クロノノーツ
Chrononauts / Looney Labs

一言で言えば‥‥

歴史の転換点を変更しパラドックスを生みそこに自分に都合の良い歴史を!

自らの時間線を取り戻すか、タイムトラベルでコレクションを完成せよ!

You must flip the history to regain your own time-line.
recommended playable cardgame which has a flavor of time traveling.


プレイ人数 3〜6人、1人
プレイ時間 1〜2時間
ルール難度 少し難しめのカードゲーム
デザイナー アンドリュー・ルーニー
入手状況 現時点では多分入手可能

クロノノーツのシステム
クロノノーツのカード
クロノノーツはタイムトラベルによる時間事象改変テーマのカードゲームです。

このゲームではカードのみを使用するのですが、実質的にはボードに相当する一連の時間線カードを使います。時間線カードは、1865年から1999年までの年号の書かれたカードです。これが現時点での時間線を表します。

年号の付されたこれらのカードカードは性質により2種類に分かれます。第一の種類は、歴史の転換点を表すカードです。このタイプのカードの表面は青色で書かれており、わたしたちの知っている歴史が書かれています。裏側は赤色で書かれており、この歴史的な転換点が反転してしまったことが表されています。
画像のいちばん左がこの種類のカードです。1936年にヒトラーが暗殺されてしまったという異常事象が描かれています。その左側に、その影響が派生する年代が描かれています。
第2の種類は、それ自体は直接変更を受けないものの、それに先立つ歴史の転換点の反転によりパラドックス化してしまうカードです。左から2枚目のカードは1945年のカードですが、1936年にヒトラーが暗殺されてしまっているためパラドックス化して不安定になっています。
プレイヤーの目的は時間線を自分の都合の良いように書き換えることなのですが、具体的な勝利条件はこうしたパラドックスを発生させて置いて、その上にパッチ(修整)カードを置いて自分の都合の良い歴史を作り出すことによって実現されます。三枚目のカードが1945年に当てるパッチカードです。ナチスが第二次大戦に勝利したという歴史事象です。

4枚目のカードは各プレイヤーに開始時に配られる秘密の勝利条件カードです。これはIDカードと呼ばれており、それぞれのプレイヤーは現時点で発現していない違う時間線から来たタイムトラベラーだという設定が書いてあります。自分の時間線を取り戻すためにはどうすれば良いかが、3カ所の歴史事象の指定という形で書かれています。
例として挙げてあるSQUA TRONTは、実はゴキブリ族の時間学者です。彼は第三次世界大戦が勃発して人類が滅びた後にゴキブリ文明が立ち上がった時間線からやってきました。彼は自らの時間線を取り戻すために、1933年に大恐慌が発生し(これは歴史通り)、1950年にツェッペリン工場がソウルに開設され、1962年に第三次世界大戦が勃発しなければなりません。

この例だとそのためには、まずツェッペリン号の爆破事故を反転させねばなりません。そうすると1950年がパラドックスになるのです。そうしておいてパッチを当ててソウルにツェッペリン工場が建つ歴史に書き換えるのです。同じ要領でマンハッタンプロジェクトとスプートニク計画の双方が妨害を受けて遅延されるようにし、その結果としてキューバ危機をパラドックス化して世界大戦に発展させてしまうのです。
ここらへんの歴史改変の段取りの当たりは、タイムトラベルもののSFを好きな人には応えられないでしょう。時間テーマSFのツボを抑えた作りになっています。

勝利条件は実は他にもあります。自分の望む時間線を作るのが本線ですが、他にも自分の故郷事象を諦めて時間線を遡ってアンティークコレクションを集めることでも勝利できます。また、パラドックスに利害とは関係なくパッチを当てることでタイムパトロールとしてキャリアアップすることでも勝利できます。
5番目のカードは、こうした時間線に埋もれているアンティークの一つ「生きたステゴサウルス」です。

一人遊びソロノーツ
クロノノーツのプレイ
クロノノーツは多人数のカードゲームですが、実は一人プレイもできます。
ソロノーツと呼ばれるこのゲームは、いわゆるトランプのクロンダイクのような一人遊びです。
プレイヤーはランダムに8枚のクロノノーツのIDカードを引きます。この8人のクロノノーツを故郷に全員帰してやるために歴史を順に改編してやるのです。各IDが達せされると、それはクリアされていき、全員が達成されると勝ちになります。

ここで重要なのは特定の年代のパッチはデックに1枚しかないということです。つまりある年代の事象はプレイ全体の間で、「歴史通り→反転→歴史通り」という動きしかすることができず、二度反転させることはできません。
このため、互いに思惑の異なるクロノノーツを返すのに手順良く段取りしてやらねばなりません。ところが実際には手札は限られているため、手順良く歴史改変できなくなってしまい、望まぬ手順でことを進めねばならなくなってしまうのです。ここらへんの手詰まりの感覚がトランプの一人遊びクロンダイクと似ています。
このソロノーツは、一人遊びカードゲームとして適度なチャレンジ度を持っており、また時間線をどう変更するとどう歴史が変わるのかを真剣に考えて理解するのにも適切です。むしろ他プレイヤーがたまたま自分の都合の良いように時間線を変えてくれてタナボタで勝てることもある多人数プレイより、タイムトラベルテーマの神髄を味わえると言っても良いかも知れません。


クロノノーツの難点

二度ほどしかプレイしていないので、あまりとやかく言うのもなんですが印象を書いておきましょう。
まず、ゲームシステムはとても良くできています。カードゲームの特徴、カードの表裏や、カードの重ね置きを、時間線の改変というテーマに上手に利用しています。ここらへんは傑作の予感さえ感じさせます。
ただ実際に多人数プレイすると、そうした緻密さがなくとも、たまたま他プレイヤーが自分の都合の良いように事象を改変してくれたのに上手く便乗できると勝ててしまったりします。ここらへん緻密なシステムを持った、大雑把なプレイのゲームというところがあります。逆に言えば、初心者でも勝機があるので、歴史に詳しくなくても勝てるのが良いとも言えます。

システムの緻密な醍醐味を味わうには、前項にも書きましたが、むしろソリテアのソロノーツをプレイした方が良いかも知れません。そういう意味では、ソロノーツは単に対戦相手がいないときの代用品としてでなく、本気で取り組む値打ちのあるゲームとして考えてもらって良いように思います。

関連ゲーム / 類似ゲーム

時間テーマのゲームというと、ティムジム・プリズムのタイムエージェントと、ヤキントのタイムウォーが2大傑作でしょう。そして、クロノノーツはカードという手軽なシステムで、新しい切り口を見せてくれました。
これらに加えて、SPIの
タイムトリッパーが時間線の中を翻弄されて旅する時間旅行者を扱った面白いゲームです。

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