デーモンキャニオン
Demon Canyon / Fantasy Flight Games
ショートコメント
●サンダーズ・エッジに拡張キット登場、本体の弱点を分析してカバーしている好感の持てるデザイン
●サンダーズエッジの焦点、ワームホールがあるデーモンキャニオンがゲームに登場、新部隊も投入された
An expansion kit for "Thunder's Edge" which covers weak points of its mother game.
Worm hole which is a loci of "Thunder's Edge" now appears on the map and new types of troops enter the operation.
published designed players time
1999 C.T.Petersen, J.Tidball 3-5 3+ hour
デーモンキャニオン
 「デーモンキャニオン」は、FFGのガジェット満載マルチゲーム「サンダーズエッジ」の拡張キットです。
 新たな地形と部隊を持ち込み、抽象的ながらも宇宙空間での戦闘もできるようになりました。

 本体だけでも既にガジェット満載のゲームですので屋上屋を重ねているのではという気もしてしまいますが、実際にプレイに投入してみると杞憂であることがわかります。
 むしろ、本体ゲームの問題点をきちんと分析してカバーしている要素が含まれており、デフォルトで本体と共に使用するのが良いのではないかと思います。
 「サンダーズエッジ」ではヘクスプレイのために地形設定の不公平感が強いのが難点でした。しかし、「デーモンキャニオン」では新しい部隊として包囲戦の決着を早める攻城砲や、地形を飛び越えての機動戦を可能とするグリフォンが登場して戦線の流動性を高めています。その結果、初期設定の不利を跳ね返しやすくなったのです。これでゲームは一気にエキサイティングになりました。
 もう一つこの拡張キットの目玉である新地形として、ずばり「デーモンキャニオン」があります。これこそは「サンダーズエッジ」の設定の要であるワームホールそのものなのです。新たに登場したデーモンキャニオンの二つのタイルは高次元で接続しており、離れていながら実は連結した一つのヘクスタイルなのです。この地形の存在もマップの距離を狭めて展開局面を広げています。
ファイナル・コメント
 FFGのヘクスプレイシリーズの中でも最後発の「サンダーズエッジ」ですが、内容的には一番良かったような気がします(ただし筆者は「トワイライトインペリウムの2版をプレイしていませんので、これは除きます」)。
 とは言え問題点もあってヘクスプレイシリーズ共通の初期地形のハンディが大きすぎるというところはいただけませんでした。
 しかし、このデーモンキャニオンはその点を改善していて好感が持てます。もしヘクスプレイシリーズをどれか一度試してみようと思うのであれば、サンダーズエッジ+デーモンキャニオンを薦めたいと思います。
関連ゲーム
サンダーズエッジ
●トワイライトインペリウム
バトルミスト
 重要な設定のポイントそのものが上手にゲームに取り込まれているわけで、どうしてこれが本体に最初から入っていなかったのかとさえ思ってしまいます。
 新しい地形としてはアシッドレイクも加わりました。これは逆に地形を分断する進入不能の地形です。この地形があることがグリフォンの価値を高めます。ただし、流動性を削ぐ部分もあります。
 この他にフリートカードが用意され、これを購入することができ宇宙空間の兵力がゲームに登場してきます。ファイター、クルーザー、ドレッドノートの3種が用意されており、宇宙戦闘がアブストラクトでできます。また、地上爆撃によって地上戦闘を支援することができます。これに伴って地上の施設として爆撃シールド設備が登場します。これを設置することで砲兵支援や軌道爆撃に対する守りを固めることができます。
 こう書くと「デーモンキャニオン」のルールの分量に怖気づくかも知れませんが、実際にはわずか4ページしかありません。また、全部を導入せずとも一部だけ導入することも可能です。
 全般に見て、本体ゲームの弱点を理解して、それをカバーするような作りとなっており好感の持てる拡張キットです。
「サンダーズエッジ」と「デーモンキャニオン」は、詰め込みすぎの側面もありますが、90年代のSFゲームの進歩を示す一例と言って良いと思います。