ウルランド
Urland / Doris & Frank
一言で言えば‥‥
怪作「ウルズッペ」に続く進化ゲーム
今度は海から陸に上がるイクチオステガたちの戦いだ
Sequal game of strange evolution game "Ursuppe".
This time, the game focuses Ichtos' landing from sea.
プレイ人数 |
3〜5人 |
プレイ時間 |
2時間 |
ルール難度 |
ファミリーゲーム |
デザイナー |
D. Matthaeus, F. Nestel |
入手状況 |
published in 2001 |
「ウルズッペ」に続編登場!
ドリス&フランクが作った「ウルズッペ」は、海での生命の発生と、そのユニークな進化の争いを描いた濃厚な進化ゲームでした。ファミリーゲームとしては、いささかプレイアビリティが悪く、ガジェットも豊富で、かなり異色でした。けれども、その泥臭さと、B級的なテイストは、少なからぬ熱狂的な支持を得ました。その「ウルズッペ」に続編が出ると聞いては期待しないわけには行きません。
今回の舞台は、あれから幾星霜、ついに生命は海に満ちて植物は既に地上へと広がっています。これに遅れて魚類の中から水辺へと上陸するものが現れてきました。イクチオステガ(略称イクト)は、この動物の上陸作戦の中でエポックメイキングとなった種です。今回は、このイクトになって、他のプレイヤーのイクトよりも優勢な種となることが目標となります。
「ウルランド」の洗練されたシステム
「ウルランド」のゲームシステムは「ウルズッペ」とは大きく異なります。進化という題材が同じなだけで、別なゲームと言って良いでしょう。
「ウルズッペ」は一種のガジェットのある生態シミュレーションゲーム「ライフ」のようなものでした。エリアで個体は餌を食べて排泄を行い、移動したり他の種を攻撃したりしました。これに対して「ウルランド」は陸上エリアでの数を単純に争うゲームになっています。プレイヤーは順番に親を受け持ち、親プレイヤーは数ある陸上エリアの中から次に決算するエリアを選択します。子プレイヤーはそのエリアがどこであるかを傍証やカンで推理して、そこに自分のイクトの個体を送り込むのです。その後、決算エリアがどこであるかが公開され、そのエリアでもっとも優勢な種と次点の種に得点が配分されます。そして親が移って次のラウンドが開始されます。
言い換えれば「ウルランド」は、一種のビッディングゲームなのです。次に決算される場所、あるいは近々決算されてポイントになりそうな場所に、自分の種の個体を送り込んでビッドするゲームなのです。このあたり、前作「ウルズッペ」の泥臭さとは、およそ正反対の洗練されたドイツゲームの香りが漂います。クニッツア的と言っても良いかも知れません。
ただし、そこは「ウルズッペ」の続編ですから題材にふさわしいガジェットも少なからず盛り込まれています。火山活動による大陸の形成がゲームのフェイズを推し進めて行きます。それになにより、種の個性を作り出し、プレイヤーの作戦や戦術を大きく変える遺伝子カードは今回も健在です。
ウルランドの遺伝子
ウルランドの遺伝子の一例を挙げてみました。中でも強力そうなものを集めてあります。
いちばん左の「足」は、それまでの「鰭」と比較してイクトたちの上陸作戦を電撃的に変えました。これさえあれば他のイクトの倍のペースで陸上に個体を送り込めるのです。その次は「温血」です。これはさらに強力で1回に2アクションしかできないというルールを越えて、必ず余分に1アクションできるという代物です。
三番目は「歯」です。同じエリアの他の種の個体1つを食ってしまうという獰猛な遺伝子です。これは「ウルズッペ」譲りと言えるかも知れません。ただ、このゲームの場合はエリアの個体の数を争うので、一個の個体を食べられてしまうことの痛さが前作とは異なっています。接戦のエリアでは重要な能力ですが、大差を付けられてしまうと効果がほとんどなくなります。
最後のものは分かりにくい能力で「擬態」です。実際には「託卵」と言ったイメージです。このゲームでは個体を増やすためには、一定以上の自分の種の個体がひとつのエリアにいなければなりません。また、あるエリアの自分の個体を増やそうとすると同じエリアの他の種でも条件を満たしていれば同時に増えてしまいます。この縛りのために、自分の種だけ数を増やすということは、非常に難しくなっています。ところが、「託卵」はこうした縛りを抜けて自分だけ固体を増やせるばかりか、他の種族の個体から生まれてくるので、敵の予想外のところに登場できます。説明しにくいのですが、このことの意義はゲームでは重要で、意外性のある能力と言えます。
しばらく前のプレイでは、この後ろの3つを兼ね備えた生物が登場してきて悪名を馳せました。託卵は上述した通り意外性のある良い能力なのですが、1ラウンドに使える2つのアクションを両方消費してしまう弱点があります。ところが、温血を持っていると、託卵で登場して、さらに行動ができます。その行動で歯を使って、育ての親を食べてしまうのです。
そうすると影も形もなかったところに湧いて出てきて、育ての親を食べて優勢になってしまう、極悪非道のイクトの出来上がりとなったのです。これは非常に印象に残る怪生物でした。
ウルランドの難点
「ウルランド」は洗練されたゲームシステムと、題材にマッチングした程好いガジェットを持つ傑作ゲームです。
ファミリーゲームとして文句なしに佳作であり、進化ガジェットが好きなゲーマーにも進められると思います。
けれども、どうしたものか洗練された「ウルランド」をプレイしていると、泥臭かった「ウルズッペ」が懐かしく思い出されてくるのです。それは、エッセンスを蒸留していくとビッディングゲームである「ウルランド」と、エッセンスを蒸留しても正に生存競争の生態シミュレーションという題材ずばりのものが残る「ウルズッペ」とでは、進化ゲームとしての「濃さ」が違うということなのかも知れません。
言い換えれば「ゲーム」としては「ウルランド」に軍配が上がるものの、「進化ゲーム」としては「ウルズッペ」こそ真髄を感じさせるということかと思います。いかがでしょうか?
関連ゲーム / 類似ゲーム
前作「ウルズッペ」とはいろいろな面で比較してみたくなる作品です。
この他の進化ゲームとしては、ユーロゲームズの「エヴォ」や、イーオンの「クァークス」が上がります。