ローズオブミドルシー

北米大陸が沈んでしまった未来世界
　ＳＦ雑誌「ギャラクシー」に掲載されたアラン･ダンチッヒの「偉大なるネブラスカ海」という短編は、北米大陸がかつてのアトランティスのようにあれよあれよと沈んでいく様を淡々と描いた小編でした。
　この作品にヒントを受けて作られたのが、ケイオシアム社の「ローズオブミドルシー」です。デザイナーは、「ブラッドツリー･レベリオン」や、「ゴッズファイアー」のリン･ウィリスです。
　このゲーム世界の史実では、２０２１年に北米のプレーンが沈んで数百万人の犠牲者が出ます。地殻変動による気象変化から翌年以降、世界的な飢饉となり、疫病の発生もあって世界の秩序が大きく揺らぎます。この状況を打開するために、自国の有利に気象を変更しようという試みが交錯、この利害関係の衝突から核兵器の応酬へと発展します。
　２０４０年以降、核の塵が温室効果をもたらし、氷河が溶けて海面が上がっていきます。北米大陸は高温多雨の気候となり疫病に悩まされ続けるようになります。アメリカ大陸の最大の人口拠点はメキシコに移ります。漁業が重要な産業となり、アークと呼ばれる巨大な蒸気駆動の軍艦島が誕生します。２２世紀末にはいくつもの群島軍閥が台頭し、勢力争いを始めます。
　途中を省略しますが、２４０１年には４つの勢力がかつてのアメリカ大陸の覇権を争ってぶつかり合うことになりました。
　かつての北米西部に位置する山岳地帯を中心とするトランスワイオミングは騎兵戦力に優位を持つ山岳勢力です。北米東部は群島化しており、そこには海上戦力に優位を持つウォーダムが勢力を展開しています。ヘリウム資源を持ち、唯一、気球を擁するメキシコ。そして、メキシコの南部に比較的肥沃な土地を持つ新興のナフアが大規模な歩兵兵力を持って控えています。

　そして、長期戦をベースとした中で、海中に沈んだ過去の文明の遺物を、アークと言う巨大な軍艦島を投入してサルベージすることができるようになります。上手く効果的なものを引き上げることができれば一気に戦力的な優位や、能力的な特典を手にすることができるかも知れません。その一方で、過去の放射線廃棄物や生物兵器の汚染を受けて大きなダメージを受けるかも知れません。
　また、各勢力の指揮官を導入してＲＰＧ的に取り上げるルールもあります。戦果を挙げたり冒険したりすることでレベルが上がっていき、レベルが上がると特殊な能力が得られます。さらにクエストを成功させていくことで、過去の文明のライブラリーを見つけることができ、その技術を利用することができるようになるかも知れません。

ケイオシアムらしい豊富なガジェット
　「ローズオブミドルシー」の基本的なゲームシステムは、ウォーゲームとしては比較的シンプルです。
　１年は４ターンで表されており、冬季には陸路の移動も、海上の航行も困難になります。
　旧アメリカ大陸エリアをカバーするスケールで、人口密度が大幅に下がった未来世界ですので、同一へクス戦闘、メイアタックになっています。その代わり優秀な戦力は、２ヘクスくらいの範囲をインターセプトできるようになっています。
　基本ゲームのルールはこのくらいで、２・３・４人用の短いシナリオがいくつも用意されています。

　しかし、このゲームの醍醐味は上級ゲームにあるでしょう。様々な要素が盛り込まれて、単なる大スケールのウォーゲームを越えた広がりを見せます。
　まず、休戦のルールが加わり、小規模の戦争を断続的に繰り返して大規模なキャンペーンがプレイできるようになります。

ファイナル・コメント
　このゲームは、色画用紙に単色で印刷されたカバーアートのジップロックゲームです。
　けれども、その中に詰め込まれた設定や、ガジェットに溢れたゲーム内容は、いかにもケイオシアム社らしい熱の入った作りです。マップはフルカラーですし、同社の「レイダース＆トレイダース」あたりと同じような作りと言えます。
　実際に上級ルールのキャンペーンゲームをやった訳ではないので、プレイしたときにどのくらい機能するかはわかりません。
　けれども、設定やルールを読んでゲームマップを眺めているだけでも楽しいことは事実です。

published	designed	players	time
1978	Lynn Willis	2-4	2+ hours