また制圧した部族を勝利得点に計上するためには、守備隊ゾーンを形成する必要があります。勝利得点判定は冬に行われ、この時点ではレギオンなどでゾーンを広げることになります。春になると、この場所に守備隊ユニットを配置できるので次の年にはレギオンはさらに転進していくことができます。とは言えガリアの反乱は、この守備隊を狙って蜂起してくるわけですが。

勝利得点の判定基準がローマ側の視点で、ローマの都合でしかされません。その中でもローマ全体ではなく、カエサルの視点でされていることがゲームタイトルにも象徴されています。したがって、カエサルは元老院に借りを作らずにガリアを制圧して凱旋せねばなりません。

基本的なゲームの雰囲気はモグラ叩きです。広いガリアのあちこちで蜂起する諸部族を走り回って叩くのです。ローマレギオンは強力であり、本気になれば大抵の部族は相手になりません。けれども、カエサルの敵は時間とガリアの広さ、そして諸部族の数の多さです。ガリア側はゲリラ戦を展開して広さと部族数を生かして時間を奪っていくことになります。

残念ながら今回のプレイは序盤の2年のみでした。このため、カエサルがラインを越えてゲルマニアに侵入することも、海を渡ってブリタニアへ侵入することもありませんでした。キャンペーンではこうした辺境の地へも進んで行くのでしょうか。
もし機会があればキャンペーンゲームを一度本格的にプレイしてみたいものです。

ルールのとっつきの悪さを別にすれば、最初に書いたとおりハーフマップクラスのゲームとしてプレイは進みます。ですから、プレイ不能なビッグゲームというようなことはありません。
最初に書いたとおり、同じバーグのデザインの「ドルイド」と似たところがあります。ただ、比較すると、「ドルイド」が多少マンガチックな作戦級ゲームだったのに、「ユリウス・カエサル」はもっと渋い機を伺う戦略級ゲームです。いずれもローマ軍とバーバリアンのまったく異質な兵力の激突を描いた古代ローマゲームの傑作と思います。

BC59 Caesar in Gallia
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