ゴブリン
Goblin / Dwarfstar Games
ショートコメント
●ゴブリンの住む山岳にほど近い伯爵領を舞台に、襲撃と防衛が繰り返される
●量に勝るが質に劣るゴブリンたちが、できるだけ多くの獲物を求めて街街を襲撃する小品ボードゲーム
Near the goblin's mountain there was a feudal territory. Raiding and defending should be conducted repeatedly.
With superior quantity and inferior quality goblins should try to raid and plunder villages and towns. Small boardgame.
published designed players time
1982 Howard Barasch 2 2+ hours
小品ながら数次に渡る襲撃を扱う意外に重い作品
 「ゴブリン」はいわゆるヘリテイジ(ドワーフスターゲームズ)の小箱の一つです。デザイナーは、「ウォーオブザリング」や「フリーダム・インザ・ギャラクシー」にも関わっているホワード・バラシュです。
 実際にこのゲームをプレイするためにルールを通読してみるまで、このゲームの内容については大いに誤解していました。
 二人用の小品のボードゲームで、同社の「デーモンロード」あたりよりも軽いものを思い浮かべていたのです。ところが実際には、こちらの方がプレイタイム的にはずっと時間の掛かる内容になっています。
 このゲームは、ゴブリンの住む山岳に隣接した伯爵領を舞台にしています。
 ゴブリンキングの一党は、この伯爵領を襲撃し、村や町を略奪して周り、獲物を山岳へと持ち帰ることを試みます。この襲撃が完了し、盤上のゴブリンたちが撃破されるか、帰還してしまうと一回の襲撃サイクルが終了します。
 二つの遊び方があり、より短時間で終わるレイディングゲームでは、この襲撃サイクルを攻守ところを替えて2回プレイし、ゴブリンとして多くの収穫を上げた側のプレイヤーが勝利します。
 本格的にプレイするキャンペーンゲームでは、この襲撃サイクルを繰り返していき、街や村が荒廃していき、ゴブリン部隊が疲弊して行き、伯爵領に増援が補強されていきます。最終的に一代のゴブリンキングの王朝が終了するまでプレイし、これを攻守ところを変えて2回プレイします。実際にこのキャンペーンの方はやっていませんが、初期のゴブリン戦力は大きく、一代のゴブリン王朝が疲弊していくまでには数次に渡る襲撃が繰り返されるでしょう。かなり時間が掛かることが予想されます。
 プレイ時間の2時間はレイディングゲームを目安にしています。
ファイナル・コメント
 意外な大作(?)ということもあって、キャンペーンゲームをプレイしていません。
 ただ、デザイナーの意図はキャンペーンゲームにあるように感じられるので、この状況であまり結論めいたことを書くのは躊躇されます。
 右の図はゴブリンの中堅の部隊(指揮値が8のリーダー2人)が、それぞれ伯爵領の反撃部隊にアタックされたところです。ゲームでは、襲撃が発生すると隣の男爵も数ターン後(ランダムに決まる)に応援に駆けつけてくることになっており、こうなると長居は既に無用です。
 そんなこともあって、如何にヒットエンドランで上手に襲撃を繰り返すかがゲームの焦点で、それはキャンペーンでなければわからない訳です。
 ただ一つ言えることは、「見かけより手の掛かるゲーム」であることは確かです。そして、決戦志向ではなく、ヒットエンドラン志向のゲームなので、一気に決着が付いたりはせず、相手のミスを咎めて小利を重ねていくゲームのようです。
 なんと言ってもこのゲームは「ゴブリン」なのであって、「オーガ」や「トロール」ではないのですから。
関連ゲーム
デーモンロード
ドラゴンレイジ
●ドラゴンパス
●四方の風の谷
 「ゴブリン」の初期配置では、伯爵領に散在している集落、村、1部隊ずつの守備隊と、襲撃の目標となるプランダーマーカーが置かれます。街には少しまとまった部隊が置かれますが、それとてもゴブリンの主力部隊と激突すると見劣りする規模でしかありません。
 ゲーム開始時には伯爵部隊は活動不能の状態でスタートし、最初にゴブリンがボード上で伯爵部隊に隣接した時点で活動開始となります。
 このためゴブリンは指揮官ごとの襲撃部隊を編成し、丘や森を抜けてそれぞれの目的の集落や村に忍び寄り、一斉に攻撃を開始します。
 もちろん散在している守備隊はゴブリンの周到に準備された襲撃に粉砕され、多くの集落や村が蹂躙されることになります。これが新ゴブリン王の最初の戦果となり、以後の長きに渡る襲撃と防衛のサーガの幕開けとなるのです。 
 以上、「ゴブリン」が意外な大作(?)であることを説明してきましたが、個々の襲撃サイクルについてはそれほどプレイが大変な訳ではありません。このゲームではリーダーがいなければ移動できないため、リーダーの数しか行動スタックが編成できません。また各リーダーは指揮値の数のユニットしか指揮できません。ゴブリンキングは12ユニットも指揮できますが、最低クラスのリーダーは3個のユニットしか指揮できず、総勢7人しかいません。
 また獲物を勝利得点として確定するためには山に戻らなければなりませんが、一旦、帰還すると次のサイクルまでは再出陣できません。ですから、一旦、撤収が始まると長居は無用です。
 「ゴブリン」の戦闘システムは、「デーモンロード」ほどではありませんが、このクラスの小品としては複雑で戦術テイストが含まれています。どちらの陣営もこのテイストを理解して運用しなければなりません。
 戦闘は隣接へクス戦闘ですが、防御側の射撃、攻撃側の射撃、攻撃側の白兵戦、防御側の白兵戦の順に進みます。
 ゴブリン部隊にとって要注意は最初の防御側の射撃です。このゲームの各部隊には、装甲クラスとモラルが設定されています。装甲クラスは射撃を受けるときに重要なのですが、ご想像の通りゴブリンの装甲は貧弱です。
 射撃や白兵戦で被害を受けるとモラルチェックをすることになるのですが、このモラルもゴブリン側は貧弱です。このため、射撃に対する防御効果のある地形から忍び寄って敵の射撃をくぐり抜け、その先にある自軍の攻撃白兵戦で相手を量で圧倒して粉砕せねばなりません。
 伯爵領の部隊は逆のことが言え、装甲とモラルで優位にあるので、少しまとまった部隊であれば射撃でゴブリン部隊を混乱状態に陥れることが可能です。
 部隊のモラルチェックはユニットごとに行い、それぞれ異なる距離を後退、敗走したりするので、ゴブリン部隊の質の悪い部分はすぐに算を乱して分散してしまいがちです。このため、量で圧倒的ではありながらも、ゴブリンは伯爵領のまとまった部隊が出てくると、あまり積極的には戦いたくなく、いただくものだけいただいたら引き上げたいのです。
 このあたり小品でありながら戦術要素の感じられる戦闘システムを持っているところは、「デーモンロード」と合い通じるところがあります。