スパルタクスの反乱
BC73
コマンド日本語版
スパルタクスの反乱
「スパルタクスの反乱」は、英語版コマンドの15号(1992)の付録ゲームとして発表されました。10年を経て日本語版コマンドに付くのには驚かされました。

ゲームシステム的には、英語版コマンド10号の「アレクサンドロス」から流用しています。プレイアブルで、少し大味なゲームシステムです。

「スパルタクスの反乱」は、題材としては古代史の中でも著名なものの一つでしょう。映画「スパルタカス」と、その名台詞「わたしがスパルタカスだ!」は、古代史ファン、映画ファンの知るところでしょう。

また、スパルタカスの職業である剣闘士についても、ファンタジーなどへの流用も相俟って多くのゲーマーに馴染みのあるところでしょう。

史実については、日本語版コマンド43号の本誌記事を読んでもらえれば良いかと思いますので、今回はゲームについての感想を中心にまとめることにしたいと思います。

左の図がゲーム序盤の図です。スパルタクスが蜂起し、各地で奴隷を解放しながら勢力を拡大してイタリア半島で暴れています。
スパルタクス蜂起す!
このゲームでは、スパルタクスは各エリアでゲーム中に1回ずつ奴隷解放による兵力増強を試みられます。このルールのため、スパルタクスは常に未踏のエリアへと行脚していくことになります。

スパルタクス軍はユニット数が多いのですが、1ユニットは1ないし2ステップしかありません。これに対して、ローマのレギオンは6戦力ないし8戦力あって1ユニットで表されますが1戦力=1ステップとなっており、打たれ強さがまったく違います。ここらへんは、ウェストエンドの「ドルイド」あたりを彷彿とさせます。

また、スパルタクス側は失われたユニットはほとんど補充されません。このため、奴隷解放するエリアが残り少なくなってくるとマンパワーが枯渇します。これに対してローマ側は季節ごとに補充がやってきて、レギオンの損耗は十分に回復できます。

こう書くと圧倒的なローマのタフネスの前にスパルタクスの乱は竜頭蛇尾を運命付けられているかに見えます。これはデザイナーズノートにも書いてありますが、結局のところスパルタクスの乱は鎮圧されるべくして鎮圧されたという見解なのです。
しかし、それではゲームになりませんので、勝利得点システムによってバランスが取られています。同じ1ステップの損失でも奴隷は1点ですが、ローマのレギオンは2点なのです。従って同程度の損害を出し合っていたのでは、ローマは勝利得点的にまったく勝てないことになります。

もう一つのトリックとして、スパルタクスによる強行軍修整と戦闘回避修整があります。この能力によってスパルタクスの本隊はローマ軍の追撃を振り切り、ローマ軍による捕捉を免れることができるのです。ローマの強力な追討軍から逃げ切って、ローマ兵力が捕捉のために分散したところでゲリラ戦で戦力を削って勝利得点を稼ぐのです。
もしローマが反乱に手を焼いてレギオンを動員、さらには外征に出ているレギオンの召還を実施してくれれば、さらに大きな勝利得点が手に入ることになります。

と、こう書くと大ローマがスパルタクスに切り切り舞いさせられるばかりのように見えますが、そうとも言えません。
それは、スパルタクス一人が討ち取られることによって反乱側はサドンデス負けしてしまうからです。ローマの追討軍を振り切り、決戦を避け続けているスパルタクスは、ヒロイックに見えますが、その実、一度、落ちたら間違いなく死ぬタイトロープを渡っているのです。


スパルタクスの戦闘
今回のプレイでは、わたしはローマ軍を持ってプレイしました。
わたしは初プレイですが、対戦相手のFさんは、既に4戦目でスパルタクスを持ち続けて負けなしという、生粋のスパルタクスプレイヤーです。

スパルタクスの反乱が早々に分離したのを見て、ローマ軍は積極的に分隊の方を二個レギオンによる奇襲上陸で叩いてみます。敵の投石がヤケに良く当たるため痛い目に合いますが、スパルタクス側も消耗し、一旦、兵力が整うまでは本隊のみの編成に戻しました。

その後もローマ側は積極的に反乱側を牽制しますが、どうしたものか敵の投石が良く当たり、勝利得点的にはどんどん離される展開となってしまいました。このため、ローマは勝利得点による判定を早々に断念し、サドンデスであるスパルタクスの討ち取りに賭けます。このため、レギオンというレギオンを呼び集めて総力を挙げて反乱鎮圧に乗り出します。
スパルタクスと互角に戦える名将クラッサスは、一度はスパルタクスの大部隊と決戦して勝利を収め、敗走するスパルタクス軍に紙一重のところまで迫りました。さらに、積極果敢な行軍で知られるポンペイウスもスパルタクスを一度は捕捉します。しかし、未訓練の奴隷を見捨て、質の高い部隊だけに絞ったスパルタクス本隊の逃げ足は速く、どうしてもトドメを刺すことができませんでした。

ゲームの最終ターンでは、退却や敗走はなくなるため、ここでついにローマの切り札ルクルスがスパルタクスを討ち果たします。しかし、最終ターンではサドンデスもないため、勝利得点による判定となり、多大な資源を投入したローマは勝負に勝ちながらゲームに大敗することとなったのでした。



感想ですが、ゲームとしては面白いと思いました。ただし、難点もあります。

最大の難点は、スパルタクスの強行軍と回避の成否が非常に大きな問題になっていて、運の要素が強いことです。とりわけ、ローマ側が勝利得点での争いを断念してサドンデス頼みになると、スパルタクス本隊が捕捉されるかどうかに尽きることになります。

その一方でヒロイックな活躍を続けて逃げ延びるスパルタクスの運命を追う展開は、ドラマチックで面白いことも事実です。良い意味でも悪い意味でもスペクタクル映画風のテイストのゲームだと言えます。あまり、作戦がどうとか、史実がどうとかという議論とは馴染まないかも知れません。

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