オークズ
Orcz / Fantasy Flight Games
ショートコメント
●オークの挙動をあまりにも見事に再現してしまった問題の怪作小品
●敵地に向かって進撃する大部隊を編成していくが、その実体は同床異夢というオーク軍団の赤裸々な内情
Small strange game describing behavior of the Orcz too vividly.
While gathering huge amount of battle forces, every tribe has a different dream in their brain.
published designed players time
2000 Christian T. Petersen, Greg Benage 2-4 45-90 minutes
オークの杜撰な戦いを描く怪作
 「トワイライトインペリウム」や、「バトルミスト」などのガジェット満載の大作で鳴らしたFFGですが、近年は小箱の小品が増えており、クニッツアなどのドイツデザイナーの登板も目立つようになってだいぶんイメージが変わりました。
 この「オークズ」はいわば移行期に当る一作で、「バトルミスト」や「ディスクウォーズ」の流れを汲むガジェットを流用しつつ作られた小箱の作品です。
 題材はタイトルの通り、ズバリ、オークたちの杜撰な戦いぶりを描いています。
 ドラゴン、ナイト、エルフ、アコライトと言った宿敵たちのところへ毎年のように攻め入るオークたち。プレイヤーは全員がオークの各部族の長という立場でゲームをプレイすることになります。
ファイナル・コメント
 説明で分かっていただけたかと思いますが、非常にオークらしいルールが満載の小品です。
 実際にプレイすると、前列の見えているタイルに勝てるように置いておいて、後は最終的に味方を殴るかどうかは全体の兵力が足りているかどうかや、前にいる部族に勝たせたくないかで決めるということになります。
 仲間を仲間とも思わない所業や、結果として敵に負けても良いから同士討ちを始めてしまうという辺りはあまりにもオークらしくてオークファンをにやりとさせてしまいます。
 勝敗を争うゲームとしてみたときには、いささか的外れでともすれば殺伐としたプレイも出てくる作品なのですが、それでももっともらしいと思わせてくれる辺りはオークが題材だからでしょうか。
 オークの挙動を鮮やかに描き出しているという点では随一の作品かと思います。オークファンなら是非とも一度はプレイしてみて欲しいところです。
関連ゲーム
ディスクウォーズ
バトルミスト
●ゴルカモルカ
 もし味方を攻撃すると宣言すると、前の列の味方との戦闘となります。2枚ずつサイドバイサイドで置いたタイルは、それぞれ対応する前の列のタイルと戦います。このときに、先ず兵科の相性が問題になります。兵科は3種類あるのですが、歩兵は騎兵に勝ち、騎兵は弓兵に勝ち、弓兵は歩兵に勝ちます。同じ兵科のときは戦力値が1〜4まであるので戦力の大きい方の勝ちです。
 敗れたタイルは取り除かれます。もし後列が2枚とも勝利したら、さらに前列に攻撃を仕掛けられます。一方、前列が2枚とも残ったら前列がさらに前の列への攻撃の権利を得られます。痛み分けになったときはどちらもそれ以上の攻撃はできず、そのまた次のまだ完全な列が次の攻撃を宣言する権利を持ちます。
 そうやって隊列の最前列まで同士討ちを解決し終わったところで、初めて残っている全戦力値の合計を敵の防御戦力と比較します。もし上回っていればめでたく勝利することになります。
 勝利したところで勝利得点の配分となるのですが、ここが独特です。勝利得点には勝利貢献者に与えられる一次得点と、貢献者が仲間に分配しなければならない二次得点とがあります。勝利貢献者は、最終的に残った兵力の中で一番大きな戦力値を持つプレイヤーとなります。同点なら先頭に近い方にいる勇敢なプレイヤーになります。そして、この勝利貢献者がその戦いの参加者で自身以外のプレイヤーに二次得点をどう分配するかを決定します。
 このシステムが実にオークらしい味を出しています。
 もっと面白いのは負けた場合で、その場合も一次ペナルティと二次ペナルティがあってマイナス得点になるのですが、一次ペナルティはその戦いを指揮したと目される最大戦力値のプレイヤーが敗戦責任者として引き受けますが、二次ペナルティは敗戦責任者が参加しなかったプレイヤーも含めて自身以外に好きに分配できます。つまり、「お前が協力しないから負けたのだ!」ということができるのです。

 重要なことを書き忘れましたが、兵科の相性のじゃんけんで勝敗が決まるシャープなシステムのため、オープン配置では絶対に後列有利になってしまいます。そこで、配置するときには2枚の内の1枚だけをオープンにし、1枚は伏せておくようになっています。
 ゲームのシステムは、プレイ画像を見てもらいながら説明すると良くわかるでしょう。
 プレイは一年を表すラウンドを4回繰り返します。場にはドラゴンの住む山、ナイトの守る城、エルフの森、アコライトの集落があり、そこに敵の防衛戦力を表すチットが配置されます。
 オークである各プレイヤーは、自分の手番が来ると手持ちの部隊タイルの内の2枚をどれかの敵に向かって進軍させます。
 これを時計回りに5回に渡って繰り返していくと、各敵地に向かって行軍するオークの部隊が組織されます。最初に置いたものが先頭となり、以下、置いた順番に並んでいます。
 全員が置き終わると戦闘解決に移るのですが、このときに隊列の後ろから前へと順に解決していきます。どういうことかと言うと、一番後ろの部隊は、自分の前の部隊、つまり味方のオークを攻撃するかどうかを宣言していくのです。
 オークの手勢のタイルには、毎年使うことができる普通の部隊(歩兵、騎兵、弓兵)のほかに、ゲーム中に1回だけ使えるヒーロータイルが3種類あります。
 チャンピオンタイルは、参加しているその戦場で戦力値に関わらず敵(味方のオーク同士ではなくドラゴンやナイトのことです)との戦いに必勝という効果があります。
 シャーマンタイルは、2枚セットで出す対のタイルの戦力値を2倍にする効果があります。
 スカウトタイルは、他のプレイヤーの伏せたタイルを自分だけ見ることを可能にします。