プログラマーの悪夢
Programmer's Nightmare / Jolly Games
ショートコメント
●迷宮ゲームの鬼才、トム・ジョリーの作ったヴァーチャル・メイズとも言うべきプログラムの暴走ゲーム
●ロジカルでトリッキー、コンボ要素があって相互作用の強い思考ゲーム
Labyrinth game enthsiast, Tom Jolly has made a virtual maze-like game which covers a runnaway program.
A logical tricky thinking game which contains a factor of making combo.
published designed players time
1998 Tom Jolly 2-6 1 hour
トム・ジョリーの新たな挑戦
 トム・ジョリーと言えば版を重ねている「ウィズ・ウォー」や、近年の作品では「ドラコン」のような迷宮ゲームの名手という印象が強いです。
 そのトム・ジョリーが今度はプログラミングに挑戦しました。その名もズバリ「プログラマーの悪夢」です。
 出版はどうやら自前出版と思われるジョリー・ゲームズで、実はもう5年も前に発売になっていました(書いている今は2003年)。マイナーメーカーの小品ということであまり話題にならなかったのか、最近まで筆者のアンテナに引っかかりませんでした。

 ゲームの内容は比較的シンプルです。
 プログラムの1ステップを表すカードを使ったカードゲームです。
 このゲームには二つのバージョンがあります。バージョン1とバージョン2です。この辺りもプログラミングが題材のゲームならではのネーミングでしょう。
 バージョン1では、カードゲームでありながら手札を配ったりしません。人数に応じて定められた枚数のプログラムをテーブルの中央に一列に並べるのです。これが全員の共同作品のプログラムです。そして、これが実際にランされるときに、そのプログラムから最大限の恩恵を受けられるように、プログラムのどのステップを自分のコントロールに置くかをクレームしていくのです。
ファイナル・コメント

 実際にプレイすると、ロジカルでトリッキーな面白い小品です。説明から分かる通り、最初にプログラムを作って席順を決めるところより後は完全情報ゲームで、ランダムな要素が入りません。
 このため考え抜いて交渉しきれれば結果は実際にプログラムをランするまでもない‥はずです。
 けれども実際にはプログラムのランによる変動は結構はげしいため中々読みきれません。読んだつもりが「そんなはずでは‥」ということもあります。その逆にコンボがツボにはまると一撃で勝負がつくこともあります。プレイすると、実に思考迷宮とも言うべきゲームで、なるほどトム・ジョリーだなという感じがします。

 ちなみにバージョン2はプログラムを最初から開示せずに手札を配っておいて手からプレイしてプログラムを作りながら進むゲームです。「ラン」というカードがあって、都合の良いときにプレイして実行を開始してしまうことができます。バージョン1とは打って変わって荒っぽい話しです。

 このゲームで惜しいのはロジカルなゲームでコンボが重要でありながら、用語の使い方などに神経が行き届いていないことです。このためファジーなところが多すぎてプレイ中の疑義で折角のゲームテイストが失われることがあります。「マジック・ザ・ギャザリング」という良いお手本があるのですから、もうちょっとなんとかして欲しかった気がします。
関連ゲーム
●ウィズ・ウォー
ドラコン
●ロボタンク
ルナーロックアウト
 左の図は実際のプレイの図です。テーブルの大きさが足りないので2列になっていますが、プログラムは左上から右下に繋がっており、さらにループして元に戻る無限構造になっています。
 各カードの上に置かれたチップは、そのステップをコントロールしているプレイヤーを表します。画面の右側中ほどにあるのがプログラムカウンターというマーカーで現在実行中のステップを表します。
 ゲームの勝利条件は二つあります。第1はプログラムの実行によって、そこから所定のポイントを獲得することです。もう一つはプログラムがどんどん削除されていったときに、唯一の残存プレイヤーになることです。
 各ステップには、いろいろな種類がありますが、先ずもっともわかりやすいのはプレイヤーにポイントを与えるステップです。このステップが実行されるとコントロールしているプレイヤーにポイントが入ります。これで勝つのが一応の本筋ということになります。
 それに対してプログラムですから、ジャンプ命令や、プログラムの実行順を反転するリバース命令、入れ替えてしまうスワップ命令、繰り返すリピート命令などがあります。
 さらに凶悪なものになると、他のステップを消去したり、他のカードに載っているチップ削除したりする攻撃的なステップもあります。これによってプログラムの中で有力なものは消されていき、最後は消耗戦になって生き残った最後のプレイヤーが勝利するということも起こりえます。
 他にもカードの指示する数値を増減するインクリメント命令やデクリメント命令もあります。
 一人のプレイヤーが複数のステップをコントロールしているのでコンボを組むこともできます。あるいは多人数ゲームですので、交渉によるコンボが一時的に成立することもあり得ます。
プログラマーの悪夢