
ドラコン
Drakon / FFG
一言で言えば‥‥
迷宮探索ゲームのシンプルな新機軸
トム・ジョリーらしい過剰に複雑でなく、それでいてロジカルでトリッキーな佳作
Innovative new dungeon game which is also pretty simple
Excellent small game which definately has Tom Jolly's taste and not too
complex
プレイ人数 |
2〜6人(3〜5人が良さそう) |
プレイ時間 |
1時間〜 |
ルール難度 |
ファミリーゲーム |
デザイナー |
Tom Jolly |
入手状況 |
published in 2001 |
シンプルな迷宮探索ゲームの新機軸

「ドラコン」は、FFGの小箱ファンタジーゲームの一つです。
もともと「トワイライトインペリウム」や「ディスクウォーズ」からスタートした同社ですが、ここへ来てファミリーゲーム的な方向へ大きく舵を切りなおしつつあるようです。
その一作として「ドラコン」はファンタジーでポピュラーな題材、迷宮を扱った手軽なゲームとして登場してきました。デザイナーは、「ウィズウォー」でも有名なトム・ジョリーです。
ゲームはとても簡単です。タイルと、ヒーローコマと、コインを使ってプレイします。セットアップではスタートタイル一枚だけが置かれ、そこに全員のヒーローが集まっています。
自分の手番になると、二つの内の一つのことを実行します。一つは新しいタイルを置くことです。もう一つは隣のタイルに移動することです。これを順番に繰り返していくのです。
このゲームの工夫はタイルに付きます。タイルは地形であると同時に、一種のカードプレイ的な要素を持っています。タイルはその地形に進入したときに発動する特殊効果を持っているのです。つまり、自分の進路に特殊なタイルを置き、次にそこへ入ることで魔法を使うような効果が得られるのです。
こうしてタイルを置いていくことで、迷宮は不思議な効果があちこちで発動するトリッキーなものに変容していきます。このシステムは非常にシンプルなのですが、タイルという一種類の道具だけで、今までのゲームではマップとカードを使ってやっていた妙味が出せています。さすが、トム・ジョリーの才気というところでしょう。
勝利条件は金貨を5枚集めることですが、これもタイルによって得られます。そこで問題になるのが同じタイルを往復することでどんどん金貨が手に入ってしまうことです。これを防止するための簡単で効果的な工夫もされています。タイルには矢印があり、その方向にしか出られません。新しいタイルを置くときには矢印同士が向かい合うようには置けません。このため、二つの部屋を往復することは原則としてできないのです(例外あり)。
それでも強力なタイルコンボが出来上がることもあるのですが、それに対しては他のタイルで「他のタイルを破壊」したり、「他のタイルを交換」したり、「他のタイルを回転」したりするものがあるので、コンボは切り崩されて長くは持続できません。
かくて様々なトリックと思惑が迷宮に交錯することになります。
選択ルールになっていますが、ゲーム自体がシンプルなのでヒーローの特殊能力は入れてプレイした方が面白いでしょう。特に慣れてくると妨害工作が上手になってゲームが収束しにくくなるので、これを打破する意味でもヒーロー能力はあった方が良いように思います。
このヒーロー能力も極めてシンプルで、たとえば魔法使いなら「ゲーム中に一度だけ矢印のない方向に移動できる」となっていたり、盗賊なら「ゲーム中に一度だけ同じタイルにいる他のキャラから金貨一枚を盗める」といったような具合です。とは言え、勝利条件が金貨5枚の争いなので、最後の1枚をめぐって能力が上手く生かせればと誰もが虎視眈々と狙うことになります。
ドラコンの魅力と、それゆえの限界

「ドラコン」はシンプルで面白いゲームです。
ただし、それなりの限界もあります。タイルの種類は限られていますから、トレーディングカードのような賑やかな多様さはありませんし、それほど複雑なコンボがあるわけでもありません。奥の深さは、このサイズの小箱のゲームなりです。
プレイヤーが慣れてくると牽制が厳しくなるので収束性が悪くなります。金貨5枚は結構、大変ですので、4枚とか、場合によっては3枚に減らしても良いかも知れません。
奥の浅さと、閉塞のしやすさというのは、手軽な小箱ゲームであることと表裏一体のものです。シンプルなゲームで数回気軽に遊ぶものとしては非常に良くできているので、特に欠点というのは当たらないでしょう。もっと複雑な楽しみを求める人には、ほかにプレイすべきゲームがたくさんありますから。

関連ゲーム / 類似ゲーム
トム・ジョリーと言えば既に7版を重ねている「ウィズウォー」でしょう。シンプルでありながら、ロジカルでトリッキーなテイストは非常に良く似ています。
迷宮物のゲームは星の数ほどありますが、ラベンスバーガーの「ラビリンス」や「ラビリンスカードゲーム」あたりが難易度的には近いかと思います。けれども、実際に迷宮を探索している冒険者の感じが出ているという点では、「ドラコン」に軍配が上がるように思います。

